mitei

趣味太郎

プロローグ 歩を進める。

『2034年、ある感染症が原因となって国際情勢が悪化、泥沼の核戦争が開戦した。木々は燃え、海は干からび、空は人体を蝕む灰で鼠色に染まった。地球は滅んだのだ。』2137,10,29


「このあたりの文献はこれで全部だな。」

「そうですね、帰りましょうか。」

 苔の生えた岩から立ち上がりながら少年が言い、眼鏡をかけた初老の男が答える。

「地球って一回滅びてたんですね、知りませんでした。」

「まぁ通常の歴史からは消去されているからな。負の歴史というやつだ。」

「負の歴史から学ぶという学習機能はどこへ、、、」

 私たち歴史編纂者の任を受けた者たちは、荒廃しきった世界を渡り歩き、今日も過去文献を集めていく。今日はこれで三つ目だ。

「それにしても、この仕事はこなせばこなすほど人類が嫌いになるなぁ。」

「まぁまぁそういわずに、そう悪いものでもないですよ。」

 人類はあまりにも愚かすぎた。自分たちの身の丈に合わない兵器を用い、自らを滅ぼしたものたちだ。そんな人類を反吐が出るほど嫌っているのはきっと俺だけではないだろう。実際、歴史編纂者という人も嫌われている職種といえるだろう。

 だがしかし、俺のこの職業こそ人類が滅びた原因である『学習しない』という性質を自分たちから遠ざける方法なのだと思う。

 だから俺たち二人は今日も歩くのだ、かつて一度滅びたこの惑星を。


 

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mitei 趣味太郎 @syumitaroooo

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