第16話 デート宣言されたがゆえに恋敵は警戒心を強める。
デート翌日の朝。
「お、おはよ。駿。」
「ああ、おはよう。行こうか。」
「う、うん。」
「ふみ、なんか元気ないな?」
「そ、そんなことないよ。」
「嘘つけ。何年お前と一緒にいると思ってるんだ。お前の顔見れば何かあったかくらいすぐわかる。」
実際、今日のふみは俺じゃなくともわかるくらい元気がない。
「そ、そう・・・?ありがと。」
(ちょっと照れる・・・。でも原因は駿なんだからね!)
歩くスピードが少し早い。
これもふみが元気がない時の症状だ。
「いいからほら、言ってみろ。」
(ここは少し思い切って・・・!)
「じゃ、じゃあ・・・、駿は陽花里のこと好き、なの?」
「へ?」
予想外すぎる答えというか質問に、思わず変な声が出る。
ラブコメでこういう展開って、聞いた子はその主人公が好きで、嫉妬して、主人公に彼女はいないのか確認して――って、その流れだと、こいつ俺のこと好きってなるんだが!!
「い、いや、別に今好きな人はいない・・・」
「そ、そうなんだ・・・。ほっ・・・」
ほっ!?今安心しちゃわなかった?!
いやいやいや落ち着け俺。あのふみだぞ?ちっちゃいころからいつも一緒で、今でもこうしてずっと一緒に――って、ずっと一緒!!??
いつも気づけば隣にはふみがいて、勝手についてきて、もうこれ好きだからじゃね!?!?
何で今まで気づかなかったんだ!?もうほぼ確定だろこんなの!!
普通の鈍感ラノベ主人公ならあっさり終わってしまって、相手がどんよりしたまま終わるなんも進展しない場面なのに、敏感すぎるがゆえに今絶賛ピークを迎えております黒川!!
やべ、なんか急にドキドキしてきた。ふみがいつもより可愛く見えてきた…って落ちつけ俺!!(2回目)
とりあえず落ち着いて話そう。
「なあ、ふみ。」
「なに?」
「お前ってさ、可愛いよな。」
「え!?」
「あっ。」
って、ぎゃああああああああああああ!!!
何言ってるんだ俺はぁぁぁぁぁぁぁ!!
パニックになってつい変なこと言っちまった!!全然落ち着けてねえ!!
(ぎゃあああああああああ!!どうしたの駿!!!??わ、私のこと、か、かわわわわわわわわわわ・・・!?!)
駄目だ。落ちつけ俺。(3回目)
日常会話を楽しむんだ。
そう、日常会話・・・。
あれ、いつも何話してたっけ。
と、とりあえず笑顔、笑顔。にこっ。
笑顔は正義だ。
「な、なあふみ・・・」
「ひゃ、ひゃい・・・?」
平常心、平常心、平常心!!
「お前、俺のこと好きなの?」
「っ・・・!!!!!」
ちょっと待てええええええええええええええええええい!!!!!!
俺今なんて言った?
ガチでリアルにヤバイよ発言しちゃったよね??
脳内で繰り返される『俺のこと好きなの?』という痛すぎるセリフ。
消えろぉぉぉ!!記憶消えろぉぉぉぉぉぉ!!!
「ひょ、ひょれひゃ、ひえふ*@?%#$¥+~~~!(それは言えるわけないでしょ!!)」
(『それは言えるわけないでしょ!!傷つけるから!!』)←駿脳解釈(馬鹿)
ふみは走り去っていった。俺を残して。
はいさよなら。僕のラブコメ展開。
ラノベ主人公、鈍感で正解、だ、よ・・・。チーン。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「あれ、ふみ早いね。おはよう。」
「はあはあ・・・、おはよう・・・」
「走ってきたの?汗かいてる。」
「そうだよ、いひ、いひひひひひひ・・・」
(今はふみに関わらない方が良い気がする・・・)
「お、おはよ・・・」
「ああ・・・、おはよ・・・」
イタイよな、イタかったよな・・・。パニックになって変な事言ってしまった。
よく考えたら、一緒にいるのは幼馴染だからじゃねえか・・・。
「はあ・・・」
「な、何かあった?駿くん?」
「いや!なんもないよ!」
(うん、可愛い!痛くていいや!!)←単純バカ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
昼休み。
今日は母が寝坊したため購買で買うことになった。
(何にしようかなあ。)
購買は初めてだから、少し楽しい。
「黒川先輩っ。」
「ん?ああ黄山か。よう。」
「こんにちは。今日は購買なんですね。」
「ああ、母親が寝坊してな。」
「私と一緒じゃないですかぁ。私たちって運め――って、もうあんまこういうこと言っちゃいけませんね。」
「どうしたんだ?黄山らしくない。」
黄山はこういうからかいが好きでよくしてくる。
「どうしたも何も、彼女いる人にこんなこと言っちゃダメなことくらい常識ですよ。」
「彼女?俺に?」
「はい。白谷先輩。彼女なんでしょ?」
「は?」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なーんだ、付き合ってなかったんですね!」
「付き合ってねえよ。」
昼食。今日は校庭で黄山と二人で。
「でも、デートしてたら勘違いしちゃいますよ!!」
「まあ確かにそうだな。変な気使わせて悪かったな。」
「もう、ホントですよ。でも彼女いないって聞いて安心しました。良かった。」
「っ!」
えっ、まさかこいつも・・・?
「だって、非リア仲間が減っちゃうじゃないですか!!」
「あっ、ああ~、そうだな。安心しろ、俺は非リアだ。」
危ない危ない。また朝と同じ失態をするとこだった。
「でも、デートは否認しないんですね?」
痛いところを突かれた。
「ま、まあ、あの状況はそう呼ぶだろ・・・」
「彼女でもない人とデート、ねぇ・・・」
「俺だってデートの一つや二つしたいんだよぉぉ!!」
彼女いない歴=年齢の人間なら誰しもデートはしてみたいものだろう。
「へぇ、してみたいんだ・・・。じゃあくるみとデートしましょ?」
「え?」
「むーう。白谷先輩とはしてくるみとはしたくないんですか?」
「わ、わかった!しよう!」
ほほを膨らますあたり、あざとい。
「やっぱり乙女としてはちゃんと男の人から誘われたいです。」
こいつ・・・。
「じゃ、じゃあ、俺とデートしよう・・・」
「は、はい。」
(くるみの心臓が!!人生で一番鼓動早いよ今!!言わせたのこっちだけど!)
でもなんでデートに誘ってほしかったんだ・・・?まさかやっぱり・・・
「ま、まあ、くるみぼっちなんで、先輩しか遊ぶ人いないんです!」キリッ。
「よーし!いくぞ!デート行くぞー!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「今すぐだと黒川先輩、デート続きで出費が重なると思うんで、体育祭終わった後とかでいいですよ。」
「ああ、ありがとうな。」
「いえ、私はデートしてもらう立場なんで。」
「「デート・・・?」」
なんだ、このすさまじい戦闘力は・・・!!
「駿、デート?どういうこと?」
「駿くん、説明して?」
「赤海先輩も白谷先輩も、勘違いしてますよ。」
すかさず黄山のフォロー。やっぱり黄山は気遣いができる。
「くるみたちデートの約束したんです!黒川先輩が『俺とデートしようぜ』とか言ってきちゃって。くるみからじゃないんですよ!誤解とけました?」
「とけてるのはお前の脳みそね。」
前言撤回!気遣いまったくできないこいつ。
「なん、」←赤
「だって・・・?」←白
息ぴったりかよこの二人。
あとなんか、戦闘力上がってるんですけど・・・?
「「この、浮気者!!」」
「いっ!?」
「「浮気者は許さないから・・・」」
「や、やめて・・・、ぎゃああああああ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます