第7話 ボーっとしてたがゆえに後輩を案内することになった。
今日は昼休みに図書委員の仕事がある。
白谷さんは、「お手洗いに行くから先に行ってて」と言ってきたので、一人で図書室に向かうことにした。
ふみは、「図書室くらい一人で行けばいいのに。ほら、はやく行った行った。はやく行かないと、陽花里が追い付いてくるわよ。」って感じで、白谷さんとはあまり近づいてほしくなさそうだ。
仲が悪い相手と幼馴染の俺が、一緒にいるのが嫌なんだろう。
よっぽど嫌いなんだな。
なんてことを考えてると。
「すみませーん。あの、図書室に行きたいんですけど、新入生で道わからなくて。よかったら案内してくれませんか?」
おい、なんだこの上目遣い。キラキラエフェクト入ってるよ。
「あ、ああ。いいよ。」
「ありがとうございます!ボーとしてたからこの人やばい人なんじゃないかと思ってましたけど、親切な人で良かったです!」
(めっちゃ笑顔で、普通にディスってきやがった・・・。でも可愛いから許そう!)
「ならなんで声かけたんだ。」
「なんかヤンキーだったとしても、怖そうじゃないし、イケメンでもなかったので緊張しないかなって!」
(この野郎・・・)
「あ、イケメンじゃないですけど、ブサイクじゃないですよ?自信もってください!」
すごい笑顔で言ってくる。
(もういい!かわいいから許す!)
「あ、私、黄山玖瑠未(きやまくるみ)って言います!一年です!」
「ああ、俺は黒川駿。二年だ。」
「じゃあ先輩ですね!黒川先輩って呼びますね!」
(あざといなこいつ・・・。可愛いからいっか・・・)
「おう。なら俺は黄山って呼ぶな。」
「くるみでもいいですけど!」
「まあ、まずは苗字呼びから・・・」
「そうですね。とりあえず行きましょう!」
腕を組んで、黄山が俺を引っ張る。
「おい、行くから腕組むのはさすがに・・・」
「人肌を感じてるだけなんで気にしないでください!くるみ、友達いないですし・・・。あっ!別に先輩に気があるとかじゃないので!」
「ああ、そうですか・・・」
(こいつ一瞬表情が・・・)
その時だった。
凄まじい勢いで走ってきた何者かが、俺と黄山を引きはがした。
「ハアハア・・・。く、黒川くん・・・。こいつは誰?」
白谷さんだった。助かったっちゃ助かったが、
(目が怖いって白谷さん・・・!)
「あ、ああ、さっき会った一年の黄山さんだ。図書室まで案内してくれって。」
「さっき会ったばっかの相手と腕を組むんだ・・・」
「誤解だよ!黄山のほうから組んできただけなんだ!」
「へえ・・・」
疑われている。
「こんにちは!黄山玖瑠未といいます!もしかして黒川先輩の彼女さん?」
「彼女っ・・・!」ボッ
白谷さんの顔が真っ赤になっている。
大丈夫わかってる。人間慣れしてないから、人と話すのが恥ずかしいんだな。
ここは俺に任せろ。
「彼女じゃないよ。友達の白谷さん。同じクラスで委員会も一緒なんだ。」
「そうでしたか。誤解してごめんなさい。白谷先輩、こんにちは。」
「こ、こんにちは。」
ギロッ。めっちゃ俺を睨んでくる。
何かおかしなこと言ったか?むしろ助け舟を出したぞ?
「へえ、そういうこと・・・」ボソッ
「ん?何か言ったか?黄山。」
「いえいえ、何でもないですよ。」
「黄山さん?何で黒川くんに声掛けたの?」
「そんなの決まってるじゃないですか。私のタイプだったからですよ?」
「なっ!!!」
「どうした白谷さん!口が開いるけど・・・」
白谷さんの口は開いたまま、なかなか閉じない。
(まさか!なんでこんなやつタイプになるんだとかと思って呆れてるのか?!傷ついた。敏感故に傷ついた・・・。てかこいつ嘘ついて白谷さんからかってるな・・・。さっきフツメンとか言ってたからそんなのあるわけないし。)
(やっぱり白谷先輩って、黒川先輩のこと・・・。おもしろそうだから、時々からかっちゃおかな。)
「なんて、嘘ですよ、白谷先輩。話しやすそうだったからです。」
「そっか、よかっ・・・、じゃなくて、べ、別にどっちでもいいけど。」
よかった。誤解は解けたみたいだ。
「じゃあ先輩。案内よろしくです!」
「ああ。じゃあ行こうか。」
案内しようとしたその時。
「ど、どうしたの白谷さん・・・?」
白谷さんが腕にしがみついてきた。
「ど、どうしたって。会ってすぐの人とこんなことしてたくせに、何日も経ってる私とするのは嫌なわけ?」
(目がまた殺し屋の目なんだよな・・・。嫌なんて言えるわけない。)
「い、嫌じゃないよ、白谷さん。じ、じゃあ行こうか。」
「う、うん。」
大丈夫白谷さん。敏感な俺にはわかってるから。
知らない人と話して、しかも唖までさせられて疲れたんだよな。少し足ガクガクしてるし。
(勢いで言っちゃたし、腕に抱きついちゃったけど、ドキドキやばい。足震えてる。しぬ。)
白谷さんを腕に連れながら、俺たちは図書室へ向かった。
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