第2話 マスク再利用方法(デマだったらゴメンね☆)

「コロナ絶対コロスマンさん!

本当にありがとうございます!」


カカルは深々と頭を下げた。


「別にお前の為にやったわけじゃない。

俺はただコロナをこの世から駆逐したいだけだ。

……あと、俺の名はコロナ滅茶苦茶コロスマンだ。」


彼はあくまでぶっきらぼうな態度で、カカルの感謝の言葉を受け流す。


そして彼は雨ガッパを、まるでマントの様に翻すと、そのままその場を立ち去ろうとした。


しかし


「いや、待て。」


彼は突然何かを思い出したかのようにその足を止めた。


「さっき、マスクが不足していると言っていたな。」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは首だけをカカルに向け、そう問いかけた。


「え、ええ。」


「台湾では、マスクの再利用法が考案されたようだ。」


「ほ、本当ですか?」


その言葉に、カカルは思わず目を見開く。


「まあ、マスクが破れていたり、汚れていなければの話だがな。」


そしてそのままコロナ滅茶苦茶コロスマンは続けた。


「電気炊飯器の中にマスクを入れるんだ。それから水を入れずに3分以上空蒸しをする。

そして、蒸し終わってから、5分程度時間を置くとまた使えるようになる。

もっとも、この方法は繰り返す内に効果が薄れる為に、使えるのは3回から5回が限度だがな。」


彼の説明に、カカルは感心したように唸る。


しかし


「……?

ちょっと待ってください。」


カカルの顔に疑問符が浮かんだ。


「電気炊飯器って何ですか?普通の炊飯器とは違うのですか?」


彼の疑問に、コロナ滅茶苦茶コロスマンはきっぱりと言い放った。


「電気炊飯器――いわゆる電鍋とは、台湾では一家に一台必ずあると言っていいほど普及している炊飯器だ。

これ一つあれば、『炊く・蒸す・煮る』の全てが出来る万能炊飯器。

そのため台湾人は炊飯器と言えばこの電鍋の事をイメージする。

こんなに便利な道具なのになぜか日本では普及していないがな。」


彼の説明に、カカルは感心したように唸る。


しかし


「……?

ちょっと待ってください。」


カカルの顔にまた、疑問符が浮かんだ。


「今度はなんだ?」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは煩わしそうに聞き返した。


「その……電気炊飯器っていうのは日本では普及していないって言いましたよね?」


「ああ。たしかにそう言ったな。」


頷く彼に、カカルの表情は怪訝なものとなる。


「じゃあ……その再利用方法は日本では出来ないのでは?」


彼の問いかけた言葉。


その言葉に、コロナ滅茶苦茶コロスマンは無表情で――


視線を宙に漂わせた。


そして


「ああ……


……そうだな。」


「……。」


それっきり、黙るコロナ滅茶苦茶コロスマン。


そんな彼を呆けた顔で見守るカカル。


その場は――


――静寂に支配された。


しかしやがて


「あ……ああ、だが――」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは、取り繕うような口調で言葉を付け足した。


「温度を110度に設定できれば、オーブンや電子レンジでも可能だそうだ。」


その新たな情報に、またカカルの表情に希望が灯る。


「なるほど、それであれば日本でも出来ますね!

それじゃあさっきの説明はただ台湾の電鍋を宣伝しただけみたいになりましたけど、すごく良い事を聞きました!」


その反応に、コロナ滅茶苦茶コロスマンは安堵の笑みを浮かべる。


「まあ、台湾の方では正式な実験を経て効果が証明されたようだが、オーブンや電子レンジでのやり方については、俺は詳しくは知らないからな。

まあ、また何か分からない事があれば……


……ググれ!自分で。」


爽やかな笑顔で、グッと親指を立てて見せたのだった。


「何から何まで……本当にありがとうございます!

コロコロマンさん!」


「ああ。皆最後は俺の事をそうやって呼ぶ。

名前、長くて悪いな。」


そしてコロコロマンは再び踵を返し、立ち去ろうと……


その時だった。


「――?」


誰かの携帯の着信音が鳴った。


「あ、僕の携帯ですね。」


そう言ってカカルはポケットをゴソゴソと探りだす。


彼は携帯を取り出すと、なにやら電話で話し出した。


「もしもし?らん子か。どうしたんだ?」


コロコロマンは先ほどの着信音に反応し、一度は足を止めたが、カカルが何事もなく携帯で誰かと話し出したのを見て、またその場を後にしようとする。


しかし


「え?お、おい!どうしたんだ⁉」


突如、カカルが騒ぎ出した。


コロコロマンはまたカカルの方を振り返る。


彼は、なにやら只事ではない様子のカカルを黙って見守っている。


「らん子!何があった⁉返事をしろ!

おい、らん子!らん……!


……くそ!切れちまった。」


彼は悪態をついてスマートフォンを耳から離した。


すると、ふと彼は今のやり取りを見ていたコロナ滅茶苦茶コロスマンの視線に気づく。


「あ、あの……コロマンさん。

なんだか……らん子っていう、あ、いや、僕の恋人なんですが……

彼女の様子がおかしくて。」


しかしコロナ滅茶苦茶コロスマンの態度は相変わらず冷たい。


「悪いが、さっきの戦闘で次亜塩素酸ナトリウム消毒液を使い切ってしまった。

一度家に帰って作らなければならない。」


「あ、あの……!」


しかしカカルは尚も彼を引き止める。


「お願いします!電話での様子を聞く限り、恐らくコロナウィルスに襲われた可能性があるんです。

だから、一刻も早く助けなければ……」


カカルのその姿に、コロナ滅茶苦茶コロスマンは明らかに煩わしそうなため息を吐いた。


それは――


ただ単に次亜塩素酸ナトリウム消毒液を補充しなければならないとか、そんな理由のため息とかでなく……


明らかに目の前の人間に対して軽蔑をしている様な、そんなため息だった。


「一つ聞くが――!」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは冷たい口調で言い放つ。


「お前たちは最低限、自分の身を守るための対策は取っていたのか?」


「――ッ!」


彼の言葉に、カカルは言葉を失った。


「お前たちはいつもそうだ。

どこか心の中で、自分たちは大丈夫だと思い込み、どこか心の中では他人事で、どこか心の中で――」


彼は言った。


「いつか誰かが何とかしてくれるだろう――と思い込んでいる。」


「……。」


カカルは何も言えず、ただその言葉を受け止める事しか出来ない。


「確かにお前たちは一般市民だ。このウィルスを終息させるワクチンを開発することは出来ない。

だから誰かが何とかしてくれるのを待つ事しか出来ない。

それは確かにそうだ。

ただ――」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは続けた。


「それを信じて一人一人が最善を尽くすのと――

ただ能力のある者個人に任せっきりにして、受け身になっているのとは訳が違う。」


その言葉に、カカルの目が見開かれる。


「だから選べ。

いつかは分からないが、このウィルスが終息するその日まで、自分に出来る精一杯の事をしていくか。

それか、このウィルスにただ嘆くばかりで何もせず、いつまでも誰かが何とかしてくれるのを待つだけか。

――戦おうとしない者に、誰かを助ける資格などない。」


カカルの目は、まるで何かが目覚めたかのように……


そして、コロナ滅茶苦茶コロスマンは、最後に、静かに、力強く言い放った。


「……自分の目の前に居るコロナは、自分で滅茶苦茶コロスしかないんだ。」


言い終わると――


コロナ滅茶苦茶コロスマンはそれきり口をつぐんだ。


もう言葉は必要ないと言わんばかりに。


あとは、カカルの選択を待つだけだと言わんばかりに。


そして――


「コロマンさん……」


カカルはついに口を開く。


「僕も……」


決意の込めた目で――


「僕も、戦いますッ!

僕も、あなたのように、コロナ滅茶苦茶コロスマンさんのようになりたいですッ‼」


決意を込めて、彼は言い放った。


この言葉を待っていたのか、コロナ滅茶苦茶コロスマンの口元がわずかに綻ぶ。


「……よく言った。」


カカルの表情がパアと明るく輝いた。


「その恋人さんの居場所を言うがいい。

俺のこのバラグライダー型雨ガッパで空を飛んでいけばすぐに着くだろう。」


それを聞くと、カカルは慌ててスマートフォンを取り出した。


そしてそれをコロナ滅茶苦茶コロスマンに差し向けながら、おずおずとした様子で言った。


「あの、ではメールで住所を送りたいので……メアド、教えてもらえませんか?」


「ん?まあいいが。

じゃあフルフルで交換しよう。」


そしてお互いのスマホを近づけた。


「あれ、なかなか出来ないな。

ID名はコロマンさんって名前で良いんですよね?」


「ちょ……待って、動かさないで。

あとコロマンでは無い。」


「あ、コロマンさん携帯もうちょっと前に出してください。」


「ちょ……その携帯コンコン当ててくんの止めて。」


「え、これやらないと情報伝わらないんじゃないですか?」


「いや、ただ近づけるだけで良いから……あ、来た。

出来た。」


「あ、僕も来ました。

え~、これですよね?

コロナものすんごいコロスマンって書いてるやつ……え?

コロナ滅茶苦茶コロスマンじゃないんですか?」


「ああ。最初はそう名乗ってたんだけど、なんかひらがなってダサいなって思って……

滅茶苦茶の方が良いかな?って思って変えた。

てかどさくさに紛れて他の人のIDも入ってきたじゃん。

この『Mayuko』ってのは違うよね?」


「いや絶対違うでしょ。それどう考えても女の子の名前ですし。

え、でもその子の画像可愛くないっすか?」


「いや、口元隠してるから可愛いかどうか分かんないよ。

口元隠すだけで雰囲気全然変わるし……うわ。

なにこれ……すんごい名前の奴いる。

え~と……『日曜日に彼女の家行ってイチャイチャした結果コロナウィルスにかかる』

たまにいるよね、ID名に長文書いてる訳分かんない奴。

てかコイツもうコロナウィルスかかっちゃえばいいのに……」


「ああ。それ僕です。」


「……は?」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは固まった。


「なにこのふざけたID名?」


「いや、本名っす。」


「……は?」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは固まった。


「『日曜日に彼女の家行ってイチャイチャした結果コロナウィルスに』が苗字です。

『かかる』が名前です。」


「……。」


「じゃあ、今かららん子の住所送信しますんで、コピペしてマップで検索してください。」


「……。」


「あ、僕の事は普通にカカルって呼んでくれれば……

……って、え⁉急にどこ行くんですか⁉」


「ごめん。何か助ける気無くなった。」


コロナ滅茶苦茶コロスマンは突如空を飛んだ。


「ちょっと!僕何か変な事でも言いましたか⁉」


しかし、カカルのそんな叫びは空飛ぶコロコロマンの風にかき消され――


そのままコロコロマンは青空の中へと吸い込まれていったのだった。


一人取り残されたカカル。


彼は訳も分からないといった表情でしばらくコロナ滅茶苦茶コロスマンが飛んで行った空を眺める。


しかしすぐに悔しそうに顔を歪ませると、彼は乱暴に地面を蹴った。


「くそッ!結局助けてくれないんじゃないか!

らん子の事を見捨てやがって……」


声を荒げる彼だが、そんな怒りとは裏腹に頭の中ではコロナ滅茶苦茶コロスマンの言葉がよぎっていた。


――自分の目の前に居るコロナは、自分で滅茶苦茶コロスしかないんだ。


「俺だって……戦えるんだ。」


彼はそう呟くと、らん子のもとへ駈け出そうとしたが……


「でも……実際にコロナウィルスが現れたとしてどうするんだ?

俺はアルコールもマスクも十分に持っている訳では無い。

武器も防具も無い状態でどうやって戦えばいいんだ……?」


彼は唇を噛みしめる。


しかし、


「ハッ……そういえば!」


何かが閃いたのか、彼は顔を上げた。


「これならいける。」


そして彼はらん子を救出するため、彼女のもとへ急いだのだった。



六階建てマンションの最上階。


そのとある一室から、女の悲鳴が響いた。


その室内――そこそこ大きい間取りのリビングには、先ほど悲鳴を上げたその女がいた。


彼女は震えながら壁を背負い、迫りくる影を怯えた表情で見上げている。


「あ、あ……あなたは……何よ?いったい?」


床には彼女のものと思われるスマートフォン。


その液晶画面には――


『日曜日に彼女の家行ってエッチな事した結果コロナウィルスにかかる君

1:02 通話終了』


との表示が……


そして、まるでガラスを押しつぶしたような――


そんな不快な音と共に、その画面は何者かの足によって踏み潰された。


「くっくっくっ……わざわざ女の子の家に招待してもらえるとは、嬉しい限りだな……」


「だ、誰よあなた……まさか変質者?

このマンションはオートロックのはずよ!どうやって入ったのよ⁉」


らん子の目の前で不気味に笑うその者は、見るからにおぞましい造形をしており、明らかに人間とは思えない姿だった。


「俺はコロナウィルスだ。」


「なんですって⁉」


彼女はさらに驚愕の表情を浮かべる。


「おおっと。別に俺はオートロックを潜り抜けてきたわけじゃないんだ。」


コロナウィルスは突如彼女に対して手のひらを向け、演技掛かった口調で弁明する。


「俺達は今日一日ずっと一緒に居たじゃないか。」


ニヤリと気味の悪い笑顔を浮かべるコロナウィルスを見て、彼女の顔がゾッと青ざめた。


「い、一緒に居たって……どういう。」


震える声を絞り出す彼女に、コロナウィルスは口元を歪めて一言――


「……公衆トイレ。」


――とだけ答えた。


「――ッ⁉」


彼女はハッと息を呑む。


どうやらその単語に、何か心当たりがある様子だ。


「公衆トイレって……まさか今日バーベキューに参加したときの公園のトイレ⁉」


「ああ。そうだ。俺はあの時公衆トイレにしては珍しい洋式便器の便座に居た。」


「……くッ。あの時は道端に生えているキノコを採ってきて、毒キノコでも焼いたら食べられるんじゃね?って言って食べたらお腹が急に痛くなったのよ。

でも……ウンコしに行っただけなのになんでこんなことに……?」


らん子は原因が分からない事がもどかしいのか、片手で頭を抱えながら悔しそうに歯噛みする。


しかし――


彼女のそんな様子に、コロナウィルスは心底おかしそうに笑いだしたのだ。


「何がおかしいのよッ⁉」


彼女はコロナウィルスを睨み付ける。


「くっくっくっ……分からないのなら教えてやろう。愚かな人間め。」


相変わらず、余裕の笑みを浮かべるコロナウィルス。


そして――


彼はある部分を指さした。


彼の指した先。


その先には――


らん子の手――彼女の頭を抱えている手が、そこにあったのだ。


しかし


「……?」


その仕草の意味が分からず、疑問符を浮かべるらん子。


すると、彼女の勘の鈍さを見てか、コロナウィルスは嘲るようにらん子を笑った後――


短く、こう告げた。


「君の手だよ。君の手に付着していたのだ。」


「なん……ですって……?」


コロナウィルスの言葉に、らん子は目を見開く。


そして、そのまま言葉を失うらん子に対し――


コロナウィルスはますます得意げに話し出したのだった。


「俺は、ある日、公衆トイレの便座で獲物を待ち受ける事にした。

仲間には止められたさ。『もしターゲットに付着できたとしても、人間はトイレに行った後、必ずと言っていいほど石鹸で手を洗う。』ってな。

さすがの俺も石鹸で手を洗われてはひとたまりもない。俺の身体を守るエンベロープも破壊されるだろう。しかし――」


彼は続ける。


「――俺には狙いがあったんだ。」


「……ま、まさか。」


らん子のその可憐な顔に、戦慄の色が浮かび上がる。


「そう……。

そのトイレには――

――石鹸が無かったのだよ!」


高らかに叫びあげると、コロナウィルスはその両腕を大きく広げた。


まるで、自らの知略を誇るかのように。


「いくら水だけで洗っても俺を洗い流す事なんて出来ない!

全く持って無意味な事だ!

俺はあの時、そう考えてあの便座で待ち構えていたのだ!」


彼女は相変わらず言葉を失っている。


その唇は震え……


その声は震え……


その口から漏れ出た言葉は、震えていた。


「あ、あ……

あの、トイレに……

石鹸が、無かった……

……ですって?」


その驚愕に満ちた反応に、コロナウィルスはニヤリと口元を歪める。


そして、彼は何事も無いかのように――


衝撃の一言を告げた。


「そんなに驚く必要もないだろう。

なぜなら――


――お前は手を洗う事すらしなかったからな。


……石鹸どころか、手洗い場をそのまま素通りしたじゃんか。」


「何ですって⁉」


彼女はさらに驚愕する。


「いや知るかよ。なんでお前がビックリしてんだよ。

こっちがビックリだったわ、あの時。

『石鹸のくだり全くいらんかった!』って思ったわ。」


彼女は言葉を失い、口をただパクパクさせる事しか出来ない。


「しかもお前あの後、生肉を素手で掴んだりしてただろ?

俺の仲間があの肉に付着してそのまま焼かれちまったんだぞ。


……あと、やっぱり大腸菌がすごかった。」


コロナウィルスは頭をボリボリと掻きながらそうぼやく。


しかし一方で――


コロナウィルスが告げる信じがたい事実。


それを前にして、彼女は可愛らしいその顔を後悔の念によって歪めていた。


「あの時……あの時ッ……

キノコを生で食べていなければッ……!

お腹が痛くなってトイレに行くことも無かったし、こんなことにならなかったのに!」


後悔に苛まれるらん子。


そんな様子を見て、コロナウィルスは満足したのか、その表情はより一層凶悪さを増していく。


「さあ……おしゃべりはここまでだ。

そろそろお前の体内に侵入するとしようか。」


そして彼女に向けて、コロナウィルスは一歩足を踏み出した。


「さあて……こんなか弱そうなお嬢ちゃんをいたぶるのは趣味じゃないが……

優しくしてあげるから安心しなさ~い。」


下卑た笑みを浮かべて彼女に手を伸ばすコロナウィルス。


「イヤ……イヤ……」


それに対し、全身の毛を逆立てて息を呑む彼女。


「ほ~ら……こっちにおいで~。」


「や……や……」


彼女の嫌悪感が頂点に達したとき――


「や、や……やめ」



彼女の目つきが変わった――


――それはまるで鋭利な刃物のように。



「ヤ、メロッ、つってンだろーがッ‼」



先ほどとは打って変わった様な野太い怒鳴り声と共に――


「ぐぅふぁッ……⁉」



――何かが激しく破裂した。




それは、鞭が叩き込まれた音だった。


コロナウィルスの右の太ももに。


コロナウィルスの表情を大きく歪ませた――鞭。



それは鞭でもない。



まるで鞭の様な彼女のローキックは――


――コロナウィルスの太ももをあらぬ方向にしならせたのだった。

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