第13話 入浴してたがゆえに妹に電話を代わりに出てもらった。

ざば~~~んっ。

「ふう・・・」

お風呂。一日の疲れが癒される至高の時間だ。

今日は土曜日だったので特に何かしたわけでもないが、やはり生きてるだけでも疲れるものだ。

「明日は今観てるアニメの二期を観て、それから・・・」

まあ、明日することは明日決めるか。

今は何も考えずにお風呂に浸ろう。

「お兄ちゃ~~ん!電話鳴ってるよ~~!」

せっかく浸ってるのに俺を呼ぶ声。

「どうせふみだろうから出て要件聞いといてくれー!」

妹の黒川綾音。1つ年下で今は高校1年生。同じ高校でもある。

ふみとは昔から仲が良く、二人で買い物に行くこともあるようだ。

俺に電話かけてくるのはふみくらい、というかふみしかいないので今回もどうせふみだろう。

「わかった~!」


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


本来ならば明日は黒川くんとデートだった。

すごく楽しみで、新しい服も買ったのに。黒川くんの馬鹿。

まあ、一概に黒川くんだけが悪いわけじゃないけど、9割くらい黒川くんが悪いよね。

でも、黒川くんも日曜日そのつもりだったんだから、予定、もしかしたら空いてるかも。

でもでも、黒川くんって実は人気あるから、もう他の女の子との予定入っちゃってたりして・・・。

黒川くんが女子とデート・・・。

それは、嫌だな・・・。

やっぱり私から行動を起こさなきゃ何も変わらないよね。

LIONでメッセージ送る?でもそれだと見ない可能性もあるし、やっぱ確実なのは、電話?

無理無理無理!恥ずかしくてしぬ!

でも、他の子にとられちゃうのは、もっと無理だ。

勇気を絞り出せ、頑張れ白谷陽花里。

よし、かけるよ。

(プルルルルルル・・・)

ガチャ。

「はっ!も、もしもし?」

「もしもーし!」

(!? 女の子の声!?)

「あれ、ふみちゃんじゃない・・・。すみません、てっきり友達かと思って。」

「い、いえ。私、白谷陽花里と言います。あ、あの、これ、黒川くんのスマホですよね・・・?」

「はい、合ってますよ。今手が離せないみたいなので、代わりに私が。」

(お兄ちゃんの入浴シーンなんて思い浮かべたくないだろうし、入浴中ってことは伏せておこ。)

「そ、そうですか。ではまた掛けなおします。」

「うちの黒川駿に何か用があるんじゃ・・・?私が代わりに伝えておきますよ。」

「う、うちの・・・!?」

「ん?どうかされました?」

(え、うちのってこの子、黒川くんとそういう関係なの!?ま、まさか黒川くんに彼女?しかも、この時間に一緒ってお、お泊りデート?!)

「い、いえ、なんでもないです。あ、あの、明日の予定とか、聞きたくて・・・」

(もしも彼女だったら、宣戦布告してるみたいな感じだけど・・・。でも、もしホントに彼女だったら・・・)

「な、る、ほ、ど・・・。暇ですよ!休日はいつでも暇です!」

(お兄ちゃんったら恋愛面結構心配だったけど、なかなかやるみたいじゃん!)

「えっ・・・?あ、そうですか・・・」

(この子なんで黒川くんの予定把握してるの・・・?やっぱり恋人だから・・・?でも恋人だとしたら女の私が電話かけて、デートにまで誘おうとしてるのに全く動じてないのはなんで・・・?もしかして相当可愛くて、自分にかなり自信があって余裕があるとか!?だとしたら強すぎるよ・・・!)

いろいろパニックになってたら電話の奥で声が聞こえた。

「お、まだ話してたのか?」

「あ、おかえり~」

黒川くんだ。

なんだか声のトーンが優しい。私の時よりも。もっといえばふみの時よりも。

ってことはやっぱり、そうなのかな――

「今日は早上がりだったね、。」

「――おに、っ!?!?」

(お兄ちゃん!?!?)

冷静に考えればそうだ。黒川くんにお泊りデートができるわけがないじゃないか。

玖瑠未に腕にしがみつかれたくらいであんなに緊張してるんだから。

黒川くんに電話するという緊張から、変な方向に考えちゃった。

「ああ、それよりふみ、なんて?」

「ううん、ふみちゃんじゃないよ。白谷陽花里さん。明日デートしたいんだって。」

「「えええええええええええええ!?」」

何言ってるの黒川くん妹!まだ誘ってないし!

「そういうわけらしいから、あとは二人でゆっくりどうぞ。」

そういって黒川くん妹は電話を黒川くんに渡したっぽい。


「も、もしもし?代わったぞ。黒川駿だ。」

「く、黒川くん。は、白谷だよ、白谷陽花里だよ・・・」

「わかってるよ。さっきは妹がすまんな。」

「い、いや、全然いいから。」

「ありがとう。それと、あの、デ、デートって?」

「え、いや、ちがくて、デ、デートに誘ったとかじゃなくて、その、お、お出かけ、そう、お出かけ!服買いたいからついてきてほしくて・・・。一人じゃ重いかもで、よければ、助けてほしいなって・・・」

「なんだ、そういうことか。デートのお誘いだったら危うく白谷さんに惚れられてるのかと勘違いするとこだったぜ。」

「な、なに言ってんの・・・。そんなわけ・・・。あの、そういうわけだから、一緒に、来てくれる・・・?」

「ああ、もちろんだ。」

「わああ・・・。ありがとう!じゃあ、明日朝10時に噴水公園集合でどう?」

「明日朝10時に噴水公園な。了解。」

「あ、ありがとう。じゃあ、また明日。」

「うんじゃあな。」

ピッ。

ふう。緊張した。

黒川くんと話すのまだ緊張するけど、最初よりは慣れてきて普通に話せること出来てるのに、電話だとまた違った緊張があった。

しかもデートのお誘い電話。

勇気出してよかった。

明日は初デート。黒川くんとの初デート。人生で初めての私のデート。

今夜はちゃんと寝れるかな。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


ピッ。

「電話、終わったんだね。」

「ああ、まさか白谷さんから電話がかかってくるとはな。ごめんな綾音。ふみだと思ったばかりに。」

まさか白谷さんだとは1mmも思わなかった。

「謝るなら私だよ。ふみちゃんだと思って相手確認せずに出ちゃったから。ごめんね、お兄ちゃん。」

ホントにいい妹を持った。

「ならお互い悪いってことでこの話はおしまいだ。明日は白谷さんの買い物に付き合うから早く寝なきゃ。」

「お出かけ?」

「ああ。服買いたいけど、荷物持てるかわからないから付いてきてほしいんだと。お前が変なこと言うから、兄は勘違いしかけたぞ。」

「ああ、ごめんごめん。」

(デートって言えなかったんだろうなあ白谷さん・・・。まあ白谷さんには白谷さんのタイミングとや作戦があると思うし、安定のズレズレ馬鹿兄貴だし。とりあえず妹の務めは背中を押してあげることだよね。こんな馬鹿兄貴に好意寄せてくれるなんてありがたすぎるもんね!)

「じゃあ、お兄ちゃん。私が女の子の買い物についていくときに注意すること教えてあげるよ!白谷さん、怒らせたくないでしょ?」

「安心しろ。俺は敏感だ。気遣いはできる。」

一番長い時間一緒にいる妹ならば、それくらい百も承知だろう。

「はあ、出た出た。いいから聞いとけ!そして心掛けろ!」

(白谷さん・・・、明日は頑張ってね・・・)

「は、はい!綾音様!妹様!」

妹には敵わないものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る