第12話 幼なじみの様子がおかしいのですが?
一人家に帰る俺。駿太や天音、白崎さんとは帰り道が違うから当たり前といえば当たり前なのだが。
家に着いた。その前に、さすがに撮ったプリクラを彩乃に見せるのは可哀想なので、そっと鞄に仕舞う。それから、玄関のドアを開けた。
「ただまー!」
「おかえりなさい。そろそろご飯にするわよー」
出迎えてくれたのは志乃さんだった。シャワーの音が聞こえるから、おかんはお風呂にでも入っているのだろう。
リビングに鞄を置いて、おかんが風呂から上がっていないことを確認して手を洗う。そして、わくわくとした気分でリビングに行った。
今日は、親父と蒼一さんは帰りが遅い。先に俺たち四人で夕飯を食べるのだ。
鞄を片付けるためと、どうせいるであろう彩乃を呼びにいくために自分の部屋に戻る。だが、扉を開けると中は暗かった。彩乃がいる気配はない。
鞄を置いて下まで降りると、志乃さんに捕まる。
「ごめんね。ちょっと彩乃を呼んできてくれないかな?」
「いいですけど……俺の部屋にはいませんでしたよ」
「あの子、多分自分の部屋にいると思うから。勝手に上がってくれていいわよ」
志乃さんの承認はいただきました。俺は、一度外に出て隣の青山宅にお邪魔する。
家に上がらせてもらうと、確かに二階から物音がした。
「彩乃ー! ご飯だってよー」
すると、ゆっくりと扉が開く音がした。降りてきていることが分かり、ゆっくりと背を向けて帰ろうとする。
すると、いきなり服を引っ張られて家の中に引きずり込まれた。背中に彩乃が抱きついてくる。
「あ、彩乃?」
「……翔くん。少し、このままでいさせて……」
彩乃の臨むまま、しばらくこの状態を維持する。しかし、少し感触がおかしい気も…?
なんてことを考えていると、背中が濡れる感覚が走る。同時に、フローリングに水が落ちる。
思わず振り返ると、彩乃が静かに泣いていた。そして、背中に感じる感触がおかしい訳も分かった。
彩乃は、下着姿だったのだ。
俺が振り返ったので、彩乃が胸板に顔を埋めて泣く。
「翔くん……翔くん…!」
「彩乃? 何か、嫌なことでもあったのか?」
いつもは明るい彩乃が泣くなんて、よほどのことだ。それに、服も着ないで下着姿で過ごすなんて、いつもの彩乃らしくない。
そういえば、今日は彩乃は用事があると言っていた。その用事で、何かあったのか?
とりあえず、泣き止んでもらうために頭を撫でる。しばらくの間、彩乃の嗚咽が続いていた。
十分ほど経つと、彩乃も泣き止んだ。一言小さく「ありがとう」と言い、服を着るために自分の部屋に戻っていく。
青山宅を出た俺は、家までの数歩の間に少し考える。だが、いくら考えても分からない。
突拍子もない考えならすぐ浮かぶのだが……。
「あれか? 同人誌みたいに脅されてエロいことやらされて……」
……うん。ないな。
そもそも、そんなことを彩乃にしようなんて馬鹿はいないだろう。下手をすれば返り討ちに遭いかねないのに。
……同じ学校の奴らに限るが。
「まさか……他校と何かトラブル?」
いろいろ考えるが、やはり何も浮かばない。ここは、彩乃から話してくれるのを待つしかないだろう。
家に戻り、食卓につく。しばらくすると彩乃もやって来て、いつも通りの会話で夕食を進める。
でも、俺には彩乃が無理をしているように見えて仕方がなかった。
食後、いつもなら俺の部屋に来るはずの彩乃は、さっさと自分の部屋に帰ってしまった。やはり、何かおかしい。
明日からGWだというのに、どうにも気掛かりだ。
さっさとお風呂に入り、歯磨きを済ませて自室に戻る。それから、鞄を漁って四人で撮ったプリクラを眺める。
「この時……何してたんだよ……」
俺たちが楽しく遊んでいたことが、何か申し訳なくなる。あの時、用事しろなんて言って行かせなければよかった。
落ち込んだ気分では、何もする気になんてなれない。早々と布団に潜り込むことにする。
だが――、
「……て! 起きて翔くん!」
声が聞こえる。目を開けると、ベッドには彩乃の姿が。昨日とは違い、いつもの明るい彩乃だ。
「起きた? GWだからってだらけないの!」
「……なぁ彩乃? 昨日のことって……」
「昨日? ……あっ! あれはごめんね。でももう大丈夫だから!」
……何なんだよ。本当に。まあ、彩乃がスッキリしたならいいけどさ。
そう思いながら、俺は彩乃を部屋から追い出して着替え、朝食のために下に降りていく。
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