第12話

「まさか、君から食事のお誘いが来るとは」レイディエ殿下は嬉しそうな笑顔、シュトュルはひきつった笑顔である。レイディエ殿下と突然の食事で緊張しているとゆう事もあるが…

(し、視線が痛い!視線で殺される…)

食堂で食事している他の生徒の視線が痛かった。


(食事が喉を通らない…)

シュトュルは視線と緊張の渦に飲み込まれていたが、食事はなかなか飲み込めずにいた。最悪はスープで飲み流すかと考えたが…

(熱い…スープこれじゃあ、飲めない…私、猫舌なんだよなぁ…)

スープが熱い為、シュトュルはよりいっそう気分が下がった。それでもなんとか飲み込み、レヴィアタンとレイディエ殿下の会話に一喜一憂しながら食事をしていた。


ほとんど食べ終わり、残るのはあの熱いスープのみ。そろそろ飲めるだろうとカップを持ち、ふとレイディエ殿下を見れば、レイディエ殿下は、赤い液体の入ったコップを軽く揺らし眺めているだけで、一向に口をつけなかった。

その赤い液体は…

(トマト…ジュース?あれ、サラダの入ってるお皿にもプチトマトが…もしかして、トマトが苦手?)

シュトュルは、口をつけてないこのスープとトマトジュースを交換してもいいと考えたが…

(で、でもどうやって切り出そう…周りには他の生徒もいるし…)

レイディエ殿下も他の生徒にトマトが苦手だと知られたく無いだろう。すると、全身の痛みが強くなる。レヴィアタンがシュトュルを操る。

「れ、レイディエ殿下…あの、スープとトマトジュース…こ、交換してくれませんか?わ、私、猫舌で、熱いの苦手で…」

シュトュルの目頭が熱くなる、シュトュルの瞳は涙でいっぱいである。

レイディエ殿下は驚いた顔になる。

「そ、そうだったのか!わかった、交換しよう」

レイディエ殿下はシュトュルの持っていたスープを受け取り、トマトジュースを渡す。

そこで、シュトュルの体に自由が戻った。

シュトュルは、トマトジュースに口をつける。

(トマトジュース、美味しいけどな…)

レイディエ殿下はプチトマトも食べるとき、一瞬、顔が固くなった気がしたがすぐにもとの表情になり、優雅にスープを飲んだ。


食事が終わり、食堂を出ると、レイディエ殿下が声をかける。

「シュトュル、今日の昼食とても楽しかったよ。また、一緒に食事をしたいね」

「そ、そうですね…」

そこで、レイディエ殿下がシュトュルの耳元に寄り、小声で喋る。

「実は私、トマト苦手なんだ…今日の交換、とても助かったよ」

そう言ってシュトュルから離れるとちょっと恥ずかしそうに笑った。

「そう、だったんですね…あの、私も助かりました。熱いのはどうも苦手で・・・」

「ふふ、今日はお互いの苦手な物を知れたね」

そう言って、二人はクスクス笑った。

こうして、無事、昼食は終わった…


その様子を遠くから見る者がいた。

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