第22話 テスト期間がゆえに女子5人と勉強会をすることになった。DAY2

もうすぐ中間テスト。

その勉強会が俺の家にて行われた。

相手は同級生二人に、後輩二人、そして妹一人の女子5人。

この状況を人はハーレムと呼ぶ。

事実、俺もかなり浮かれていた。

仕舞いには妹の提案によりお泊りでの勉強会にまで発展。

このまま何も事件が起きずに、時が過ぎてくれたらな。

これは盛大なフラグである。 


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「きゃああああああああああああああああああああ!!!!!」


「っ!綾音ちゃん?駿くんに何かあった、の―――って、ひゃああああああああ!」


「ん?白谷先輩?駿先輩に何かあったんですか――――きゃあああああああ!!」


「もー、朝っぱらからみんなうるさいよー?まさか駿何かした、の――――ってああああああああ!!」


「んー・・・綾音ったら、朝からうるさい・・・。私、朝は弱いって、言って、言って・・・いいいいいやあああああああ!」


「お前ら朝からうるさいぞ・・・、何をギャーギャー騒いで・・・、あれ、なんじゃこりゃあああああああああ!!!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


朝。

机には朝食が並べられている。が、

誰も手を付けず。

それもそのはずだ。朝のあの光景を見てしまったのだから。

あの光景というのは、ベッドで寝ていたはずのいちごが床で寝ていた俺の布団に入って眠っていた。

それだけなら良かった。それだけだとどちらかがベッドから落ちたのだと解釈することも可能だからだ。

しかし、状況はそれじゃ済まなかった。

いちごのやつが何故か上半身下着姿で、俺たちは抱き合った体勢で寝ていたのだ。

俺の腕はいちごの腕枕となり、もう片方の腕でいちごを抱き寄せ、頭に手を置いた状態だ。

そんな姿、第三者が見てしまったら、もうピーしてしまったと考えて当然だろう。


「あの、皆さん・・・」

「駿、私、信じてたのに・・・」

「ふみ、ちが――」

「駿くん・・・!私だって信じてたよ・・・」

「ひ、陽花里さーん?話を――」

「駿先輩・・・、くるみも、先輩なら大丈夫だって・・・」

「おーい、玖瑠未さん?だからね――」

「お兄ちゃん、私はとても複雑だよ・・・」

「ふ、複雑?だからな――っていちご、お前も何か言えよ。」

そうだ。俺よりいちごの方が聞く耳を立ててくれるだろう。

「そ、そうね・・・。ねえみんな聞いて!みんな誤解してるわ!」

よし、そうだいいぞ。

「私はね、――ただこいつと一緒に寝ただけよ!!」

「「「「一緒に、寝た・・・!!!!!」」」」

「おいいいい!!こいつら絶対違う意味で捉えたよ!?そういうこと考えてたせいで、そういう方面でしか捉えられなくなってるよ!!」

「ふう。よし、これで誤解も解けたでしょ?さ、食べましょ。」

「馬鹿かお前は!!この状況を見てよくそう解釈できるな!!」

「馬鹿はあんたでしょ!!あんたが昨日、その、い、いきなり(布団に)入れてきたりしたんだから!!」

「「「「いきなり、入れて・・・!!!!!」」」」

「絶対こいつら変なの入れちゃってるよ!!俺の言葉を聞き入れてくれよ!!てかお前!!主語を明確にしろよ!!」

「主語?主語なら明確にしてるわ。あんたが、入れてきたって。てか私はね、ただただ(トイレに)付いて行って欲しかっただけなのよ?」

「「「「突いてイって欲しかった・・・!!!!」」」」

「ぎゃあああああ!こいつら思考がバグってやがる!!なんでそっち方面にしか捉えないの!?男子中学生かよ!!」

「こいつったら全然(布団の)外に出してくれなくてさ。」

「「「「!!!!!」」」」」

「何回か出してっていったんだけど、気づいたら落ちちゃってて。でもやっぱ(寝るなら)ベッドじゃなきゃダメね。(床で寝たから)お陰様で腰が痛いわ・・・」

((((ちーん・・・))))

「やめて!!もう喋らないで!!」

「うるさいわね。てかあんた、キャラブレてるわよ?」

「こんな状況になったら誰だってブレるわ!!もう黒川駿って何だっけって若干なってるわ!」

どうすればこうぺらぺらとそれっぽいような言い方ができるのか。

見ればわかる。4人の顔色は真っ白だ。

「お、お兄ちゃんの馬鹿!!そういう節度は守るって思ってたのに!!」

守ってるよ!?!?というか何もしてないわ!!

「駿、初めては私と二人で分かち合いたかったのに・・・」

「ふみ、初めては私が分かち合うの・・・」

「お二人とも見苦しいですよ・・・。くるみたちは初めてでも、もう駿先輩は・・・」

「「「うわーーーーん!!!!!」」」

あの3人組は何を言ってるのかは聞き取れなかったが、変な事を言っているということは分かる。


もうあの手しかない。

禁じ手だと思っていたあの手。

「くっ・・・。お前らあああ!!良く聞けええ!!俺は――」

特に異性の前では口にしてはいけない、いや口にしたくなかったあの言葉。

コンプレックスともとれる、称号ともとれるあの言葉。

腹を括るんだ。黒川駿!

「俺は、童貞だあああああああああ!!!!!」


「ど!?」

「う!?」

「て!?」

「い!?」

ちなみに上から赤、白、黄、黒(妹)。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「なーんだ!そういうこと!もー早く言いなよ駿!」

「いや、お前らが全然耳を貸そうとしなかったんだろ・・・」

ふみは謝らないと思ってたよ。それにしても上機嫌。

「ごめんね駿くん・・・。ちょっと早とちりしちゃって。」

「いやいいんだよ。わかってくれたら。」

陽花里はやっぱり優しい子だ。この方も上機嫌。

「駿先輩、すみませんでした・・・。良く考えたら、先輩はもっとおっきな子としたいですよね・・・?」

「おいこら!誰がちっちゃいって!?」

玖瑠未は案の定あざとい。これまた上機嫌。

そしていちごはどうやら背が低いことを気にしているらしい。

「お兄ちゃん、私、信じてたよ!」

「どの口が言うんだ。」

あんなに罵ってたくせによく言うな。まあ可愛いから許す。

「ていうか、私がこんな男と初めてをするわけ・・・ってこっち見んな!」

べしッ。

いちごから理不尽な暴力。

ちょっと顔見てただけなのに。

(あれ、私ちょっとおかしい・・・。こいつの顔見たらいきなり恥ずかしくなって・・・。何なのこれ!あんな近くで寝たせいだわ!!きっとそう!!)

「と、とにかく、今日も勉強会頑張りましょ・・・!みんな、あんまり陽花里さんに迷惑かけちゃだめよ?」

いちごの言う通りだ。昨日は陽花里への負担が大きすぎた。

実際、陽花里は寝落ちしかけていた。

「そうだな。それで体調崩しちゃったりしたら申し訳ないしな。」

「ぜ、全然いいよ。―――は!しゅ、駿くんってもし私が体調崩した時とか、お、お見舞いとか来てくれるの・・・?」

「お見舞い?まあ、家が前だしな。それくらいは・・・いや、けど、女子の家に行くのはちょっとハードル高いな・・・」

「残念だったねー陽花里。私は体調崩したらいつも駿が来てくれたよー!」

お見舞いというより、学校の配布物届けに行っただけだ。

「ぐぬぬ・・・。ま、まだ嫌とは言われてない。ねえ、駿くん。ふみは良くて私はダメなの?私にお見舞い、来てくれないの?」

か、可愛い。くるみとは違って狙ってないんだろうが、可愛さを溢れさせている。

「あ、ああ、行くよ・・・。体調崩したらな・・・」

「わぁぁ・・・。よし、みんな今日もバンバン質問に来てね。倒れるくらい話聞くよ。」

「おい、なんでそんなこ・・・」

っとあぶねえ!気づけて良かった。

敏感に生んでくれた両親に感謝だぜ。

この言葉の意味。俺は汲んだぞ。

陽花里、Mなんだな!

だから倒れるくらい来てほしいんだな!なかなかのMなんだな。

しかし自らそれを名乗らないということはMであることを隠したがっている。

ここはスルーするのが一番だ。

「ん?どうしたの駿くん。」

「え?い、いや、なんでもない。」

よし、うまくかわせた。

「駿先輩!くるみが体調崩してもお見舞い来ますよね!?くるみだけ仲間外れとかないですよね!?」

「わかったわかった。行くから。」

「今日から目指せ不健康生活、かも・・・」ボソッ

こいつは仲間外れにされたみたいでいやなんだな。

まあ、なんか風邪ひかなさそうだけど。○○は風邪を引かないってな。

「ちょっとあんた。私が体調崩しても来るわよね?別に来てほしいとかじゃなくて、なんていうか、その、ここで乗っとかないと空気読んでないみたいじゃない!」

「はいはい。行くよ。行く行く。」

「もう一回言うけど、別に来てほしいとかじゃないから。勘違いしないで。」

こいつはあれだな。女子の群れというやつだな。

女子の世界においての絶対的ルール。

群れなければならない。他人に、大人数に合わせなきゃならない。(※個人の意見です。)

敏感だからこそ、この4人の思考を読み取ってしまう。

「へえ、やるじゃん。お兄ちゃん。」

「ふん。だろ?」

この妹も俺の思考を少し読み取れるくらいまでには成長したか。

妹の『やるじゃん』は『(みんなの思考、全部正確に読み取ってる!)やるじゃん。』って意味なんだろう。

このまま成長を続けて、いつかは俺の敏感レベルまで達しろ。我が妹よ。


(とか思ってんだろうなーお兄ちゃん。ホントあほだよ。この一夜でいちごとの距離をかなーり詰めたご様子で。これは嬉しい誤算だね!いちごをあのグループの招待する日もそう遠くないかも。)


「よしみんなそろそろ始めるぞ!しっかり勉強して、いい点数取ろうぜ!!」

「「「「「おーーーー!!!」」」」」


こうして俺たちは中間テストへと挑むのだ。


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