第7話 話してみるのはどうだい?
「本当に連れてきた。……ねぇお母さん、大丈夫なの?」
困惑と不信感がありありと伝わる表情で4人を眺め、ため息を吐く。
「大丈夫さ。私だって長年店をやってるんだ。見る目くらい持ってる」
娘の不安を払拭しようとするが、騙される年齢では無いだろう。正体不明の若い男を連れてこられたなら誰だって不安は持つのが当たり前だ。
そこで心志は考えた。どうやったらこの少女に不安を取り除けるのか、と。
「なぁ、どう考えても俺たちは不審じゃん? なにか安心材料ってないかな」
小さな声で言うと、反応が帰って来た。
「そうだな、俺に任せろ。オタクは無害で有名だ」
それを言ったのが敬輔出なければ、どんなに心強いか。本人以外が目の光をなくし、行動を監視する。
リュックのファスナーを開け手を入れる。次の瞬間、出て来たものは当然フィギュアだった。
「この御神体を――」
無言のまま勝吾が頭に肘を入れ、心志は店の扉を開け、葵がフィギュアごと奪ったリュックを外に放り捨てた。
「何をするッ!!」
意識が
「今の何?」
少女が不審そうに顔をしかめる。
「今のは気にしないでください。僕たちも自分たちが怪しい事は否定できません。だから少しでも信用を得たいんです」
「なら、自分たちが何者なのか話してみるのはどうだい?」
女性はそう言ってテーブルを指した。
◆
「ほら、これでも飲みながらゆっくり話そう」
全員が1つのテーブルを囲む形で座わり、出してくれた飲み物を受け取る。
「ありがとうございます。……えーと」
心志は女性からカップを受け取り礼を言うが、そこで相手の名前さえ聞いていない事を思い出した。
「アタシはサンディラ、こっちは娘のナーニャだ」
「ありがとうございます。サンディラさん」
受け取ったカップは温かい湯気を昇らせ、中は透き通った緑色をしていた。軽く口に含んでみると、甘く爽やかで少し癖のある風味だった。思えば異世界に来てから飲まず食わずでいたために、その飲み物は身体に染み渡る感覚が強かった。
一呼吸を置き、語る役として心志が話し出した。
「まず、僕たちはこの世界の住人では無いです」
「僕たちは今日、突然この世界に飛ばされました。だから旅人でも家出でもないんです。元の世界では学生をやっていて、あんまり馴染んでなかったけど平和に過ごしていました」
「別の、世界」
ナーニャは理解できない風に呟いた。
「帰る方法は?」
サンディラが聞くが、彼らに解るはずも無い。心志は緩く首を横に振ると、サンディラはそうかい。と呟いて話の先を促した。
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