第13話

シュトュルは、自室で明日の授業の予習をしていた。

明日は、校外授業で、薬草探索をするらしい。学園近辺の森に自生する植物を教科書や、図鑑で確認をしているが、シュトュルの頭の中は、今日の昼食の事でいっぱいだった。

(もしかしたら、私…始めて、レイディエ殿下の前で、笑ったかも…)

レヴィアタンの術でもなんでもなく。レイディエ殿下につられて、クスクスとシュトュルは笑った。

そして、レイディエ殿下がシュトュルの耳元でトマトが苦手だと、少し恥ずかしそうに笑いながら告げた、顔をふっと思い出す。

(あんな風に笑ったりもするんだなぁ)

レヴィアタンに出会ってからシュトュルは、毎日、発見だらけである。


『貴方たちが、幸せ絶頂の時に一気に破壊するのよ!』


ふと、レヴィアタンが言った言葉を思いだし、胸がなんだか、苦しい様な気がした。

「…もう、寝ようかな」

このまま勉強する気にもなれず、シュトュルは電気を消し、ベッドで横になる。

カーテンの隙間から射し込む月の光がシュトュルをそっと包み、シュトュルは眠った。




「あーぁ、せっかく、オオフカルリの雫を間違えて入れたらとっても痛い事になるって教えようと思ったのに…傷1つ付けれなかったわ…」

ネーベルは、オオフカルリの雫が入った小瓶を指で軽く弾く。

ネーベルはシュトュルの事が大嫌いだった。

覇気を感じられず、人を避け本を読んでばかりのシュトュルが大嫌いだった。

太陽の様なレイディエ殿下の隣にふさわしくない。

「レイディエ殿下の隣は、私…」

レイディエ殿下が太陽なら、ネーベルは、美しく、明るい、快晴の青空である。そうでなければならない。

「ふふふ…待ってて下さいね、シュトュル様…貴方みたいな覇気を感じられない星屑は、私が握りつぶしますから」

ネーベルは、窓から見える夜空を睨み付け、カーテンを閉じた。

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