第3話 なんで、光樹も同じなんだよ。

「二年生の、矢板先輩だ。」

えっと、誰?名前を聞いたことすらない。

「誰だ?それ。」

「まじかお前。入学式で在校生歓迎の言葉を言ってた人。」

「......知らないな。」

「まじかお前。俺なんか、美人だったから覚えちゃったよ。」

まじかこいつ。見た目で人を判断するタイプか。忠告だけしておくか。

「女子を見た目で判断するのはやめたほうがいいぞ。」

「なんかお前......説得力があるな。もしかして実体験か?」

「......帰るぞ、光樹。」

「まじかお前。見た目で判断して、えらいことになったのか。」

「......過去の傷を抉るようなことは言わないでくれないか?」

「どんなことがあったんだい?」

「教えるか馬鹿。誰にも言うわけないだろ。」

「っていうことは過去になんかあったんだな。」

あ......。馬鹿か馬鹿なのか俺は。自分からばらしたもんじゃないか。

「誰にも言わないでくれ。」

「お前に興味あるやついないだろ。矢板先輩を除いて。」

「だから、矢板先輩に伝わらないようにしてくれ。」

「......じゃあな。蒼。」

「裏切者ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」

はあ。こいつと関わるんじゃなかった。無視して帰ろう。

「お前、家はどこ?」

「......」

「おい、蒼。」

「......」

「あー。口がつるつるになって、蒼の秘密をしゃべっちゃいそうだなー。」

「殺すぞお前。」

「とにかく、お前の家どこだ?」

「......千葉。」

「奇遇だな。俺も千葉だ。」

「千葉のどこだ?光樹。」

「都賀だな。」

「お前俺と同じかよ。ふざけんなよ。」

「じゃあ、明日から六時五十二分発の三号車な。」

「なんで光樹、お前といかなきゃいけないんだよ。」

「そりゃあ。あ、お、い、く、ん、の秘密を知りたいからだ。」

「帰るぞ。」

話してて気づかなかったけど、下校時刻から20分を過ぎていたのだ。早く帰って、本を読みたい。何の本を読もうか。そう考えていると、後ろから光樹がついてくる。

「この学校駅まで遠くないか?」

「そうだな。徒歩で二十分だもんな。」

駅までの二十分間、光樹とこの学校の立地に文句を言いながら、駅まで歩いた。

「なんで僕の隣に座るんだ。」

「いいじゃん、同じ方面なんだから。」

面倒くさいなあ。本を読んで無視をしよう。

「なあ蒼、過去に何があったんだ?」

「教えないからな。」

「じゃあ、周りの人に、蒼のことをしゃべっちゃおうかなー。見た目で人を判断するって。」

「死ね。光樹。」

「じゃあ言うね。」

「わかったから、もっと仲が良くなったら言ってやるから。それでいいか?」

「わかったよ。じゃあLINE交換しようぜ。」

「なんでそうなる。」

「LINEで少しでも仲を良くしようと。」

わかったよ。二人は携帯を出し、LINEを交換した。

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