一週間だけの神隠し

サバ缶。

第1話 憂鬱な一日



月曜日は憂鬱だ。呆れるくらい憂鬱だ。学校への道のりを重い足を引き摺って歩く、いつ転んでも可笑しくないくらい、足が上がらない。学校が近付いて来ると自然と溜息の量が多くなる。腹の底から出て来た溜息が重たい足をもっと重くさせる。


学校に着いて教室に入ると、いつも俺は誰とも話さず、挨拶も交わさず席に座り空を眺めている。

生憎、今日は曇りで一雨きそうだ。曇り空を眺めていると憂鬱な気分がもっと憂鬱になる。



授業が始まりノートを録っていても退屈な気分だ。将来の事を考えるのなら集中して授業を受けないといけないのに。将来の事に実感が湧かないためか、憂鬱な気分の方が自分の中で勝ってしまう。




最近はめっきり一人で居る事が多くなった。別に友達と何かあった訳じゃないが、自分の中の友達への大きな劣等感が邪魔して素直に友達と楽しむ事が出来ない。


友達は沢山居たのに学校生活を過ごしていく程、自分の中の劣等感は次第に大きくなっていった。ある日其れが爆発して何も話さなくなった。すると段々と人は離れて行った。一人で居ても誰も話し掛けてはくれなくなった。

人と関わらないようにしても劣等感は膨れ上がってしまう。もう自分自身其れを如何したら良いか分からなくなっていた。自分の出来る事を考えても思い付かなくなってしまっていた。きっと何かしらは有るのだろうけど。



それでも俺には密かな楽しみがある。

其れは誰も近寄らない古い神社の御神木に話を聞いて貰う事だった。周りの人間から見たら変な人に思われるかもしれないが俺にとっては此の時間が一番気が楽になる時なのだ。

木は何も言わない。

俺は多分、解決法や道を諭す言葉などはなく、ただ只静かに聴いて欲しいだけだと気付いた。




今日もいつものように御神木と話す為に神社へと向かう。神社へと向かう道中には色々な店がある。何故か其の殆どは食べ物屋だ。


石段を登って段々と見えてくる古びた神社。俺にとっての桃源郷。大きな石で出来た鳥居を潜ると御堂が見えてくる。朱色に塗られていた筈の鳥居は何も手入れされていなくてボロボロ。御堂も所々苔が生えている。其の御堂の裏に其の御神木はある。



とても大きな木だ。時代の流れや人々の変化をずっと見て来たんだろう。立派な立派な御神木だ。


「今日もまた辛かったよ」「おい童、良い加減私の耳を腐らせるつもりか」


「え?」


何故か上から透き通った声が降って来て驚いて声のした上の方を見ると、丁度枝分かれしている所に腕を組み胡座を描いた人が座っていた。容姿は自分と同じ歳ぐらいなのに何故か着物を着て不気味な仮面を付けていたいた。


「毎日、毎日、陰気臭い話ばかりしおって。こっちまで陰気な気分になるだろうが」


驚きの余り声が出ない。只自分が口をパクパクしているという事は分かる。今随分自分は間抜けな顔をしているだろう。


「お前は所謂、ぼっちなのか?」


グサっ、心に何かが突き刺さる音がした…。"ぼっち"はなくない?ぼっちは…ねぇ?

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