第4話 異世界へ

 次の日、朝10時前に駅前に到着した心志は、あくびを噛み殺して改札横に立っていた。自分でも思うほど普通で、面白みのないジーンズにシャツにジャケットという服。


そして、祝日のために人通りは多く、大人も子供も青空の下を闊歩している。

 早く来すぎたかもと思っていると、葵が現れた。


「おはよう」


「おはよ」


 葵の私服は、デニム生地のロングスカートに白のパーカーという出で立ちであった。


「勝吾と敬輔はまだ来てない?」


「まだだね。というか、2人が僕らより先に来てたことなんて無いじゃん」


「たしかに、またアニメとバイトかな」


 深夜アニメは全てリアルタイムで見る事を心情にしている敬輔は、次の日に何があってもアニメを見る。例え次の日がテストだろうが受験だろうが絶対に譲らない。なので、遅刻の常習者だった。


 一方の勝吾も遅刻常習者。彼の場合は趣味がバイクの改造という、お金がいくらあっても足りない趣味のために複数のアルバイトをかけ持っていたりもする。そのため、朝起きられない事はしょっちゅうである。


 適当に葵と会話をしながら待っていると、フライジャケットを羽織った勝吾と全身黒色コーディネートの敬輔が眠たげな表情で現れた。


「待たせたな」


「すまん」


「まぁ、いつもの事だしね」


「慣れていると言えば慣れてる」


 適当な挨拶が通じる4人は駅から移動した。近くにはゲームセンターや本屋、ファストフード店などがひしめき合っている。


 目的も無く、アニメのグッズショップやゲームセンターなどに向かう。そこであれやこれやと店内を徘徊し昼食時になった。


 4人は適当なファストフード店でカロリーを補給し、再び繁華街に繰り出した。


「次はどうする? 向こうのゲームセンター行ってみる?」


「バッティングセンターってのもありだよな」


「私は雑貨屋さんとか見たいけどなぁ」


「僕たちが居ずらい」


 そんな会話をしながら歩いていると、カラオケ店が目に入った。店頭に出されている看板には【祝日割引】の文字があり、学生割引と合わせると結構安い値段で遊べるらしかった。


「カラオケなんてどう?」


 心志のその提案でカラオケに決まった。


受付を済ませ、言われた部屋番号まで歩く。


「この割引ならクラスのヤツらも居るかもな」


 勝吾が嫌なジョークと共に辺りを見回す。


「なら、さっさと部屋に入っちゃいましょう」


 目的の部屋を見つけた葵がドアノブに手をかけて引く。


 すると、薄暗いはずの部屋が目を開けられない程に眩しい。思わず目を瞑ったり腕で影を作ろうとしたが、異常なほどの眩しさだった。


「何だこれ!?」


 呻く声で呟いた心志だが、誰からも返事がない。どのくらい経ったのか解らないが、気が付くとカラオケボックスではなく異世界に居て、現在に至る。


 ぐったりとしゃがみ込み、地面に涙を吸わせている友人を放って置き、3人は真剣に考えた。


 だが、この状況に慣れているものなどいない。解決方法も元の世界に戻る方法も解るはずが無い。


 行きか人たちが、チラリと様子をうかがって通り過ぎる。


「変わった服ね」


「旅人かな」


 好奇な目で噂をされ、


「ママぁ、あのへんな人たち何ぃ?」


「見ちゃダメ! 関わったら攫われちゃうよ」


 随分な言いようで通り過ぎる親子。


 そんな状況に耐えられなかった心志は場所を移動しようと持ちかけた。目立たない場所に避難しようという提案だったが、1人が元気に立ち上がった。


「そうか、ギルドだ。異世界の定番と言えばギルドなんだ。そこに行けば解決するのかもしれない」


 敬輔はズボンの土を払い歩き出す。


「そのギルドってどこにあンのか知ってんのか?」


 勝吾の質問に対し、敬輔は当然の様に答える。


「知らん、だから聞く」


 そこからの敬輔の行動は素早かった。

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