第12話 休日デートするがゆえにプランを立てることとなった。

「さあ!みんな集まったね!」

ふみが呼びかける。

「じゃあ点呼するよ。」

「いや、見ればわかるだろ・・・」

合計人数4人。一目見ればわかる。

「馬鹿ね。点呼しないとしまらないでしょ。」

よくわからないが言い返すと面倒なことになりそうだから、ここは肯定しておく。

「ああ、そうだな・・・」

「わかればよし。じゃあ五十音順に、黄山玖瑠未!」

「はーい!いますよ!黒川先輩の隣にー!」

「よし点呼の前にまず席替えね。」

「ふみの意見に賛成。」

「ええ!なんでですか!?別にいいじゃないですかー。私が黒川先輩の隣じゃまずい理由でもありますか?ねえ黒川先輩。」

「え?ああ、別に席なんてどこでもいいだろ。」

「ほら、黒川先輩もこういってますし!」

ムニッ。

そういって黄山が俺の腕にしがみつく。うんこれはDだな。悪くない。

スポーツテストでかなりの時間しがみつかれていたので、今更抵抗する気にもならない。

「なっ!?そ、それよ!それが問題なの!!」

「今すぐ離れろ・・・」

「お二人とも怖いですよー。でもほら、黒川先輩の子の顔、あんまり嫌そうじゃないですよ?」

「こら駿!!そんな顔してるから玖瑠未が調子乗るんでしょうが!!」

おっとあぶない。おっぱいの感触に浸って癒されていたのが顔に出てたのか。

「黒川くんなんか嬉しそう・・・」

反論できず。

「と!に!か!く!まず席替え!!」

「ちぇっ、話し進まなさそうですし、まあ、そこまで言うならいいですよ。」

「じゃあきまり。私もうくじ作っといた。」

白谷さん準備はやっ。


俺たちは今図書室にいる。

今日は閉館日だったが、今日担当になっていた俺と白谷さんには本の整理の仕事を頼まれたため、俺たち以外誰もいない図書室に入ることができている。

2つの机をくっつけて、2人|机|2人 という配置になっている。

俺、黄山、ふみ、白谷さんの順番でくじを引く。

俺は1番。左上の位置だ。

「みんな確認した?じゃあせーので机にくじをだしてね。せーの!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ね、ねえ玖瑠未・・・?あなたは、どこにいきたいの・・・?」

「あ、赤海先輩・・・。なんかどこでもいいというか、行きたかった場所も忘れました・・・」

「私は無難だけど遊園地とかいいかなって思うんだけど、黒川くんはどうかな!」

「ああ、そうだな・・・」

席替え後。あんなにテンションの高かったふみと黄山はどこに行ったのやら。

それに引き替え、白谷さんのテンションが高くなっている。

考えろ俺。なんでだ?

前二人と、隣の白谷さんとの違い。席替え後に生まれた違い。

俺は唯一席替え前後で位置の変化はなかった。

ふみは隣に、白谷さんは前に、黄山は対角線上にそれぞれ移動。

位置関係、移動距離、状況、過去、使命――

なるほど。わかったぞ。この二人が落ち込んで、白谷さんだけテンションが高くなった理由が。

ピースはすべて揃った。


「なあ、二人が落ち込んで理由、当ててやろっか?」

「「え!?」」

「俺わかっちゃったんだよね。」

「「なっ・・・」」

(やばい・・・。駿に私の気持ち伝わっちゃった?確かにあからさますぎたかも・・・。いずれは伝えるつもりだったし・・・。でもまだ心の準備が!)

(さすがにちょっと攻めすぎたし、落ち込みすぎた・・・?でもこの気持ちは本物なんだから。堂々と肯定してその勢いで告白・・・て無理!急すぎるよ!)

「ずばり――」

「「・・・!!」」

「ずばり、寒いからだ!!」

「「はい、そうです・・・!って、は?」」

「4月といえど今日は珍しくかなり冷える日だ。北海道では今日は雪らしいしな。お前たちはスカートで防寒に関しては、ほぼパンツの時と遜色ないだろう。そっち側の2席は柱のせいで日光が当たらず日陰である。対してこっち2席は日光がよく当たり、とてもポカポカ気持ちいい。白谷さんのテンションが高くなったのも同じ理由と言えるだろう。」

「「・・・」」

「にしても即答とは・・・。俺の敏感さがそこまで洗練されていたなんて嬉しい限りだ。」

「やっぱ、黒川くんは馬鹿・・・」

「え?」

馬鹿?なぜ?

「「こっちのドキドキを返せええええええ!!!」」

いきなり元気になったかと思えば、二人は俺に襲い掛かって来た。

「ぎゃああ!なんでだよ!!1発で当てたことはすまなかった!でもこれも俺が敏感であるがゆえなんだ!」

「「そういうことじゃなあああい!!」」


結局、そのまま日曜日のデートのプランは立てられず、おじゃんとなった。

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