第10話

体の自由が戻り、軽くふらつくシュトュル。


「シュトュルさんっ!大丈夫ですか!?いったい何があったんですか!?」

先生が駆け寄ってくる。

「え、えっと、とりあえず、防御魔法を使ったので怪我はしてないと思います…あの、オオルリを薬に垂らしたら勝手に桃色に変色したんです…」

「オオルリを垂らしたら桃色に…」

先生はシュトュルの机に置いてあるオオルリの小瓶を持ち上げ光に透かすと険しい顔をした。

そんな時…

シュトュルは視線を感じ、視線の先を見れば、鮮やか紫の髪、琥珀色の瞳を持つ少女…ネーベルがシュトュルを睨んでいた。

「シュトュルさん、ひとまず医務室に行って、本当にどこも怪我してないか、異常はないか確認して来なさい」

先生の言葉にはっと我にかえるシュトュル。

「わ、わかりました…」


シュトュルが廊下に出ると、レヴィアタンがため息をつく。

(はぁ、うかつだったわ…あれはきっとオオフカルリの雫ね)

(オオフカルリの雫…それって確か、オオルリとよく似た雫よね?)

(そう、あの薬を作る時、オオルリではなく、オオフカルリを入れると、勝手に桃色に変色して、爆破するのよ。学校が用意してるから、てっきり安全かと思ったけど…まさか、あんな事が起こるとは…)

(オオルリとオオフカルリの違いって光に透かすとわかるんだよね?確か、オオルリは、光に透かすと、細かい金の粒子が見えて、オオフカルリは、光に透かしても何も見えないのよね)

(そうそう。よく知ってるわね)

(あ、それと、レヴィアタン…さっきはありがとう…爆破から守ってくれて)

(別に…シュトーの顔でも吹き飛んだら、困るからね)

(か、顔が吹き飛ぶ…)

改めてレヴィアタンに感謝をするシュトュルであった。

(…そういえば、ネーベルが私を見て睨んでいたけど…まさか、オオルリを入れ換えたりした?証拠があったわけでもないから何とも言えないけど…)


シュトュルはなんだかモヤモヤしながら医務室へと向かった。

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