第25話 百合カップルだったら応援できたのに
「こいつなあ、こないだ三年の城崎先輩に思いっきりヘタクソって言われてフラれたんだよな」
「うるさい! 黙れ!」
三年の城崎先輩っていうのは一年生の間でも評判の美人さんだった。
どうやらヘタクソっていうのは、オレには縁のないアダルトな会話だったらしい。
(城崎先輩って百合だったの!?)
一瞬、セーラー服姿の部長と城崎先輩がイチャイチャする姿が頭に浮かんで、慌てて打ち消した。
(……って、そんなわけないよな)
部長は、部室ではセーラー服姿の超絶美少女だけど、それは部員獲得のためのコスプレにすぎない。
一歩部室を出れば、学校で一、二を争う美少年なんだ。
どんな美人と付き合っていても不思議じゃなかった。
(まあヘタクソって言われたのはお気の毒だけど、そう言われるシチエーションになったってだけでも、オレのようなモテない男子からしたら歯噛みしすぎて歯茎から血が出るレベルだよな)
そんなコトを考えていると、それまで部室の小汚い床にしゃがみこんでいた部長がゆらゆらと立ち上がってきた。
「しかし、それでも聞き捨てならんぞ、三階堂。見たこともないクセに、どうしてオレが卓球下手なんて言うんだ」
せっかく上手いこと流れたと思ったのに、部長にはスルースキルってものがないらしい。
こうなったら仕方ない。
美人先輩とつきあっていたという部長への羨ましさもあって、オレは思ったままを口にした。
「いやでも実際、部長は卓球あんま上手くないっスよね」
すると部長は不敵な笑みを浮かべる。
「ザケんな! おまえこのあいだ木場にコテンパンに負けただろ。俺と木場は小学校からの付き合いだけど、通算五分五分だぞ!」
「えっ、マジっすか?」
ビックリして木場先輩に確認した。
オレのイメージでは木場先輩はインターハイ入賞レベル。それに対して羽根園部長は小学二年生レベルだ。
しかし、木場先輩はゆっくりと肯いた。
「確かに、部長と自分は公式、非公式含めて4勝4敗だな」
「フフン、どうだ、参ったか」
部長は得意気に胸を張る。
オレより十センチも背の低いセーラー服美少女が卓球サイボーグ木場充と互角とは到底信じられなかった……いや、待てよ。
「先輩たちって、小学校のときから一緒に卓球やってたんですよね。で、4勝4敗ってことは、合計8試合っすか? めちゃくちゃ少なくないですか?」
「ちぃっ!」
オレに指摘されて、羽根園部長は露骨に舌打ちをする。
木場先輩が答えた。
「ユウトが入ってた卓球クラブに自分が後から入会して、最初はユウトの方が強かった。でもそのうち自分の方が勝つようになって、そうしたらある日突然ユウトが『木場君とはもう試合しない』って宣言したんだ。最後に試合をしたのは、小三のときだったな」
「うわぁ、子供のクセに最低」
「うっさいな。とにかく、俺と木場は五分。だから、俺の方がおまえより強い」
「そんなこと言うなら、今ここで決着つけましょうよ。幸い、木場先輩が取り戻してくれた卓球台もあることだし」
「卓球台を取り戻したのは俺たちだろ。よしわかった、三階堂。こうなりゃ俺とおまえ、どっちが上か白黒はっきりつけてやる!」
そう言うと、部長は手許にあったラケットをブンと振った。
予想外だけど、オレにとっては願ったり叶ったりの展開だ。
理由は何でアレ、先輩たちが卓球をヤル気になってくれるのが第一の目標だし。
「オナシャス!」
オレはバックからマイラケットを取り出して、卓球台に向った。
しかし、ちょっと待てよ。この試合をどうするかは結構重要なフラグだぞ。
普通にやれば間違いなくオレが大差で勝っちゃうけど、小学生の頃から負けず嫌いだった部長はもう二度とラケットを持ってくれないかもしれない。
(どうする、オレ? ここは正々堂々と勝負するか?)
悩んでいると、携帯にメールが来た。木場先輩からだった。
『はじめは強く当たって、あとは流れで――わかってるよな』
うわー、八百長要請メールだよ。
やっぱり部長に勝つのはNGらしい。
(まあ、いいか。ほどほどに接戦を演じてギリギリで負けよう。部長に「卓球って楽しい」と思わせる。要するに、接待卓球だ)
そんな後輩の心遣いを知る由もない部長は、しばし考え込んでこう言った。
「手っ取り早く1ゲームマッチな。それから、ただ卓球するだけだと簡単に俺が勝っちゃうから、ルールを一個追加しよう」
なんだかイヤな予感がする。
「いや、別にフツーでいいっすケド」
「まあ、聞け。この試合、異能力卓球勝負とする!」
…………………
…………
……出たよ。
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