第6話 ある一本の電話をしたがゆえに二人は舞い上がった。
筋肉痛。
昨日、ふみと白谷さんに夜遅くまで追いかけられたせいだ。
安達先生派に回っただけなのになぜあんなに怒るんだ。
もしかして、あいつら俺のこと好きだったりしてとかいう思考も生まれたが、一瞬で消えた。
ふみは幼馴染で一緒に長い時間を過ごしてるから、いつの間にか俺の魅力に気づき、恋に落ちてるパターンの可能性も考えたが、あいつの俺に対する態度は幼少期の頃から変わらず、そんなそぶりを微塵も見せない。
ましてや白谷さんなんて、一緒に過ごしたのは1時間くらいで、主に担当する曜日を決めただけ。ここに惚れる要素なんてない。
仮に委員の仕事の担当曜日を一緒に決めただけで惚れるヒロインのラノベなんてあってみろ。絶対に売れないし、そのレベルで惚れてしまったら、もう全校生徒好きになってしまうレベルだ。そんなのクソラノベだ。
何はともあれ、今日も普通に学校だし、放課後には白谷さんと図書委員の仕事もある。
あまり二人を刺激しないようにしなければ。
「おはよう駿!今日も一日頑張ろうね!」
「お、おはよう。頑張ろうな・・・」
おかしい。普通のふみだ。
もしかしたら口もきいてくれないかと思っていたし、こんな風に呼びに来ないかもとも思っていた。
実際、ふみは機嫌が悪いと、呼びに来ない日もある。
(逆に怖い。)
「今日体育あるから楽しみなんだよね!」
「あ、ああ。お前体育好きだもんな。」
(駿ってば、昨日私を怒らせたから、ちょっと気を使ってるんだね!全然私は怒ってないし、何なら昨日も怒ってなかったし?だって昨日は・・・)
昨日夜。
「あ、あのもしもし。赤海と申します。」
「お電話変わりました、安達です。あら、赤海さん。どうされました?」
「少し、相談がありまして・・・」
「あら、何でも話してください。」
「えっと、恋愛相談なんですけど、先生は、その、生徒と先生の恋愛ってありだと思いますか・・・?」
「あら、予想のはるか斜めを行く質問だったわ。そうね、なしではないけど、交際するとしても、卒業をして、生徒と先生という位置関係でなくなってからですかね。」
「や、やっぱりそうですよね!!ありがとうございます!ホッとしたぁ。」
「いえいえ。赤海さん好きな先生がいるんですか?」
「違うんです!私が好きなのは同級生のし・・・って、先生誘導尋問上手いですね!!やめてください!!」
「別にうまくもなんともないと思いますけど・・・。赤海さんの恋がうまくいくことを祈ってますね。」
「ありがとうございます!!」
「あ、ちなみにその相手の方、幼馴染だといいですね。恋って幼馴染が相手の場合、成就する確率がぐんっとあがりますから。」
「なっっ!!!!」
(なんてことが・・・。ぐへへ・・・)
この女教師は、ただの幼馴染同士の恋愛が好きなだけである(天の声)
放課後。
今日は図書委員の仕事がある日だ。
昨日のことがあったので、白谷さんと図書室で険悪な雰囲気になっている。
はずだった。
「黒川くん、あのね、きょ、今日も一緒に帰りたい。」
「お、おう。いいよ。」
(あれ、彼女も普通だ。むしろ機嫌がよく見えるぞ・・・)
「嬉しい。ありがとう。」
(黒川くん、なんだか気まずそう・・・。もしかして、昨日の件で私怒ってるって思ってるのかな?全然怒ってないのに。むしろ、私今心があったかくて幸せ。だって昨日・・・。)
昨日夜。
「あ、あのもしもし。白谷と申します。」
「お電話変わりました、安達です。白谷さん。どうされました?」
「少し、あの、相談が、ありまして・・・」
「あら、何でも話してください。」
「えっと、恋愛相談なんですけど、あの、先生は、その、せ、生徒と先生の恋愛ってありだと思いますか・・・?」
「この質問流行ってるのかしら。なしではないけど、交際するとしても、卒業をして、生徒と先生という位置関係でなくなってからですかね。」
「や、やっぱりそう、ですよね!!あ、ありがとうございます!」
「いえいえ。これは今度こそ・・・、白谷さんが先生のだれか好きなんですか?」
「今度こそ・・・?いえ、違います。私は、同級生のし、じゃなくて、私のことを助けてくれたヒーローのことが大好きなんです。って、先生誘導尋問上手すぎます・・・。や、やめてください!!」
「この際、この技術が生かせる職場にでも就こうかしら。それはそうと、白谷さんの恋がうまくいくことを祈ってますね。」
「ありがとうございます・・・!」
「やっぱり恋するなら、なるべく幼馴染のほうがいいんですよ。恋って幼馴染が相手の場合、成就する確率がぐんっとあがりますから。」
「ひゅっっ!!!!」
(あの子ほどではないけど、私も・・・、そうだから・・・。)
また一人、この女教師の趣味に犠牲者が出たのであった。(天の声)
「黒川くん。なんでこの女がいるの?」
「駿。なんでこの女がいるのかな?」
「白谷さんは図書委員が一緒だったからで、ふみは・・・、お前は何でいるんだ?」
「扱いがひどい!私は先生から頼まれたことしてたらこんな時間になってただけだから!」
「なら、もうひと仕事でもしてきたら?私と黒川くんは図書委員同士、親睦を深めながら帰るから。」
「あら、あなたは図書室の戸締りしっかりできてるかの確認でもしてくれば?私たちは過去13年の共に過ごした時間を振り返りながら、帰ってるから。」
「「ぐぬぬぬぬぬぬ・・・・!」」
(やっぱりこいつら、仲悪いんだ・・・)
鈍感男なら、ここで「なんで二人とも怒ってるの?」とか馬鹿な質問をして、二人から罵声を浴びせられ、精神的に傷つくのだ。
見ればわかるだろう。二人は仲が悪いんだ。だから怒っている。
本当に鈍感は馬鹿だし、見ててイライラする。いやこれは嫉妬ではない。
敏感男による正解を見せてやる。
「・・・・・」
何も言わずに立ち去る。気配を消して。
これは二人の問題だ。ここから仲良くなるも、さらに仲が悪くなるも、二人、しだ、い・・・。
気配を消したはずなのに、立ち去ろうとした俺の両肩ががっちりと掴まれていた。
「黒川くん、私と一緒に帰ってくれるって言った、よね?」
「駿は13年間ほぼ毎日、私と一緒に帰ってるのにどうして今日は一人で帰ろうとするのかな?」
だめだ、殺される。手を振り払った俺は、逃げ去ろうと必死に走った。
しかし逃亡劇も1秒で終了。後ろから学生鞄という名のミサイルが二発、俺の背中に飛弾した。
さらに、バカ、あほなどの小学校低学年レベルの悪口を言われた。
普通に傷ついた。
敏感であるがゆえに精神的だけでなく、肉体的にも傷ついた俺なのであった。
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