第38話 女子に激震が走ったのですが?
「明日、告白してやるよ!!」
【紗耶香視点】
思わず、手に持っていたお箸を落としてしまいました。今の、翔馬くんの声ですよね? 明日、誰かに告白するって……。
周りの女の子たちは、黄色い声をあげています。皆が密かに狙っている翔馬くんが告白。確かに、一大ニュースです。
誰に告白するのか、色々と名前を挙げていきますが、もちろん、その中に私の名前はありません。
他のクラスの可愛い女の子だったり、委員長だったり、中村先生なんて聞いたときは驚きましたが。でも、やっぱり一番人気は青山さんです。
……そう、ですよね。翔馬くんは青山さんと結ばれるんですよね。分かってた、分かってました。でも、淡い恋心くらいいいじゃないですか。
……あれ? 視界がおかしいな。なんだか、潤んでいるようにはっきりと見えません。頬を、熱いものが伝いました。
あぁ、そうか。私、こんなにも翔馬くんのことが……。
「白崎さん!? 泣いてるけどどうしたの!?」
委員長が心配してくれました。やっぱり、私は泣いてたんですね。
どうにか言葉を探さないと。でも、出てくるのは言葉ではなく涙だけ。声をあげて泣きこそしませんでしたが、泣いている理由を説明する言葉も出てきません。
でも、さすがは委員長。場の空気から私が泣いている理由を察してくれたようです。暖かく抱きしめてくれ、頭を撫でてくれます。
「大丈夫だから。まだ、はっきり誰と言ったわけじゃないから。和田くんが誰を好きかなんて、分からないでしょ?」
「で、でも、でもぉ……!」
「きっと白崎さんだよ! 予想なんて外れることしかないんだから! 皆が言ってることなんてあてにしちゃダメ! 私のお父さんなんて、宝くじで一体どれだけ無駄にしたのか……」
えと、最後のお父さんのくだりはよく分かりませんでしたが、予想なんて気にするなと慰めてくれたのでしょうか?
……うん、分かりました。今晩、覚悟は決めておきます。
だから、あと一日。明日が終わるまでは、この恋心を許してください。
私は、翔馬くんの幸せをこれからも願いますから。
◆◆◆◆◆
【彩乃視点】
はい勝った! 私の勝ちぃー!
ごめんねー? やっぱりね、こういうお話は幼なじみの私の勝ちって決まってるの。昔から基本的にその流れは途切れないから、そもそも勝負にすらなってなかったの。
あー、これでようやく気苦労がなくなるよー。そうだ、あの負け犬どうしてるかな?
あ、いた。ぷふっ! 号泣しちゃってるじゃない。だっさーい。あんたに勝ち目なんて最初からなかったってのに、そんなにムキになるから。
まあ、ね? 青春だから。失恋くらいよくある話よ。気にしない気にしなーい。
そんなに翔くんが忘れられないなら、夜に翔くんを思い浮かべて一人で慰めてろ。自分がどれだけ惨めなのか理解しなさいよ。
……それはそれで嫌よね。翔くんが勝手に妄想されてるのは、少し、いや、かなり気持ち悪い。やらないように釘を刺さないと。
でも、どうしようかなぁ? 私の勝ちが確定してる今、もう殺しちゃう理由もなくなったし……。
「ねぇ彩乃ちゃん! 翔馬くんの告白って……」
「私だったら嬉しいのになー!」
「何言ってるのよ! 彩乃ちゃんで決定じゃないの!」
友達からの声で、私の意識は戻される。いつもの調子を崩さないように返事しておこう。
友達は、皆私が告白されると思ってくれている。なぜか、お祝いって名目で私のお皿にお肉と野菜が盛り付けられていくのが気になるけど……これ、嫌がらせじゃないよね? お肉が多いから、祝福ってことでいいんだよね?
でも、こんなことしなくていいのに。というか、翔くんも告白なんてしなくていいのにさぁ。
だって、私たちもう赤い糸で繋がってるじゃない。それを再確認って意味では告白されるのも嬉しいけど。
あー、早く明日が来ないかなー!?
「……どしたの? あたしが席を外してる間にずいぶん盛り上がってるけど……」
榊さんが戻ってきました。女子たちの盛り上がりを見て、首を傾げています。
「翔くんが告白するって! しかも明日! 修学旅行で告白とかもうそれって!」
「あぁ、それね。あたしが翔馬を上手く誘導したから。あの超鈍感野郎はどうかしておかないと、見てるこっちがモヤモヤするのよ」
おぉ! 榊さんナイス!! てっきり負け犬ビッチを支援してるかと思っていたけど、私の味方だったのね! ありがとう!
元気よく榊さんと握手。それから、皆がお祝いにくれたお肉を食べる。うん、美味しいっ!
「……なんか、勘違いされている感がすごいなぁ……」
榊さんが何か言った気がした。
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