第15話 日曜日がゆえに女子とお出かけ。午後

ラーメンを食べ終え、服屋をみて、また服屋へ。

これで三軒目である。

今度は女の子の店という感じでは老若男女問わずの様々な系統の服を取り扱ってる店だった。

相変わらず白谷さんの目はキラキラしている。

相当服が好きらしい。

よく彼女ととショッピングは退屈だなんてことを耳にするけど俺はそうは感じなかった。

こんなに楽しそうな白谷さんを見てるとこっちまで楽しくなって来ちゃうもんだ。

「あ、白谷さんこっちにもいい感じのがあるぞ。」

「どれどれ!」

なんかデートっぽい気もするが、あくまでこれはお出かけで、俺は白谷さんの付き添いらしい。ラーメン屋でも言われた。

『く、黒川くん?き、今日って、その、デート・・・』

『わかってるって白谷さん。今日はただのお出かけ。俺は白谷さんの付き添い。』

『ああ、うん・・・。そうだよね。わかってるならいい。』

俺としてもデートと捉えてしまうと、変に白谷さんのことを意識してしまいそうで。

「じゃあ、買うもの決まったから店の外で待ってて。」

「別にレジまで付き合うけど?」

「い、いや、大丈夫だから!黒川くんは外で待ってて。」

「あ、ああ、わかった。」


言われた通り、入口の前で待機。

なんだ?見られたくないものでもあるのだろうか。

見られたくないもの・・・。下着、とか。

白谷さんの下着・・・。

いかん!変な妄想はしてはいけない!

「お、お待たせ。」

「あ、ああ白谷さん、はしゃぎすぎて疲れただろ。少し休憩するか?」

「べ、別にはしゃいでないし・・・!まあ、休憩はしたい。」

「じゃあそこの51アイスでも食べるか。」

「うん!」


「何が良い?奢るぞ。」

「そんな駄目だよ!付き合ってもらってるし、お昼まで出してもらったんだから。」

「いいからいいから。白谷さんに奢るためにお金持ってきたようなもんだから。」

「わ、私のために・・・。なら、お言葉に甘えて・・・。」

妹に怒られるからとか言ったらかっこつかないから黙っとこ。

「こちら、ジャンピングプールと抹茶のダブルがお二つですね。」

店員さんから受け取り、空いてる席につく。


「白谷さんもジャンピングプールと抹茶が好きなんだな。」

ジャンピングプール。変な名前だがかなり美味い。

「うん。幼稚園の頃からずっとこの二つ。」

「一緒だ。俺も幼稚園の頃からずっとそうなんだよな。」

「うん、知ってるよ。変わらないんだね。」

「え、なんで?言ったけ?」

「あ、いや、これは、そう、ふみに聞いたんだ!」

「ああそうなのか。お前ら、仲いいのか悪いのかよくわかんないな。」

「悪い。」

「即答?!」

「まあ、でも友達ではあるかも。」

「あ、ああ?そうなのか?」

女子の交友関係ってこんなもんなのか?敏感でも異性のそういう系はよくわからん。

「アイス食べたらちょっとお手洗い行きたくなってきたから行ってくるね。」

「行ってらっしゃい。」

って早!もう食べたのか!俺まだジャンピングプール食べ終わったとこなのに。


今日は白谷さん楽しそうで何よりだ。

「だーれだ。」

突然目を塞がれる。

「え。」

誰だ。マジでわからん。まず知り合いか?

白谷さんはこんなことしないだろうし。

「えっと・・・。わかりません。」

「ええ~。ヒントは可愛いです。」

自分で言ってくるとはなかなか自信ありだな。

「俺の知ってる人だよな・・・?」

「当り前じゃないですか!知らない人にやるわけないでしょ!」

まじでわからん。

「あーじゃあ、あれだ。綾音だ。心配でついてきたんだろ。」

あいつは自分の容姿に相当自信を持っている。まあ兄だからとかなしにしてうちの妹はかなり可愛い。シスコンじゃないぞ。

「ぶーっ。綾音って誰ですか。また新しい女の子と仲良くしてるんですか。」

そういって手を目から離してくれる。

「正解は、じゃーん!くるみでした!」

「何だ黄山か。いきなりすぎて軽くパニックになったぞ。」

「何だとは何ですか!かわいい後輩がわざわざ見かけて話に来てあげたのに~。」

「えらい上からだな。てか、なにしてるんだ?」

「くるみは文房具買いに来ただけですよ。先輩こそ何しに?」

「ああ、俺は――」

「ねえ、黒川くん。なんで目を離したらいつも隣に女がいるの?」

「おお!白谷先輩まで!奇遇ですね!」

「確かに奇遇だね。もう話済んだら自分の用事済ませてきなよ。」

「もう少しいさせてくださいよお。あっ、黒川先輩アイス羨ましいですね。一口ください。」

「別にいいぞ。向こうからスプーンとってこい。」

「いえ――」

そういうと黄山は俺の使っていたスプーンを使って、

パクッ。

「んん~、美味しいですね!」

「「な!?」」

何してんだこいつは?!

「おおおおおおおおおまえ、これ、か、かかか間接、キ、・・・」

「どうかしました?黒川先輩?それに白谷先輩も。」

「へ?!わ、私は別に、なんもないけど・・・!?」

「お、俺もなんもないよ・・・。なんかおなかいっぱいだからそれ全部やるわ・・・」

(こいつ気にしなさそうなタイプだもんなぁ・・・)

「ありがとうございます!じゃあ黒川先輩、くるみのアイス、一口あーんしてあげまっしょうか?」

「な!?」

俺の答えを待つことなく、黄山は抹茶アイスを運んでくる。

このままじゃ俺まで間接キ――

パクッ。

「は、白谷さん?」

「わ、私も食べたくなっちゃっただけだから・・・」

「もう白谷先輩、邪魔しないでくださいよ~!」

「ふん、邪魔してるのは玖瑠未だよ。私たち今、その、デ、デートの途中なんだから!!」

「「「デ、デートォォォォォォ!?!?」」」

白谷さんんん?!?!今デートって?!?!?!

あとふみの声が聞こえた気がしたけど気のせいか?

「えっと、その、い、行こ。黒川くん。」

「え、あ、ああ、行こうか。」

白谷さんが手を引いてくる。

黄山は魂が抜けたような顔をしてて微動だにしない。

マジで魂抜けてるんじゃないか。


俺たちは店を出て、家の近くの住宅街まで歩いてきた。

すっかり夕方だ。

「あ、あの、さっきはごめんね・・・」

「だからいいって。何回謝るんだよ。」

さっきのデート発言はしつこい黄山を追い払うために言ったらしい。

しかしそれから白谷さんは謝ってばかりなわけで。

「なあ、白谷さん。今日のお出かけ、別に、デ、デートでもいいんじゃないか?」

「えっ・・・」

「だってさ、男女二人で色んなもの見たり食べたりして、同じ時間と感情を共有して。これって立派なデートなんじゃね?」

謝られてばっかなのは気が引けたため、何か場を和まそうとした結果、デート案を肯定した。

正直、これはデートじゃないかと思ってた自分がずっと心の中にいたのは事実。

男女二人で出かけてこれをデートだと思わない方が無理だ。敏感であるからこそ余計に。

白谷さんの口からもデートが出たということは、白谷さんも少しはデートかもという感情は持ってたかもしれない。

それに俺が見ていたいのは謝ってばかりで、しょんぼりしてるの白谷さんではなく、服を見てるときみたいなきらきら輝いた、楽しそうな白谷さんだ。

だから、デートと言ったことに対して謝っているのならば、今日のお出かけをデートにしてしまえばいい。

事実を言ってるんだから、謝る必要はなくなる。

「うん・・・。そうだね。今日はデートだった・・・」

自分から言ったことだが、改めて白谷さんから言われるとドキッとしてしまう。

「そ、そうだな。デートだった。だから、もう謝るのはなしな。」

「うん。」

そういって白谷さんは微笑む。

やっぱり笑顔がよく似合う。

「そうだ、黒川くん。これ。」

「ん?」

白谷さんが何か手渡してくる。

「私からのプレゼント。」

「え、マジ?めっちゃ嬉しい!」

「そ、そんなに喜ばなくても・・・!」

「いやほんとに嬉しいから。開けていい?」

「う、うん。いいよ。」

開けてみる。女の子からプレゼントでテンションの上がらない男子などいないだろう。しかも美女。

「タオル!すごいお洒落な柄だ!ありがとう!」

白と黒のお洒落なデザインのタオル。

「そんなに喜んでもらえるなら買ってよかった・・・」

「ほんとに嬉しいぞ!でも、俺、なんもプレゼントとか買ってなくて・・・、すまん。」

「いいんだよ。もうもらってるから。」

何かあげたか?

「ラーメンとかアイスとか?」

「うん、そうだね。」

(それもだけど、一番は私にすごく楽しい人生初デートをくれたことだよ。)

「でもそれってプレゼントぽくないぞ・・・」

「じゃあ、そこまでいうなら、これから私のこと、な、名前で呼んで・・・?」

名前呼びだと・・・。ハードルたっか!

「えっと・・・、ひ、陽花里さん・・・?」

「違う、呼び捨てで・・・」

さらにハードルたっか!

「陽花里・・・?」

ボッ。

((恥ずかしい!!))

「じ、じゃあ、私ここだから・・・!」

「俺もここだから・・・。また明日、ひ、陽花里。」

「うん、また明日。しゅ、駿くん・・・」

「え?」

今、駿くんって・・・?

「ば、ばいばい・・・!」

そう言い残して白谷さん、いや、陽花里は家に帰っていった。

それにしても今のはドキドキしたぜ・・・。

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