第21話
シュトュルはレイディエ殿下にエスコートされ、出店が建ち並ぶ街へと来ていた。人が沢山いて、街は活気に溢れていた。シュトュルはあまり人の多い場所へと行かないので興味津々に見ていたりすると、レイディエ殿下が丁寧に説明をしてくれた。
「お待たせ!シュトュル」
シュトュルは噴水をぼんやり見ながらベンチに座って待っているとレイディエ殿下が来る。レイディエ殿下が持ってきたのは今日の昼食。何でもレイディエ殿下のオススメ。
「はい」
「あ、ありがとうございます…!これは、サンドイッチ…ですか?」
シュトュルはレイディエ殿下から受け取り、じっと手の中にある食べ物を見つめる。
「そうだよ。驚いた?」
レイディエ殿下はニヤリと笑う。
「え、えぇ…私の知ってるサンドイッチとちょっと違うので…」
レイディエ殿下から受け取ったサンドイッチは、旬の食材をパンからはみ出さんばかりにぎゅっと挟み込んだサンドイッチだった。食べ応えがありそうだ。
「私も最初、これを見たときはびっくりしたよ。さ、ちょっと食べにくいけど、食べよう!」
レイディエ殿下はそう言って豪快にかぶりつく。シュトュルも見よう見まねでサンドイッチにかぶりつく。
旬の食材の風味が口いっぱいに広がる。
「おいひい…」
シュトュルはそう呟く。
「美味しいだろう?私も時々、食べるんだ」
レイディエ殿下は口の端にソースを付けた顔でどや顔をする。
シュトュルは思わずクスクス笑う。
「レイディエ殿下、口の端にソースついてますよ?」
「あれ、最近は綺麗に食べれる様になったんだけどな…」
レイディエ殿下はそう言ってハンカチで口元を拭く。
ふと、レイディエ殿下と目が合えば、2人はちょっと照れた様に笑いあう。
穏やかな昼食の時間だった。
昼食を食べ終わると、レイディエ殿下とブラブラと街を歩き、道端で行われているショーを見たり、読書のお供になりそうな紅茶を買ったりと楽しんでいた。
そんな時、シュトュルは雑貨を出している出店で何か心が引かれる物があった。
それは髪飾りで、立体で繊細な金色の蝶に、アメジストの様な小さな紫色のビジューがあしらわれていた。
「綺麗…」
シュトュルは手に取りそう呟く。
(金色に紫色って、配色がレイディエ殿下と一緒ね)
突然、頭の中でレヴィアタンの声が響く。
レヴィアタンにそう言われ、シュトュルは頬を少し赤くする。
「シュトュル、何か欲しいものがあった?」
そこで、ひょこっとシュトュルの隣からレイディエ殿下が現れる。蜂蜜色の髪は太陽の光を反射しキラキラと輝き、アメジストの様な瞳がじっとシュトュルを見る。
「い、いえ!と、特に何も…」
シュトュルは慌て髪飾りを棚に戻す。
さっき、レヴィアタンに言われた言葉を思いだし、シュトュルは何だか恥ずかしくなってきた。
しかし、レイディエ殿下はよく見ていた。
「綺麗な髪飾りだね。細工がとても細かくよく出来てる」
シュトュルが棚に戻した髪飾りをレイディエ殿下が手に取る。
そしてシュトュルの髪にそっとあてる。
「うん、シュトュルによく似合う」
「…そ、そうですか?」
シュトュルは少し上目遣いでレイディエ殿下を見れば、レイディエ殿下は頷く。
「あぁ、まるで妖精女王の様だよ。店主、これはいくらかな?」
「え!?」
レイディエ殿下は店主に値段を聞き、髪飾りを買う。シュトュルはちょっと戸惑った。
そして、レイディエ殿下はシュトュルの手のひらに髪飾りを乗せる。
今にも金色の蝶は動き出しそうだった。
「あ、あの…どうして?」
「シュトュルによく似合うから、それに、私が買いたかっただけ…かな。別に使わなくてもいいから、持ってるだけでいいから受け取って貰えないかな?」
シュトュルはどう反応していいのかわからず戸惑っていると、レイディエ殿下は歩きだす。
「…他の所に行こうか?」
すると、ピリピリした痛みが腕にはしる。
レヴィアタンがシュトュルに取りつく合図だ。
(言わなきゃ、レヴィアタンが私に取りつく前に!髪飾りをくれたのは一瞬びっくりしたけど、嬉しかったのも確かな事…)
シュトュルは、レイディエ殿下の服の袖を引っ張る。
「あ、あの、ありがとうございますっ!すごく嬉しいです…!この髪飾り、今度の王宮で行われる舞踏会で使いますっ!」
レイディエ殿下は一瞬、驚いた表情を見せる。
「それは、楽しみだなぁ。きっと舞踏会の注目の的になるだろうね」
レイディエ殿下は嬉しそうに笑う。
シュトュルも自然と笑みが溢れた。
いつの間にかシュトュルの腕の痛みは無くなっていた。
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