第5話 白髪美女と一緒に下校したがゆえに修羅場になった。
どういうわけか、白谷さんに誘われて一緒に帰ることとなった。
「は、白谷さん、何で今日一緒に帰ろうって誘ってくれたの?」
しばらく沈黙が続いていたが、勇気を出して切り出した。
ある程度時間も経ったので、緊張も初めよりは解け、声の震えもだいぶ収まった。
「あ、明日から一緒にいる時間が増えるから、その、少しでも、な、仲良くなりたくて・・・」
あまり男慣れ、というより、人見知りで人間慣れしていないのだろうか。
声が小さく、言葉も途切れ途切れだ。
「は、白谷さん。もう少し、リラックスしていいから・・・」
「ご、ごめんね。人と話すの得意じゃなくて・・・」
予想はビンゴ。さすが敏感男の俺。
「ゆ、ゆっくり慣れていけばいいよ。」
まだまだ緊張しまくっている俺が言えたことではないが。
「う、うん。じゃあ、またこんな風に、話してくれると嬉しい。」
「あ、ああ。いつでも構わないよ。」
俺と白谷さんは最初に比べたら、だいぶ自然に話せるようになった。
白谷さんの声は小さいままだが、それは彼女の消極的な性格が故になんだろう。
「黒川くんは、いつも帰るときは、お友達と一緒なの?」
「うーん。友達っちゃ友達になるのか?幼馴染の子と帰ってるよ。」
その時、白谷さんの穏やかな表情が消えた。
「それって、あの赤海ふみって子かな?」
「あ、ああ、そうだよ。よくわかったね。」
(あれなんだろう。黒い炎がメラメラしてるように見えるんだけど。
はっ!これはよくアニメである『嫉妬』の演出・・・!
だが待て。彼女とは会ってまだ一時間ほど。惚れられるようなシーンはなかったぞ・・・。何かあるはずだ。よく考えろ・・・。)
そこで一つの結論にたどり着いた。
(まさか・・・!ふみと白谷さんって・・・仲が悪いのか!!)
確かに元気で明るいふみは、控えめでおとなしい白谷さんからすれば、苦手なタイプの人間だろう。
嫌いな人の話なんかしたくないよな・・・。話題を変えよう。
「そういえば白谷さんは、どの辺に住んでるのかな・・・?」
(今、俺の家の前なんだけど、女子と帰ってるんだから、どうせなら家の近くまで送らないとだよな。)
「ここだよ。」
「へ?」
予想外の言葉が返ってきたせいで、思わず声が裏返る。理解も出来ない。
「ここ。」
「ここ、俺の家だけど・・・?」
「違う、その向かい側。」
「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」
今、俺以外の叫び声まで聞こえたような・・・。
「って、何で、お前がいるんだよ!?ふみ!!!!」
「へ!?あの、えっと、その、あっ、ぐ、偶然通りかかっただけだけど!?」
「ああ、そっか。まあ、お前の家そこだしな・・・」
「そ、そうだよ!別に気になってあとをつけてたわけじゃないから!!」
「それつけてたって言ってるようなもんだから!!」
俺とふみがいがみ合っていると、学生カバンが飛んできて、俺の家のポストに直撃。ポストは粉砕した。
「ぎゃあああああああ!!マイホームポストがぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ご、ごめんね。黒川くん・・・。ちょっと手が滑って・・・。」
「ぜ、全然大丈夫だから。よ、よくあることだよね。アハハハハハ。」
「よくないわよ!あんなスピード、手が滑ったどころのものじゃないわよ!」
「黒川君は許してくれたのに、なにあなた。関係ないのに会話に入ってこないで。」
「関係あるわよ!私、彼と幼馴染なんだから!」
「それがどう関係あるっていうの?」
「あ、あるもんはあるもん!」
「別にあなたが怒ってようが、黒川くんが許してくれさえすれば、私はそれでいい。」
(怖い・・・。やっぱりこの二人、仲悪かったんだ・・・。)
俺はぶるぶると震えていた。
これが俺を取り合っての喧嘩なら、ここで「ハッハッハッ!やめいやめい。この俺を取り合うことなんてさ!そんなに欲しければ、俺は二人のものになってやるよ。キラッ。」って言って鎮められるのにな・・・。
「ねえ駿!駿はどっちの味方なの?」
「黒川くんは、わたしの味方だよね?」
迫りくる二つの恐怖。
「俺は・・・。」
どうする。どちらか選んでも、もう片方にやられる。
なら方法は一つ。
どちらにもつかず、どちらも敵に回さない。
第三者の登場・・・!
「俺は、保健室の安達先生がいいな!」
よし、いい答えだ。
いきなり無関係の人を出されて、「は?何言ってんのこいつ」となり、争ってることがばからしくなるはずだ。
静かになった。俺の思惑通りいったのだろう。
「ねえ駿、その話、じっくり聞かせてもらおっか・・・」
「そうだね。安達先生のどこがいいのかな・・・?」
「え?」
(やばい、殺される・・・)
二人とも敵にしないつもりが、なぜだか二人とも敵となり、むしろ団結しちゃってるみたい。
にっこり微笑みかけても、お二人の殺し屋のような目つきは変わらなかった。
不吉な笑みも浮かべている。
俺は逃げ出した。捕まれば人生が終わる気がしたからだ。気がするというか確信していた。
「逃げるな!駿!!」
「黒川くん、どこに行くの・・・?」
あいつらの仲が良いのか悪いのか、俺にはわからなくなった。
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