第14話 僕の消したい過去
俺は中学の終わりの春休みに彼女がいたことがある。
今となっては関わりたくなかったと後悔しているが。
受験対策のために入った予備校で、一番最初に話しかけてくれた。
入って間もなかった俺は緊張していたが、そいつと話すときだけは緊張が抜けていたと思う。
教室内でもテンションが高くて、活発で、髪は少し金色で、顔立ちは日本人離れしていた彼女は、教室に来るたびに僕と話してくれた。
偶然にも同じ趣味を持っていたため、会話が一層弾んでいたと思う。
そんないい友達を持つのは初めてだったので、塾では、彼女と常に行動するようになった。
羨ましいって?待ってな、話を最後まで聞いてくれ。
受験シーズンが来るまでは、彼女がいる、予備校に毎日のように通っては、自習室で勉強をして、彼女と話して、また勉強をするためにだ。
最初は勉強の時間をきっちり確保していたが、所詮は中学生だ。些細なことで集中力が切れ、休憩を理由にしては自習室を抜け出していた。彼女と会うために。
そんなことをして成績が上がるはずもなく、そして志望校に合格せず、滑り止めの学校に通うことになったのだ。
思えばここの時点で関わりを減らしておけばよかっただろう
◇
「なんだー、こんな遅くにどうした?土井」
「蒼、少し眠気が覚めちゃって」
「今何時かわかってるか?」
「午前二時だよぉ。」
時計には AM 2:18 と表示されている。
「で、何の用だ?眠いんだけど」
「少し話したいことがあってね?」
「......?なんだ?」
珍しい。土井が連絡をしてくるなんて。大体は僕から連絡して話しているのに。
「大した話じゃないんだけど、蒼って彼女とかいるの?」
「いないけど」
「なんか予備校の中で彼女がいるって噂が流れてるんだよね」
「そうなんだ、めんどくさいな」
正直、予備校で噂を流されてもどうでもよかった。勉強するだけの場所なので、気にせず勉強出来ればそれでいい。
「ってそれだけか?」
「いや、その噂をたどってみたらね、東本っていう女子が彼女面してるんだよね」
「あぁ、そいつ僕と同じ学校だけど、学校でも同じことしてるから放っておいていいよ」
「どうせなら本物の彼女がいるって言っちゃえば?」
「は?俺彼女いないんだけど」
「あーそうなの」
何が言いたいんだ?
「そうだけど」
「......ほんっと鈍いね!私がアンタの彼女になってあげるって言ってるの!」
こいつ、寝ぼけてんな。
「またまた御冗談を......」
「冗談じゃない!」
「......これは夢だな。寝よう」
「寝るな!!!」
突然の大声にスマホが耐えられるわけもなく、案の定ハウリングが発生する。
「うるさいな」
「人の告白を冗談で済まそうとするからでしょ!?」
冗談じゃなかったのかよ。いたくご立腹だし。
「じゃあ土井は俺に告白したわけか、ありがとう」
「どういたしまして!!」
「わかった、いいよ」
意外と深夜で回らないところもあったので、すんなりと付き合うことになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます