第18話 本日の行動

 太陽が昇ると同時に起きるのがナーニャの1日の始まりだった。


 ベッドから這い出ると、部屋に差し込み始めた太陽の光が金色の髪に吸収されて輝く。


「んんーー」


 両腕を上へ伸ばす。


 就寝用の服から日中用の服へと着替え、母屋から店のほうへ向かう。隣接しているために扉1枚で行き来できるので、簡単に移動できる。


 厨房には母であるサンディラが鍋を振っていた。


 おはようと挨拶を交わし、棚から食器類を6人分取り出してテーブルに並べる。


 つい最近までナーニャは食事は義務みたいなものだと感じていた。家族3人だったころはとても楽しかった。毎日笑いが会った。しかし父親が死に、借金する先を間違えたことで、ガラの悪い借金取りが店に現れるようになってからは客足が鈍った。来るのは何も知らない旅の人か、気にしない常連客か。売り上げも良くて半減、悪いときは3分の1程までに落ち込んだ。その頃から彼女にとっての食事はエネルギー補充の義務になった。


 親子での会話が減ったわけではないが、どうにも楽しいとはいえなかった。しかし、心志たちが住むようになってから、食事が楽しくなった。3人の時とはまた違うにぎやかさ。異性だが恐らくは同年代くらいなので話しづらさや気まずさもない。彼らは明るく、話題も尽きない。そんな楽しい日常に頬を緩めていると、階段を降りてくる数人の足音が響いた。


 ガヤガヤと話をしながら降りてくる彼らは、ナーニャに気づくと笑顔を向け挨拶を口にする。 


 それに返事をしながら朝食の準備を続ける。すると彼らも率先して準備を手伝い、なんやかんやと朝食の時間が過ぎていく。


 朝食が終われば、自然と今日の行動の話になる。


「私は市場に行って料理の勉強してくるね」


 店の収入が少ない今、手早く商売に繋げられる成果が欲しい。そのためには、街で何があり何が無いのかを探さないといけない。実地調査は彼らにとって絶対に必要な行程だった。


「ナーニャ、アンタが付いて行ってあげな」


 サンディラはそう言ったが、手伝いをしなくてはと考えているナーニャは渋った。


「なら、俺が今日は手伝おう」


 そう名乗りではのは敬輔だった。


「料理はたいしてできないが、雑用ならできる」


「俺もやりたいことがあるから店にいるわ」


 今度は勝吾がそう言った。


 何をするかといえば、異世界に来た初日に言っていた、自分たちの持ち物を売って金銭を稼ぐ方法を試すらしかった。


 話を聞くと、店先での実演販売の許可は既にサンディラから得ているらしい。

 確かに売れれば金になるだろう。


「なら僕は葵たちに付いていこうかな」


 心志の行動も決まった所で、解散となった。

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