第11話 衝撃の事実
サンディラは考え、ため息を吐いた。
「なら、少しだけ手伝ってもらおうかね。ただし、危ない事はさせられない。わかったね?」
そうして、心志たちはサンディラの元で世話になる事になった。いつ元の世界に帰るか判らないため、給料では無く部屋と食料を提供してもらい、その代わりに労働を提供することに決まった。もし、元の世界に帰るために金銭が必要な場合はサンディラが立て替えてくれる事も決まった。
「ほら、料理が冷めちまう前にさっさといただこう」
夕飯に6人もの人が集まれば当然賑やかになる。あぁだこうだと話しながら囲む食卓はナーニャにとって久しぶりだったらしい。
「こんな賑やかなの久しぶり」
微かに嬉しさを見せながら料理を口に運ぶ。
「明日も賑やかさ」
サンディラも子供が増えた様な嬉しさを覚えながら微笑んだ。
夕飯が終わり、4人が住む場所に案内された。店と並列して立っている母屋があるのだが、そこはサンディラとナーニャが住んでいる。流石に追加で4人も住むのは難しいという事で、店の2階に案内された。以前は宿として貸し出していたが今は誰もいないので心志たちの個室として与えられる事になった。
「ここが部屋。好きに使って」
少しの付き合いであるが、どうやらナーニャは大人しい性格らしく、それが冷たく映るようだった。
これでその日が全て終わったかと思われたが、最後の最後に事件が起きた。
心志が自室にいると、ドタドタと足音が聞こえてナーニャが飛び込んできた。
驚愕の色に染まった彼女は、心志に向かって叫ぼうとしたが上手く言葉にならず、パクパクと口を動かしているだけだった。
「?」
首をかしげる心志だったが、ナーニャの横に葵が立っている事に気付き、何となく納得してしまった。
「もしかして葵の事?」
心志の問い掛けに4度ほど素早く首を縦に振るナーニャ。
「間違いなく葵は男だよ」
「で、でも、私の知ってる男って、もっとこう野蛮でガサツな感じの、こんな可愛い感じじゃないの!」
信じられなと風に視線を彷徨わせる。
「可愛いなんて嬉しいな」
照れる葵は無視することにした。
「なんで気付いたの?」
「そ、それは、一緒にお風呂に入ろうって誘ったから」
気恥ずかしそうに告げるナーニャ。
女同士で親睦を深めようとした結果、衝撃の事実に至ったらしい。
「一緒に風呂ってことは、見せたの?」
葵が男だと証明する方法で、一番確実なものは見せる事だ。いくら葵といえど、今日出会ったばかりの少女に見せるほどオープンな性格では無いと思うのだが確認した。
「まさかぁ。お風呂に誘われた時点で説明したよ。最初は信じてくれなかったけど、なんとかね」
それなら良いが。と、ため息を吐いた。
そんなドタバタで1日の幕が閉じた。そしてこれからの異世界生活が幕を開けるのだった。
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