第4話 私の想いを聞いてほしいのですが?
突然ですが、私、白崎紗耶香には好きな人がいます。去年の入学式の日に見たときから、その姿が頭から離れません。
彼の名前は和田翔馬くん。凛とした顔立ちが素敵な彼を、私はどうしても意識してしまうのです。
でも、私はこれまであまり同年代の異性と話したことがありませんでした。まして、違うクラスの男子と関わるなど。
だから、一年を無駄に過ごしてしまいました。危ない人だとは自覚してましたが、物陰からこっそりと写真を撮らせてもらったことも多々あります。
その写真を使い、彼を想って行為に走る夜もありました。翔馬くんを汚してしまうようで、罪悪感に押し潰されそうになることも多かったです。
でも、神様は私を見捨てていませんでした。なんと、二年生で同じクラスにしてくれたのです。
……そして、四月末の席替えの日! なんと翔馬くんの隣の席になっちゃいました!
「これからよろしくね。白崎さん」
しかも、彼は私のことを知ってくれていたのです! これは脈ありでは!?
でも、私は普通の返事をしてしまいました。その日の夜は、ベッドでひたすら泣き続けるだけです。
私は早速反省し、次の日から勇気を出してみることにしました。どうにか会話できないかと考え、話題を探して話すのです。
翔馬くんも笑顔を見せてくれました。その笑顔に、どれほど救われたか。
ですが、私は気づいてしまったのです。私が翔馬くんと親しく話していると、その向こう側から恐ろしい視線が私に刺さります。
翔馬くんのもう一人の隣人の名前は、青山彩乃さん。どうやら、二人は幼なじみだそうです。
毎朝二人がまるで恋人のように登校してくると聞くたび、私の心は締め付けられてしまいます。どうにか、私にも振り向いてもらいたい。
そこで、少しズルい方法を取ることにしました。恨まれてしまっても文句は言えません。翔馬くんを狙っている女子は多いのですから。
修学旅行という大きなイベントは逃せません。何としてでも一緒の班になりたい私は、あえて存在感を消したのです。そうすれば、人数が足りない班が出てくる。翔馬くんたちはいつも五人で活動しているから、必ずそこに入れると。班が六人編成なのは、去年同じクラスだった友だちから聞いていました。
その目論みは上手くいき、私は翔馬くんたちと札幌を歩けることになったのです。一瞬だけ青山さんに拒否されたときは怖かったですが。
無事に班が決まってから、私は本当に幸せでした。授業なんて聞こえなくなるほど幸福感に包まれていたのです。
次の時間は体育です。白木先生は優しい先生で、この時期になると修学旅行の班の仲を深めるために卓球を自由にさせてくれると先輩から聞いていました。
翔馬くんと二人でラリーを続ける姿を想像し、ドキドキしてきました。
更衣室に入り、体操服に着替えます。
皆さん早いですね。もう着替えて更衣室を出ていきます。
……あれ? でも、青山さんと隣のクラスの女子たちは私を見てますね? どうしたのでしょう?
気にすることなく着替えを続けます。そして、上服を着替えるために制服を脱いだときでした。
「……押さえつけて」
青山さんが低い声で隣のクラスの女子たちに命令します。たちまち、私は壁際に押し付けられてしまいました。
どうしてこんなことをするのか分からず、戸惑いながら青山さんを見ます。
でも、私の知る青山さんはそこにはいませんでした。殺意を隠そうとしない恐ろしい目をして私に近づいてくるのです。
怖くて、震えることしかできませんでした。
青山さんは、ポケットから何かを取り出して軽く振ります。それは、折り畳みナイフでした。銀色の刃が電灯の灯りを反射しています。
青山さんは無表情で、ナイフを私の顔の横にあったカーテンに突き刺しました。躊躇った様子はありません。
「白崎ぃ……あんた、調子に乗ってない?」
「やめて……私、なにもしてない……」
「はぁ? こんな大きなもので翔くんを誘惑しておいて何を言ってるの?」
青山さんがナイフで私の下着の肩紐を切断します。露になった左胸を強引に掴み、乱雑に揉まれてしまいました。少し、いや、かなり痛いです。
「やめて……んっ……」
「どうせ翔くんでやってたんでしょ? 本気で気持ち悪いからやめてくれない? 私と翔くんの間にあんたが入る隙間はないから。修学旅行の班だってそう。翔くんはあんたを可哀想に思って拾ってあげただけなんだからね」
「っ!」
聞きたくありませんでした。心のうちで、もしかしたらそうなのではないかと疑ってしまっていたから。
恐怖と悲しみで震えていると、青山さんが耳打ちしてきます。
「もう翔くんと話さないで。翔くんから話しかけたときは許してあげるけど、返事だけね。会話は繋げちゃダメだから。守れなかったら……あんたの処女膜をこれで抉り取るから」
普段の青山さんからは想像もできないナイフの扱い方。私は、首を縦に振ることしかできません。
ようやく私を拘束から解放してくれました。怖くて怖くて涙が出てきます。
青山さんは、床に座り込む私に向かって吐き捨てるように言ってきます。
「翔くんは私のものだから。邪魔をするなら……殺すからね」
本能が教えてくれます。青山さんは、本気で私のことを殺すつもりだと。
青山さんが隣のクラスの女子たちと笑いながら更衣室を出ていきます。
青山さんが怖いです。命が大切なら、もうあの二人に関わるのはやめたほうがいいのでしょう。でも、私はどうしても翔馬くんを諦めきれないのです。
これから、一体どうすれば良いのでしょうか?
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