第12話 朝

 随分と疲れていたのだろう。知らない土地だというのにぐっすりと眠り、一度も起きることなく眠っていた心志だが、カーテンから漏れる朝日には勝てなかった。


 顔面に差す光によって起こされた心志は、のそのそとベッドから這い出る。


「良く寝たなぁ。学校とか気にしなくていいと思うと余計寝覚めが良い」


 1階に降りると、サンディラとナーニャの声が聞こえた。


「お母さん、これも運んでいいの?」


「頼むよ。運んだら鍋で水を沸かしておいておくれ」


 厨房に入るようなので、そちらに向かう。


「おはようございます」


 心志が声をかけると、サンディラもにこやかに返事をした。


「おはよう。よく眠れたかい?」


「ええ、ぐっすりと。勝吾たちはまだ起きてきませんか?」


「まだだね。本当は寝かせてやりたいんだけど、朝食を作っちまったから起こして来てもらえるかい?」


 そう言われ、心志は再び2階に上がりそれぞれの部屋をノックする。


「おい勝吾、起きろ」


 返事がないので、仕方なく部屋に入る。


(なぜ朝から男のパンイチ姿を見なければならないのか)


 ベッドに寝ていた勝吾は、衣服を見つけていなかった。辛うじて下着は付けているものの、お目汚し以外の何物でもない。


「おい、朝だぞ起きろ!」


 強めに声を張る。


「ん? あぁぁ、もう朝か」


 あくびをしながら起き上がる。


「下に来る時は服着ろよ」


 それだけ告げると部屋を出た。


「次は敬輔か」


 同じようにノックをしても出てこないので部屋に入る。


「予想はできたけど早くない?」


 視界に映る部屋の様子はアニメグッズを壁に貼り付け、枕元にはヴィーナのフィギュアが飾られていた。


 同じように疲れてたはずなのに、一晩で自分の空間を作り上げていたらしい。


「おい起きろ」


「昨日は深夜まで忙しかったんだ。もう少し寝かせてくれ」


 そう言って心志の背中を見せた。彼の両親ならば、少しの慈悲を持って5分後に起こしに来るなどの対処をしたのだろうが、心志には関係ない。


「5秒後にフィギュアに『ハトのポーズ』をさせる」


「それヨガのポーズだろ!? そのフィギュアに関節稼働は無いんだよ!!」


 抗議共に起き上がり、フィギュアを抱える。それを起きたという事にして部屋をる。


最後は葵の部屋。彼もまだ起きていなのかと思いノックする。


「葵。起きてる?」


「起きてるよ。ちょっと待って」


 そんな返事が帰って来たので、そのまま少し待ってみると完璧に身支度をした葵が部屋から出てきた。


「おはよう」


「うん、おはよう」


 なんとなく癒される。勝吾に敬輔と疲れる人物が続いたために、此処まで気が休まる感覚は涙が出そうになってくる。


「サンディラさんが朝ご飯を作ってくれてるみたいだから早くいこう」


 他の2人はどうでも良いとばかりに階段を降りる。1階に戻ると、サンディラとナーニャが朝食の準備を終わらせたところだった。


「おはようございまぁす」


「はい、おはよう」


 葵とサンディラが挨拶を交わしテーブルに着く。テーブルの上にはパンとスープ、それに野菜の炒め物。


 どれも美味しそうに湯気を立てていると、階段を2人の男が降りてきた。


「「おはようございます」」


「はい、おはよう」


 全員が揃ったところで朝食が始まった。

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