第20話推敲・其の3

『おうちで消毒液を作ろう』


https://kakuyomu.jp/works/1177354054896084762


っと。


「なるほどお、アラタさん。禁酒法時代のアメリカっていろいろあったんですねえ。これ、全部あたしをだますために調べたんですか」


「そうだ。それにしても、本当にこんな話でいいのか。完璧にテルマエロマエの第1話じゃないか」


「いいんですよ。これから禁酒法時代のアメリカでルーシーさんが戦車隊で暴れまわるんでしょう。それだけでオリジナリティーがありますよ」


 そんなものかねえ。


「ですが、アラタさん。アメリカの大リーグにフェデラルリーグってものがあったんですねえ」


「らしいな。史実だと2、3年で消滅してしまったらしいが。そんなマイナーなもののほうが話として好きに転がせるからな。下手に日本の太平洋戦争の話なんて書くとそれこそミリオタに間違いを指摘されてしまうからな。設定としてこのくらいかっとんでいる方がいいんだ」


「そのフェデラルリーグのシカゴホエールズにルーシーさんがスポーツドリンクを提供するんですか。『練習中に水を飲むな』なんて風潮に風穴を開けるために。アメリカでもそうだったんですか、アラタさん。アメリカって西洋合理主義でそういう『練習中の水分補給禁止! 根性! 根性!』なんてものはないイメージだったんですけれど」


 そうなんだ、かい子。俺もそう思っていた。だが、ネットによるとそうじゃないみたいなんだ。


「かい子。アメリカの有名なスポーツドリンクブランドであるゲータレードが販売を開始したのが1965年で、それまではアメリカンフットボール部の学生が脱水症状でバタバタと倒れていたらしいんだ」


「へえ、となるとアラタさん。禁酒法時代のアメリカでルーシーさんがスポーツドリンク販売を立ち上げたら……」


「少なくとも物珍しがられることは間違いないだろうな」


 そして、地元野球チームのシカゴホエールズとスポンサー契約をして莫大な利益を荒稼ぎしていく筋書きだ。


「それにしても、アラタさん。禁酒法時代のアメリカ人であるルーシーさんが現代的なコマーシャル戦略で一財産を稼ぐって言うのは、少しル-シーさんに先見の明がありすぎではありませんか。こういう場合は現代日本人のあるさんを一緒にタイムスリップさせて現代知識で好き勝手するのがセオリーでは」


「そのくらいいいだろ。禁酒法時代のアメリカ人のルーシーがスポーツドリンクなんてものを知ったなんてことがそもそもフィクションなんだ。そこからは少しくらい荒唐無稽だっていいじゃないか。そもそも、禁酒法時代のアメリカではすでにプロスポーツとしてプロ野球が成立していたんだ。選手に自社製品を宣伝させるくらい十分あり得るだろう」


「そのプロスポーツなんですが、アラタさん。シカゴホエールズのチャーリーさんがアマチュア野球をずいぶん批判していましたね。『大学生のボンボン野球』とかなんとか。このあたりをもう少し詳しく……」


 そこか。そのあたりも現代との感覚のずれだな。


「かい子。今ではプロのほうがアマより格上ってイメージがあるよな。人気にしろ実力にしろ。野球の甲子園みたいな例外もあるけれど」


「はあ、そうですね」


「しかしだな、一昔前。このお話しの禁酒法の時代だと大学で野球をやっているような連中はプロ野球選手を『おおいやだ、神聖なスポーツである野球で日銭を稼ぐなどとはあさましい職業野球選手よ』なんてあざけっていたらしいんだなあ」


 いつの時代も金持ち貴族なんてのは嫌なやつばかりだな。そんなやつを俺の小説内でぎったぎたにしてやるんだが……


「オリンピックだって、いまでこそ商業主義にまみれてプロスポーツ選手もじゃんじゃん参加しているが、開催当初は『われわれ貴族のたしなみに下賤なものがたずさわるでない』なんてことで学校の体育教師やスポーツ用品の実演販売員まで参加を拒んでいたらしいからな」


「ほほう。それを知ると、『参加することに意義がある』なんて言うオリンピックの創始者クーベルタン男爵の言葉がとたんにいやらしく聞こえますね。『参加できない平民のことなんて知らないよ』なんて差別意識を感じます」


「そのあたりも作品に取り入れている。球団のオーナーは代々貴族のお坊ちゃんで、大学で学業の片手間にやっていたアマチュア野球をプロとして金を稼いでいるプロ野球選手に押し付けるんだな。『こら、練習中に水を飲むな。そんなことハーバードではありえないぞ』なんて」


 そんな鼻持ちならない金持ち連中をルーシーが戦車であたふたさせるんだ。


「それに腹を立てたチャーリーさんが第三のフェデラルリーグを立ち上げたってわけですか」


「そうだ。実際のところは知らないが、フィクションなんだ。それくらいの脚色はありだろう」


「それで、アラタさん。お話の続きは……」


 わかっている、かい子。今投稿するから。


 

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