第32話 打ち明けたがゆえに強く意を決す。
「くるみ、駿先輩に告白しちゃいました。」
「「「え・・・?」」」
「「えええええええええ!!!!!!!!!!?」」
「なぁぁに言ってんだおめえはァァァァァァ!!!!」
「?くるみ何か変な事言いました?」
「普通こんなこと報告しな―――」
おい。なんでそんな真面目な顔してんだよ。
補足しておくと、玖瑠未はついさっき、俺に告白をしたということをふみ、陽花里、いちごの前で公言したのである。
「く、くるみ、告白とか初めてで・・・。もしかして、普通こういうのって、言わなかったり、しちゃったり、して・・・」
周りの反応を見て言っているうちに察したのであろう。
玖瑠未の顔はみるみる赤くなっていき、声も詰まらせている。
どうやら告白をしたら公言するものと勘違いしてたらしい。多分。
仲のいい友達に『○○に告白したけどダメだった・・・』『○○に告白したんだけどOKもらっちゃった!』などと打ち明けることもあるだろう。が、それはあくまで告白した相手がいない場で行われるものである。
今回、玖瑠未から受けた告白は断ってはいないが、了承したわけでもない。いうなれば保留状態だ。
細かく言えばこの保留という答えも、玖瑠未の方からのお願いでこうなったわけなのだが。
要するに、成功していない告白を当人の前で公言するのは大変イレギュラーなことなのである。
「しゅ、駿・・・?それホント・・・?告白、されたの・・・?」
「・・・」
俺は黙る。いや黙るしかない。
ここでされたとか言えるわけないだろうが。恥ずかしすぎるわ。
否定しない時点で、どうにか察してほしい。
「駿くん・・・。告白、オッケーした、の・・・?」
「・・・」
してない!なんてもまたまた言えるわけなくて。
俺はだんまりを続ける。
「駿兄・・・。ごめん、玖瑠未、なんて言ったの?よく聞こえなくて・・・」
「へ?」
あれ?前々から思ってたけどこいつって実は天然?
いや、ここは聞いてくれてなくてよかった。ややこしさが少しはマシになる。
あ、ホントだ。こいつ良く聞いたら(見たら)最初の「え・・・?」しか言ってないわ。一人だけ聞き返してたわ。
てかだんまり決め込んでたのに思わず声出ちゃったよ。
「いやそれがねいちご・・・。くるみ、駿先輩に告白して・・・って、あっ。」
「えっ・・・、駿兄・・・、それホント・・・?」
おいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!
何面倒ごと増やしてんだよ!!!!
『あっ』じゃねえよ!!
そして何顔さらに赤くしてんだよ!!
お前がまいた種だぞ!!どうにかしろ!!
俺は3人にめちゃくちゃ迫られる。
てか迫るなら玖瑠未に迫れよ。なんで俺なんだよ。
玖瑠未、ここで『なーんちゃって!ドッキリですよー!まぁた引っかかっちゃいましたね~!くるみの勝ちですね!』とか言えば誤魔化せそうだから!!言え!!なんか言ってくれ!!
「あ、あの・・・!」
俺の想いが通じたのか、玖瑠未が声を出す。
同時に、3人の圧が弱まる。
良いぞ玖瑠未。このまま上手く誤魔化せ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
完全に間違いを犯してしまったようだ。
告白したらそのことは友達の報告するものだと思ってた。
確かに思い返せば、恋愛ものの漫画や小説で見たのは告白した相手がその場に居合わせず、仲のいい友人とだけ同じ空間にいるときに、主人公は告白を打ち明けていた。
人生初告白でパニックになってしまっていたせいで、とりあえず報告しようという思考になってしまっていた。
駿先輩、困ってるなぁ・・・。これでくるみのこと嫌いになっちゃったら嫌だな・・・。
この種をまいたのはくるみ自身。くるみがどうにかしなきゃ。
目の前では駿先輩が恋敵3人に迫られてる。
くるみの性格上、ここでドッキリでしたとか言って誤魔化すこともできるかもしれない。
けど、もう誤魔化したくない。自分の気持ちの正直になりたい。
だから思い切って告白までしたんだ。
「あ、あの・・・!」
そう、くるみは素直になりたい。
「あの、ですね・・・。くるみは確かに先輩に告白しました。残念ながら、付き合うことはできませんでした。でも、断られたとかじゃなくて、保留という形にしてもらいました。だから、まだくるみが駿先輩の恋人になる可能性はあります!告白した以上、くるみは思い切って駿先輩を落としにいきますから!」
この人の傍にいるのは、くるみでありたいんだ。
くるみは駿先輩の胸に飛び込む。
あざといって思われるかもしれない。なんだこいつとか思われるかもしれない。
でも、どうしようもないくらいくるみは―――
「駿先輩。改めて言いますね・・・。大好きです。」
そういってくるみは駿先輩の頬に触れる程度のキスをする。
唇じゃないからセーフ・・・だよね?
そしてくるみは親友であり、恋敵である3人に駿先輩に聞こえない程度の声量で告げる。
「くるみ、絶対に負けませんからね!」
宣戦布告。親友であろうとこの人は譲りたくない。
「いい度胸じゃん、玖瑠未。私だって負けないよ。」
「私も負けたくない。その勝負受けて立ってやる。」
「くれぐれも自分がリードしてるとか思わないことね。」
迷惑かけた直後にこんなことしちゃって、嫌われてしまうか怖かったけど、どうやら大丈夫のようだ。
「あ、こんなことで嫌いになんてならないから、安心して。私、もーっとすごいことしちゃう予定だし。」
「す、すごいこと・・・?わ、私も、すごいことする予定立てたし・・・、今。」
「私も陽花里さんにすごいことされたい・・・じゃなくて、私だって負けませんから!凄すぎることしちゃいますから!」
自称敏感男の幼馴染ゆえか、心を読まれてしまったようだ。
そしてこの感じ、久しぶりだ。
「じゃあ、皆さん!誰が駿先輩を落とせるか、改めて、勝負です!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ほえー、くるみん。やるなぁ。」←遠くから眺めて一瞬で状況や話の内容を察した超敏感すぎる黒川綾音。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「て、あれ、駿せんぱーい?駿せんぱーい?死んで、る・・・?」
頬に触れる程度のキスをされただけで、目を開け、立ったまま気絶する黒川駿であった。
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