夏休みだぁぁぁぁ

第12話 ある日の部活動

「なあ、光樹」

「なんだ?」

「二週間後に合宿があるじゃん?」

「あるな、確か……白子での合宿だっけ」

「それ、お前も行くか?」

僕は行くけど、と付け足す。

日橋高校のソフトテニス部は夏休みと冬休みに二回、白子町でテニスの合宿があるのだ。

規制したり、墓参りなど、家庭の事情で参加できない人もいるため、強制ではないが。

「行くつもりだよ、蒼のミスカバーしなきゃいけないし」

「お前、毎回一言余計だよな」

「ま、合宿の前に番手レギュラー決定戦があるけどな」

「なんだそれ」

「顧問の話はしっかり聞いとけ。今週末、実力がどれだけあるか順番を決める総当たり戦をするって。」

「そうなのか、まあ光樹がいれば全勝だろ」

「俺一人でも全勝できるわ」

こいつ、本当に一言余計だな。ミスが多いのは圧倒的に蒼なので、言い返せないのだが。

「そういえば、先輩とデートしてから二週間ぐらいたつけど、あの後どうなの?」

「LINEくらいだな」

「遊びに行ったりしてないのか?」

するわけないだろ、女嫌いなんだから。

「するわけない」

「……矢板先輩が可哀想だな……」

ぼそっと光樹が呟いた言葉は誰にも、少なくとも蒼の耳には届かなかった。


「はい、じゃあこの後すぐ、番手レギュラー決定戦するぞー」

ついに来たか、番手レギュラー決定戦。

高校の男子ソフトテニス部は、七ペアで総当たりを行うため二十一試合行う。朝九時から第一試合を開始し、合計二十一試合目行う。二十一試合目は試合成績が良かった上位2ペアの試合を行う。

「なあ光樹、何番手を狙う?」

「それはもちろん、優勝以外にないだろ」

「だよなぁ、じゃあ今日はよろしくな!」

「ああ!」

この言葉とともに固い握手を交わす。


一試合目 勝利

二試合目 勝利

三試合目 勝利

四試合目 勝利


「はあ、はあ、はあ、はあ」

「お疲れ様、光樹」

「お前、もな」

現在四試合目が終わった直後、昼休憩の時間だ。

「午後の試合は二試合だから、割と余裕あるな」

「でもなるべくこの時間に疲労を回復しとけよ、光樹」

「わかった」

お昼を食べ、食休憩をして、試合の準備をする。

「蒼、五試合目どこ?」

「えっと、暫定順位三位のペアだね」

「体を温めるには十分だな」

「結構失礼なこと言ってるね」

「このまま全勝しよう」

「がんばろうね」


「あいつら調子乗ってんな」

「ほんとだな、絶対決勝で潰してやろう」


「ファイブゲームマッチ、プレイボール」

審判の声とともに、第五試合が開始する。

試合が終わったペアや休憩中のペアが周りに集まってくる。

一点が終わるたびに、「ナイス―!」という言葉と「ドンマイ、次」とコートの周りが沸き上がる。


「ゲームセット」

晴天の空にコールが響く。

「ただ今の試合はゲームカウント3-1で竹下、梶谷にペアの勝ちです。お互いに礼」

「「「「ありがとうございました」」」」

四人の声が重なる。五試合目は比較的余裕をもって終了した。


ブー、ブー。

「なんかの通知かな?」

携帯のロックを解除する。


LINE 14:33

矢板先輩「ちょっと話があるから、試合が終わったら自販機前に来て」

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