第11話

医務室に行き、特に異常無しと言う事でシュトュルは教室に戻った。教室には人がまばらで時計を見れば、もう昼食の時間だった。

「もう、昼食かぁ…」

シュトュルはトボトボと食堂へと向かう事にした。


シュトュルが食堂へと向かっていると、パタパタと誰かが廊下を走る音がした。

「シュトュルっ!」

シュトュルを呼び捨てにするのはこの学校内では一人しかいない。

「れ、レイディエ殿下っ!?ど、どうされたのですか?」

レイディエ殿下は、シュトュルの肩を掴むと顔をくっ付けんばかりに顔を近づける。

「どうしたも何も!授業中に事故が起きたんだって!?大丈夫なのか!?怪我してないか!?」

(レイディエ殿下近い近い近いぃいい!!)

「えっと、えっと…だ、大丈夫ですっ!け、怪我してません!大丈夫じゃなかったら今、きっと医務室でしゅ…」

(しまった、緊張して噛んじゃった…)

シュトュルはアワアワする。

「そ、そうだな…すまない、気が動転してしまってて…とにかく、無事で良かった…」

レイディエ殿下は、ほっとした顔になる。

「し、心配してくれてあ、ありがとうございます…」

シュトュルは、うつむきながら言う。

「何を言う。大事な婚約者の事を心配をするのは当たり前だろう」

レイディエ殿下はアメジストの様な瞳でじっとシュトュルを見つめる。

シュトュルは、顔が熱くなる感じがした。

(もう、無理無理無理無理!!レイディエ殿下の顔見てられないっ!)

「で、殿下っ!その、ちょっと、顔!ち、近いですっ!」

「え、あぁ!す、すまない…」

レイディエ殿下は慌てシュトュルから少し距離をとる。

「あの、そ、それでは…」

そう言って去ろうとするが…

ギシギシッ シュトュルの体の自由が奪われる。

そして、勝手に喋り出す。

「レイディエ殿下!あの、い、一緒に、昼食…どう、でしょうか…?」

「え」

レイディエ殿下が目を見開く。

(はい!?ちょっと待ってレヴィアタン!こ、心の準備が出来てないっ!で、殿下、断って…!)

しかし…

「あ、あぁ!もちろん!是非、一緒に!」

レイディエ殿下の笑顔にシュトュルの心の叫びは打ち消された。

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