第2話 長い長い安定志向

結局 地球環境に勝る星は無かった


22世紀から続いた未曾有の天変地異

嵐が吹きすさ

それが止むと乾燥と寒冷が襲い

地震と津波が大地を作り変えた


人類は叡智をかけて生存と種の保存を模索し続けた

様々な方法が試され そして犠牲が出た


多く試されたのは地球外への脱出

宇宙ステーション 月面基地 生存可能な星の捜索

いずれも一部の者にだけ果実を届けるに留まった


結局 地球環境に勝る星は無かった


多くの人間は地下シェルターと海中都市へと逃げ込んだ

幸い それらの完成までに多くの人類は自然の脅威に屈し 数を減らしていたため

ほとんどの人を収容することが出来た

そればかりか多くの野生生物も収容できる余裕もあり、多様な生物が収まった


日本などのマントルが集中する土地では

地下シェルターは地殻変動に耐えきれなかったが

地殻が安定したブラジル楯状地などの地下に作られたシェルターは耐え 拡張し続けた

しかし多くは物資不足 主に水の確保に苦しんだ

食べられるものは何でも食べた

文明は鳴りを潜めた

人類は他の動物とも生き残りをかけ戦うこととなった



海中都市の多くは上手く運用された

なによりも豊富にある海水のお陰で新鮮な空気と食物を獲得した

必要に応じて海底地殻の資源も得られたため長く安定した環境となり

そこは地球生物にとって楽園となった


いや

やはり「人間にとって」楽園となった

人間の生存が第一至上命題であったため

人間に害なすものは排除され

益をもたらすものが残された


何百年も安定した環境が続いた

温度湿度も快適さを保ち

豊かな栄養と高度な医療が安定供給され

それらを支える資源確保を始め

生産 流通 果ては娯楽まで

全てがマシンの仕事となっていた


人類の役割は無くなったが

完璧な管理の元

健康な肉体と完全な容姿を保ち続けた


人類はそれでも考え続けた

「なぜ生きるのか」


哲学は人類唯一の仕事となった

来る日も来る日も語り合った

「人は何故生きるのか」


何百年も結論は出ずに人類は苦しんだ


その頃の最も深刻な社会問題は

自殺だった



。。。。

ブラジルの地下から人が這い出してきた

長く苦しい生活だった

不安定な地球環境のサイクルに

やっと人が住める環境が巡ってきた


この地から再び始まるだろう

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