第15.5話 赤海ふみと黒川綾音の尾行。

「それで、駿たちはどこに行ったの?」

「明確な場所までは分かんないけど、集合場所は噴水公園で、服屋巡りらしいよ」

「そこの周辺なら、『Anniversary』とか『モノクロ』とかかな・・・」

「ほうやけに詳しいですな、ふみさん。」

「まあ、いつか駿とデート行くならって色々調べてきてたから――って何言わせるの!」

「うんうん、こんなに兄を想ってくれる人がいるなんて妹は幸せだよ。」

「駿も綾音くらい敏感だったらいいんだけどね。」

「お兄ちゃんも敏感っちゃ敏感なんだろうけど、ちょっとというか、かなりズレてるからね・・・」

「もうそんなの慣れたもんだよ。」

そう、そんなの幼稚園の頃からずっと変わらない。

そんなのも含めて、私は駿が好きなんだ。

「それにしても、なんであんなお兄ちゃんにこんなかわいい子が惹かれちゃうのやら。」

「ホント、なんでだろうね。」

自称敏感なくせに私の気持ちには全然気づいてくれないし、陽花里にも玖瑠未にもデレデレしてたりするし、私には全然レディーとして接してくれないし。不満はいっぱいある。

でも、それでも彼の傍にいたい。ホント不思議だ。


「じゃあ手分けして探そう。私が『Anniversary』、綾音が『モノクロ』。よろしく。」

「はーい。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


LION トーク相手:綾音

<こっちにはいなかったよ🤨

こっちもいなかった!どこに行ったのかな・・・>

<お兄ちゃんのことだから、もう昼食にしてるかも🙄

じゃあ近くのショッピングモールにでも行ってみよ。私たちもそこで昼食ね>

<了解😏


◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

「ありがとうふみちゃん!いただきまーす!」

「無理やり連れだしたのは私だし、感謝と謝罪の証だから。」

「まだ見つけ出してないから、まだ感謝はいらないよ。あとふみちゃんと遊ぶのすごく楽しいから、謝罪もいりません。なのでこれは綾音ちゃん可愛いね代です!」

なに言ってるのかわからないけど、私に連れまわされてるの迷惑じゃないよって言ってくれてるのは分かる。優しいところ、兄に似てる。

「相変わらずあんたら兄妹は自己評価高いね・・・。実際、綾音は可愛いからなんも言えないんだけど。」

「あれ~お兄ちゃんは?」

「そ、そんなの言わなくてもわかるでしょ!」

いたずらな笑顔。こういうところは駿に似てるというより、玖瑠未寄りかもしれない。

もちろん駿はかっこいいに決まってる。他の誰よりも。

「とにかく、食べたら捜索再開だよ!」

「おー!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


昼食を食べ終え、捜索再開――のつもりだったが、ついゲームセンターで遊んでしまった。

しかし、それが吉と出た。

店を出ようと出口に向かってると、出口付近の店『BU』に入っていく二人の姿をとらえた。

「ふみ船長。目標確認。二人は店内をいちゃいちゃしながら回っています。」

「綾音隊員。見てたらムカついてきました。攻撃許可を。」

「ええ!そういうの普通隊長判断でしょ!てか、邪魔はダメだよ!」

わかってるけど、あの楽しそうな二人を見てるとどうしても邪魔したくなる。

てか、何あの陽花里の今まで見たことない笑顔。きらきらしすぎでしょ!

もう、駿のやつ見惚れすぎだって!

「お兄ちゃん、あれは相当、白谷さんのこと可愛いと思って見てるね。」

「やっぱりそう思うよね?まるで猫見てるみたいな目だよね?」

「うん・・・。あの目は妹だけにだけ向けてよ馬鹿兄貴!」

「さすがブラコン・・・」

「ブラコンじゃないから!ふみちゃんもあの目は私に向けてほしいって思うでしょ?」

「まあ、思う、かな・・・」

あんな目で見られたこと、ないかもな・・・。

悔しい。けど同時に仕方ないとも思ってる。

ただでさえ可愛い陽花里があんなにキラキラ輝いてるんだ。

そりゃあんな目になってしまう。

「隊長、今度は私が我慢できなくなってきました・・・」

「戦闘態勢、ブラコン隊員。」

「だからブラコンじゃ・・・、あれ、お兄ちゃんだけ店の外に出ましたよ?」

「なんでだろ。喧嘩したのかな?」

「だとしたら外で待ってなんかないでしょ。」

「それもそうだね・・・。今二人一緒じゃないみたいだから、見張りつつ、そこの『ドクタードーナツ』でも食べて糖分補給しない?」

「それは名案ですよ、隊長。」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「お会計220円です。」

「あ、ふみちゃん。白谷さん戻って来たよ。」

私はドーナツを受け取る。

「ありがとうございます。じゃあ、張り込みの続きを――ってこっちのフードコート入ってくるよ!」

「どうしよふみちゃん!」

「と、とりあえず背を向けて歩くのよ!」

「うん・・・!――っと、フードコート入口のアイス買うみたいだよ。」

「じゃあ、少し離れた位置の席に座って監視しよう・・・!」


「ああーやっぱお兄ちゃんまたあの組み合わせだ。変わんないねえ。」

「ホントだ。まあ、私もなんだけど。」

「ホントお兄ちゃんのこと好きだね。もう、早く告白しなよ。てか今してきたら?」

「え!?何言ってるの!?」

「だってほら、今お兄ちゃん一人だよ?」

「え・・・!?」

ホントだ。陽花里がいない。お手洗いかな?

「早くしないと白谷さん戻ってくるよ?多分。」

「でも今は心の準備というか、こんなとこムードのかけらもないし、まだ自信もないっていうか・・・」

「この不意を突くのが良いんじゃ――ってお兄ちゃんは?お兄ちゃんがいた席の後ろにに女の子が立ってる。」

「ホントだどこか行った――ってあの後ろ姿・・・。玖瑠未かな?」

「玖瑠未?」

「そう、てか同じクラスじゃないの?私たちと同じ学校で、綾音と同じ学校だよ。」

「うーん、違うクラスかな・・・?見たことないから。」

「そっか。玖瑠未のリュックで見えないけど、多分今、駿と話してる。」

「え、そうだとしたら距離近すぎない?!」

「わざと近づいてるんだよ。だって玖瑠未はライバルNo.2だから。」

「なっ・・・。お兄ちゃん、実はモテモテ・・・」

「そう。だから困ってるの、かなり。」

「後ろ姿だけの推測だけど、あの子もかなり可愛い雰囲気が・・・。あっ白谷さん帰ってきましたよ。修羅場の予感・・・」

なんか嬉しそう。

でも、あの直接二人の対決。少し興味はある。

やっぱり優勢なのは積極的な玖瑠未かな?

「な!?ふみちゃん!今、玖瑠未ちゃん、お兄ちゃんのスプーンでお兄ちゃんのアイス食べたよ?!あれって間接キ・・・」

「間接キスね・・・」

間接キスくらいじゃ動じない。だって私と駿は・・・。

「は!?玖瑠未ちゃんがあーんしてるよ!お兄ちゃんの口にあーんする気だよ!」

(駿、受け取るのかな・・・)

私は黙って見守る。

パクッ。

「あ、白谷さんがお兄ちゃんを守った・・・?」

あの消極的な陽花里にしては大胆な行動。

陽花里にしては頑張ったが、玖瑠未の攻めはそんなもんじゃないだろう。

このままだとやっぱり勝つのは玖瑠未かな・・・。

しかし、次の陽花里の発言で、どれだけ消極的な陽花里のことを甘く見ていたか、陽花里の脅威を思い知らされることとなる。

「私たち今、その、デ、デートの途中なんだから!!く、黒川くん行こ・・・!」

へ?

普通の会話は聞こえなかったが、その言葉だけははっきり聞き取れた。

聞き取れるくらいの声量だった。

「デ、デートォォォォォォ!?!?」

「白谷さん、きゃわいい・・・!じゃなくてふみちゃ――」

「駿と陽花里がデート?駿と陽花里がデート?駿と陽花里がデート?・・・」

「だめだこりゃ。完全に壊れてしまった・・・」


白谷陽花里。まったく本当に恐ろしいライバルが現れたものだ。

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