第16話

薄暗い森の中、シュトュルは走り続ける。

シュトュルの走る足音、後ろからは木がなぎ倒される音、荒い息の音、ドスドスと大きな足音が辺りに響いた。

ズシャアッ

「痛ぁあっ!」

シュトュルは木の根っこに引っ掛かり転ぶ。それでも無理無理体を起こして再び走り出す。シュトュルは、走りながら魔法の呪文をなんとか唱えた。

『ディフェーザ・シャルム・シュトュル!固く!隔てろ!壁を作り出せっ!』

半透明の壁を作り出し、熊の魔獣とシュトュルの間に壁を隔てる。

熊の魔獣は、壁に当たり、壊そうと暴れまわる。シュトュルは一気にスピードをあげて走り出した。

(レヴィアタンッ!喉が痛いっ…足も痛いよ…)

「もう少しっ…あと少しだからっ!いっ!!」

シャッ!

スカートが木の枝で切り裂かれる。シュトュルは転がる。その拍子に魔獣除けが落ちた。

(れ、レヴィアタン…魔獣除けがっ!それがないと…)

「あぁ、いけない…魔獣除けを持ってるのになんで追われるのかしら…?」

魔獣除けを拾い、汚れを払う。そんな時、違和感をレヴィアタンは感じた。魔獣除けの小袋の紐を外し中の香りを手で扇いで嗅いだ。そして顔をしかめ、急いで中身を取り出して辺りに捨てる。辺りに調合された薬草などが散らばる。

(ちょ、レヴィアタン!何してるの!?その魔獣除けがないと!)

「これ、魔獣除けじゃない!むしろ、魔獣呼びよっ!」

(どういう事っ…!?レヴィアタン!前!!)

「え!?」

ザシュッ!

シュトュルの肩に痛みと熱さがはしる。右肩が血で染まる。

気づけば辺りに狐が何匹かよだれをだらだらとたらしていた。一匹の狐の口元が血で汚れていた。

シュトュルは再び走り出す。

(れ、レヴィアタン!魔獣除けじゃないってどういう事!?)

「だからっ!あの中に入ってるのはっ!魔獣除けに調合された薬草とかじゃなくて!魔獣を引き寄せやすい薬草を調合したのが入ってたのよっ!」

(な、なんで…そんな事が?)

ポタッ

そんな時、シュトュルの頬に何かが当たる。空を見上げれば、灰色の空。雨が降ってきた。シュトュルの体がだんだん冷えていく。


バキッ


シュトュルの耳元に枝が折れる音と荒い息の音が聞こえた。

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