第11話 スポーツテストがゆえにまたもや修羅場になった。後編

俺は黄山と一緒に次の種目選びをしていた。

「見た感じ、立ち幅跳びが一番いてるな。」

「じゃあ、立ち幅跳び行きましょっか。」

体育館にはもうふみと白谷さんの姿はなかった。

二人で回ってるのか?だとしたらやっぱり実は仲いいのかな。

「黒川先輩、また勝負しますか?」

「おう、いいぜ。次は負けねえ。」

立ち幅跳びは得意中の得意。今度こそ負けない。

「じゃあ、くるみが勝ったらジュース奢ってください。」

「いいぞ。俺が勝ったら逆に奢ってもらうからな。」

「いいですよ。てか、勝ったらこの腕から離れろとか言わないんですね。」

「あっ。」

しまった完全に忘れていた。

「もしかして先輩、す・・・」

「い、いやっ、ちがっ、忘れてただけなんだ!スケベとかじゃない!」

「えっ?あっ、別に隠さなくてもいいんですよー?」

(スケベじゃなくて、好きなんですかって聞こうとしたのに・・・。ホントズレてるなぁ。)

「隠すも何も、違うから!」

「まあ、どっちでもいいですけど。さ、次くるみたちの番ですよ。」

「あ、ああ。やるか。」


黒川駿 260cm 9点

黄山玖瑠未 190cm 8点


「ああ~、負けちゃいましたか。あとで奢りますね。」

「いややっぱ、女子から奢られるのは悪い気がするから、今回はいいや。」

「ダメですよ~黒川先輩。約束は約束ですから。それに、負けたのにやっぱいいやって、くるみがムズムズします。」

「まあそっか。じゃあお願いしよっかな。」

「はい!また欲しい時言ってください。」

「ありがとうな。よし、じゃあ次は隣の反復横跳び行くか。」

「そうですね。というか全体的に結構空いてきましたね。」

「もうこの時間だと全種目終えた人もいるんだろうな。」

(そういえばふみと白谷さんはもう終わったのかな?)

そんなことを考えながら、反復横跳びの列に並ぶ。


「じゃあ黒川先輩、勝負しましょう!」

「また勝負か。好きだなあ。」

「だって楽しいじゃないですか。」

「確かに楽しいな。じゃあ今度の賭けは何にする?」

「そうですね~。くるみが勝ったら・・・」

黄山がニヤニヤしながら言う。

「今度の日曜日、くるみとデートしてください!」

「デっ・・・、って、ええええええええええええ!!?」

「嫌ですか?」

「いや、嫌じゃないけど・・・。びっくりしたといいますか・・・」

「嫌じゃないなら決まりですね。」

「まあ、勝ったらな・・・」

こんな可愛い後輩と出かけらるのは全然悪いこともない。むしろ贅沢だ。

すると突然、後ろに気配、いや、殺気を感じた。

「へえ~面白そうじゃない、その勝負・・・」

「私たちも入れてもらっていいよね・・・?黒川くん、玖瑠未・・・」

ふみと白谷さんだ。

(なんかめっちゃ怒ってる・・・。あっ、勝手に抜け出したからか・・・)

「勝手に抜け出したのは謝るから、まあそう怒らないでくださいよ、お二人とも・・・」

「別に怒ってないけど?ねえ陽花里。」

「うん、怒るわけないじゃん。私たちはその勝負に参加したいだけ。」

どう見てもいつもと違う二人。笑顔の目の奥が笑ってない。

「全然いいですよ!白谷先輩と・・・、そちらは?」

「赤海ふみです!黒川駿と幼馴染なんです!あなたは?随分、駿と親しそうだけど。腕なんか組んじゃって。」

「あ、私は黄山玖瑠未って言います。1年生なので赤海先輩の後輩です。黒川先輩とどういう関係かっていうと・・・」

そういって黄山はさらに俺の腕をホールドし、体を押し付けてくる。

それはもうムニッと。

(あたってるうううう!!女の子の胸のあれが当たってるうううう!!!!)

「ちょっ・・・、なななななななななな何してんのよおお!!し、駿に彼女がいないことくらい知ってるんだから!!」

(私でもそんなにくっついたことないのにいい!!)

「さすが幼馴染さんです!よく気づかれましたね!仲のいい先輩後輩って感じですよ。」

するとすかさず白谷さんが、

「な、仲が良いにしてもくっつきすぎ・・・。私も黒川くんとは仲良しだけど、そんなことしない・・・」

さりげない仲良し認定が嬉しい。

「じゃあ、くるみの方が仲良し度では上ってことですね。」

「わ、私だって、それくらいできるもん。」

そういって白谷さんが近寄ろうとする。まさか、白谷さんまで・・・?

が、しかし。

「ダメですよ白谷先輩。私はちゃんと勝負に勝ってこうしてるんですから。」

「勝負?」

白谷さんが立ち止まり問う。

二人にしがみつかれたら緊張で呼吸困難になるところだ。

「そうです。種目の点数でくるみが勝ったら腕にしがみつかせてくださいって頼んで勝ったのでこうしてるんですから。」

「くっ・・・、このイエローめ・・・。なかなかやりまっせレッドさん・・・」

急にどうした白谷さん。

「確かにやっかいねWhite。でも、私たちもその勝負で勝てばいいだけのこと。いざ勝負よ!Yellow!」

無駄に発音いいのやめれ。

「レッド先輩も、ホワイト先輩もまとめて受けて立ちましょう。」

ノリいいなおい。

(こいつら俺のこと好きで取り合ってんのかと期待してたのに、茶番したかっただけか。)

「てかあの・・・、それはなんかのパロディとか?」

「ひゃ!く、黒川くん・・・。ふみがこういうの黒川くんが好きだからやれって・・・」

「別に嫌いじゃないけど、特に好きでもないな・・・」

「な、なっ・・・。騙したなふみ!」

「さあ、何のことやら。まあとにかくその勝負私たちもいれてもらうから!」

白谷さんがふくれているのを無視してふみが話を進める。

「じゃあ、黒川先輩に勝った人が日曜日デートですね!」

俺の意見なんて聞かれることはなく話は進み、勝負が開始された。


「まず俺か。」

俺が1位になれば、誰ともデートをせずに済み、はずかしい思いをしない。

よしやる、ぞ・・・?

よく見ると、靴紐が両方解けてる・・・!

直してる時間はない。

このままやってやる・・・!


黒川駿 1回目 41点 スコア4点

(ぬおおおおおおおおおおお!!!靴紐に気を取られすぎて全然いけなかったあああ!!)

大丈夫、2回目で取り返そう。

「私たちも頑張るぞぉ!」

「黒川くん、応援しててね。」

「黒川先輩はくるみだけ見てればいいですよ~!」

「あ、ああ、みんな頑張れ・・・」

(今のうちに靴紐を・・・)


赤海ふみ  1回目 45点 スコア7点

白谷陽花里 1回目 40点 スコア5点

黄山玖瑠未 1回目 55点 スコア10点


「はあはあ・・・、7点・・・。まあまあね・・・」

「ご、5点・・・。私にしては上々だけど・・・」

「やったぁ!10点!これは私は確定ですね!」

「なっ・・・」

さすがだ黄山。あと気づいた。こいつ運動神経バケモンだ。女版緑島裕二だ。

「じゃあ、次は黒川先輩ですよ。」

まだ余裕のある黄山が話してくる。

「ああ、がんばるよ。」

「9点取った私と二人っきりですよ?」

囁くように言う。動揺するな俺。動揺すれば黄山の思うつぼだ。

「い、いやあ・・・。い、10点取るよ。」

ちょっと声が裏返ったが、うまく動揺を隠せた。

グッジョブ俺!

心を落ちつかせ位置に就く。


「よーい・・・」

笛が鳴る。

よし、いいペースだ。このままいけば10点、も・・・。

って、おいいいい!!また靴紐がほどけやがってる!!!

もう今回は後がない。気にしちゃだめだ。

このまま、この勢いでやって、や、る・・・?

ズルっ。

「へ?」

一瞬何が起きたか分からなかった。

そうだ、滑ったのだ。ほどけた靴紐を踏んで、俺はこけた。


黒川駿 2回目 37点 スコア3点


俺はコールド負けした。

「駿ったらあんなにずっこけちゃって・・・。ぷっ・・・」

「だ、大丈夫だった?わ、私はおかげで助かったけど・・・」

「いい滑りでしたね!黒川先輩は結局4点なので、日曜日、確定ですね。」

「あっ、ああ、わかり、ました・・・」

無様だ。恰好なんて全くつかない。

そして一つ疑問が浮かんだ。

「てか、3人とも俺に勝ったけど、一緒に行くのは1位の黄山なのか?」

「いえ、違いますよ?、なので、です。」

「なっ・・・」

「デート楽しみにしてますね。く、ろ、か、わ、せ、ん、ぱ、い。」

ニンマリ笑う。俺をからかってる時の笑みだ。

「そういうわけだから、よろしくね、駿。」

「黒川くん、私、楽しみにしてるから・・・」

「あっ・・・、はい・・・」


こうして男女比1:3の休日デートが決まり、大波乱?のスポーツテストも幕を閉じた。

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