第32話 アドベンチャーパークが楽しいのですが?
バス移動の間は、特に何も起こらなかったので話さなくてもいいかな?
俺たちは、午前の活動の舞台であるアドベンチャーパークにやって来た。北海道の針葉樹林の中に作られたアスレチックで遊ぶ、自然と触れ合える施設だ。
バスを降りて施設へと歩いていく。てか、中村先生が一番ノリノリだな。引率なのにスキップしながら先頭を進んでるぞ。
さてさて、俺たちも続くと、スタッフの人たちが迎えに出てくれていた。
早速スタッフの人たちの指示に従って、俺たちは安全装備の説明を受ける。それが終わると、早速活動開始だ。
ヘルメット、安全装備、手袋を装着して木に登る。俺が進むのは上級者向けコースだ。
中級者コースから始めようと思ったのだが、カメラマンさんに「君ならいける」などと言われ、こうして上級者コースに追いやられたわけだ。
他にも、数名の男女が上級者コースから始めていた。だが、嗚呼悲しいことか。白崎さんは中級者コースから始めてしまっていた。残念。
上級者コースを確認する。
細い宙吊りの丸太と、ロープで吊り下げられた木の台。それらを抜ければ太いロープ。そして、ネットをよじ登ってスライダーを滑り中級者コースに合流する内容だ。
早速スタート位置に立つ。だが、前にいる男子が全然進まない。
「どうした?」
「い、いやいやいやいやいや! ぜぜぜ全然怖くなんてなななないけどな!!」
こいつ、ビビりすぎだろ。こんなコース簡単じゃん。
俺は、ひとまずその男子を横にずらして丸太に飛び移った。おお、結構揺れる。
でも、こんなもの揺れに入らない。親父が運転する車のほうがもっと揺れる。
丸太を軽快に飛び越え、台を軽いステップで踏破。ロープを前後に振りながらいくつかカットし、颯爽とネットをよじ登る。
なんだ。上級者コースの割には簡単じゃないか。あとは、無駄に長いスライダーを滑るのみ。
ふとなにげに後ろを見てみると、さっきの男子が顔を真っ青にしながら丸太を渡っているところだった。
「おおお俺だってだいじょうび。和田ができたんだから……」
「やめときなって昌吾。翔馬くんが強いだけだから」
膝が大爆笑している昌吾くんを慰める女子。残念ながら、他のクラスの名前までは知らない。とりあえず、Aさんとしておこう。
では、スライダーで中級者コースに合流だ! 安全装備のフックをロープにかけて一気に滑る。風が最高に気持ちいいぜー!
……お、カメラマンさんだ。
「はい、ポーズ!」
「イエーイ!」
片手でピースサインをしてみるが、結構な速度で滑ったので写っているかな? ぶれっぶれとか嫌なんだけど。
そのまま中級者コースにお邪魔しまーす! ロープからフックを外す。
さてさて、中級者コースはっと……うん、あまり変わらないな。
違いを挙げるなら、先ほどまでのコースよりも木の大きさが大きくなっている。どうやら、コースが簡単になるにつれて木の大きさが大きくなって恐怖を感じにくくなるようだ。
そして、一つのポイントの長さも短くなっている。上級者コースでは十五本あった丸太が、こちらでは十二本しかなかった。初級者コースは十本。
まっ、上級者コースを楽々突破してきた俺にとっては朝飯前だね。もう、朝飯食べたけど。
さて、こちらも軽く突破しますか。
……っと、あれ? 白崎さん?
「白崎さん? どうしたの?」
「あっ、翔馬くん。えへへ……実は、恥ずかしいけど怖くなっちゃって……」
照れ隠しをするように頬を掻いて微笑む。ごほっ! 和田翔馬の心に百のダメージ!!
さて、どうするべきか。ちょうど真下にスタッフさんがいたから尋ねてみる。
「すいませーん! 一度に二人渡って大丈夫ですかー!?」
「だいじょーぶ! 彼女さんをエスコートしてあげなー!」
かのっ!?
うわ、照れる。あと、後ろで「やっぱりできてた……」とか呟くな! 白崎さんが顔を真っ赤にしてるじゃないか!
ええい! 行こう!
「よし! 白崎さんいくよ!」
「え、あ、うん!」
白崎さんの手を取り、安全装備のフックを固定して安全を確保する。そして、腰に手を回して支えてあげながら丸太を越えていく。
最初の二本は白崎さんも怖がっていたが、慣れてきたのか足取りが軽くなった。
とんとん、と、丸太を越えて次のポイントへ。ポイントからポイントの合間にある木の台で、白崎さんはふと気がついたように慌てた。
「あっ、腰……ごめんね」
「え? あぁぁっ!! ごめんなさい!!」
デリカシーの欠片もなく女の子の腰に触れてしまっていた。やらかしちまったよぉ!
……これで嫌われたらもう一生自分の部屋から出ていきません。彩乃以外との関係を断ち切ります。え? どうして彩乃はいいのかって? だってあいつ、問答無用で押し入ってくるじゃん?
とまぁ、やらかしちまったことを反省しながら、俺と白崎さんは次の宙に吊り下げられた木の台に向かう。
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