第4.5話 私の名前は赤海ふみ。

私の名前は赤海ふみ。高校2年生。

私には幼馴染が2人いる。

一人は、とてもイケメンで、スポーツ万能、成績もトップクラスで、学校のアイドル的存在。もちろん女子にとてもモテている。

私はその彼のことが嫌いではないけれど、あまり二人きりにはならないようにしている。

周りの女子の視線が痛いからだ。

だから、幼馴染とはいえ、あまり交流が深いわけではない。


もう一人は、フツメンで、スポーツは並、成績はちょっといいくらいで、学級委員長をしていている。女子にはあまりモテていない。

モテない理由は分かっている。

私がそうしてるからだ。

彼は背が高くて、優しい性格だから、彼を気になる女子は当然出てくる。

そんな女子を私は、悪く言えば排除している。

彼の隣にはいつも私という女の子がいて、他の子を寄せつけない。寄せ付ける隙を与えない。

幼馴染という立場を利用して、いつも登下校は一緒にしているし、学校でもできる限りそばにいる。


彼を他の子には渡したくはないから。

彼のいろいろな顔を私は知っている。みんなの知らない彼を知っている。

そして何より、私は彼のことが、この世界のだれにも負けないくらいに、

大好きなんだ。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


始業式の次の日の放課後。

今日は駿と学級委員会に行く。

「駿ー!早く行こー!」

「はいはい。じゃあ行くか。」

駿の顔は何千回も見てるのに、いまだに顔を見るだけでドキドキしてしまう。

「朝も言ったけど、今日は図書委員の会議もあるから、先帰っててくれよな。」

「うん、わかったよ。」

帰らないけど。

「てか、あっさり了承してくれるとは思わなかったな。」

駿は自称敏感男ではあるけど、ほんとに自称なだけで、少なくとも私には全然敏感であるとは思えない。

「てっきり、帰りに気になってる店ついてきてよとか言い出すのかと思ったけど。」

(バレてる・・・)

訂正しよう。恋愛面においては敏感とは思えない。

私が幼馴染だから、恋愛的思考に至らないかもしれないけど。

そういう面では、幼馴染というのは不利なのかもしれない。

だけど、やっぱり隣にいるのは、幼馴染特権を使ってでも私が良いんだ。

「そんなわけないでしょ。今日は観たいテレビもあるし。」

(ケーキ屋はまた明日とかいっか・・・。今日は「さみしくて待ってた」だけにしよ。)

「そっか。」

他愛もない話をしながら、私たちは指定された教室へと向かった。


17:00。私はB組の教室にいた。

そろそろ図書委員会のほうも終わる時間だ。

宿題もほぼ終わらせることができたし、あとは駿を待つだけだ。

駿が委員長になったから、私も勢い余って副委員長になっちゃたけど、駿が一緒ならなんだっていいんだ。

そろそろ玄関でも行こうか。そこで待っていよう。

私が席を立とうとした瞬間、外から声が聞こえた。

「駿・・・?」

私にはすぐに分かった。駿の声だ。誰かと話してるのかな。

聞く耳を立てる。


「は、ははは白谷さん・・・?ど、どうした・・・?」

白谷さん・・・?白谷さんって、駿と一緒に図書委員になってるあの白谷陽花里さんだよね・・・?

てか駿のやつ、動揺しすぎでしょ!女の子として意識してるのバレバレだから!

私のジェラシーもつかの間、その白谷さんから発せられた言葉を聞いた時、私は耳を疑った。


「く、黒川くん・・・・。よかったら、い、一緒に、帰らない・・・?」


白谷さんって、もしかして駿のこと・・・。

初めてライバルが誕生した瞬間を目撃したかもしれない。

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