第6話 野宿?

 4人が振り返ると、少女が居た。年齢は心志たちと変わらないくらい。金色の髪をショートに切りそろえた、何となく怖そうな雰囲気の少女。


「お店の前で騒がれたら迷惑」


 少女が指さす方を見ると、彼らのいる位置は建物の壁では無く、丁度出入り口となる扉の前だった。どうやら、何かとふざけているうちに此処まで移動してしまったらしい。


「ごめんなさい」


 心志は素直に謝り、そこから移動する。


 少女は反応も無いまま店の中へと消えた。


「この店って何の店なんだろうな?」


 勝吾は店構えを見るが、看板らしきものも無かった。


「とりあえず邪魔にならないところに移動しよう」


 葵が促し4人は移動したが、どこに行けばいいのかもわからない。そうこうして歩いていると、時刻は夕方。正確な時間が解らないので感覚でしかないが、空がきれいにオレンジ色に染まっているので間違いないだろう。適当な場所で実演販売でもと考えていたが、家路に急ぐ人が増えたせいで立ち止まってくれる事もないだろう。


「今日は此処で野宿か」


 勝吾が観念して呟く。行きついた空き地が宿となるのだが、治安が悪くない事を祈るばかりである。


 だがその時、今度は女性に声をかけられた。


「あんたたち、ちょっといいかい?」


 思わず身を固くする4人。空き地とはいえ、見知らぬ人間がいたならば警察の様な組織が動いても可笑しくはない。このまま逮捕されればどうなるのか想像もできない。


「僕たち怪しい者じゃないんで」


 精一杯の笑顔を向け心志は女性の横を通り過ぎた。それに倣う形で、敬輔と勝吾と葵が通り過ぎた。


 しかし、


「ちょっと待ちな」


 そう言って横を通り過ぎようとしていた葵の襟首をつかんだ。


「どうせ行くところが無いんだろ? よかったらウチに来な」


 女性は笑顔を向ける。


 それはどういう意味なのだろうか。見ず知らずの男たちをウチへ来いと誘う意味を考える。


 女性は人のよさそうな笑顔だった。如何にも肝っ玉母さんという風体なので安心感を与えたが、心志たちに真偽を確かめる術はない。


 後々ヤバい事に巻き込まれるのか? 


 気が付いたら内臓抜かれてたりしないよな。


 と考えている一向に、女性は再度話し掛ける。


「アンタたち、さっき不愛想な娘に退けって言われなかったかい? 私はそこの店の店主で、不愛想な娘の母親さ」


「確かに言われました」


 襟首を掴まれたままの葵が返答する。


「あの子が店の前に変な奴らが居たとか言うもんで、歩いてく後姿を見たらまだ子供じゃないか。だから心配になったからこうやって追いかけてきたのさ。宿があるようなら声は掛けなかったんだけど、ここで野宿は可哀想だろ?」


「でも、俺たち金持って無いっすよ?」


 勝吾が言うと、女性は大笑いした。


「解ってるさ。料金は取らない。これは慈善だからね」


 そのまま女性に連れられて、先ほどの店に戻る。


「戻ったよ」


 扉を開け中に入ると、ロウソクの灯りが煌々と室内を照らし、テーブルと椅子が複数脚並んでいる事から、そこは飲食店であろう事は解った。そして先ほどの少女がいた。

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