序
放課後、俺と速水先輩はまたもや向き合って座っていた。いつもと違うのは中野先輩も、花園くんもいないという点だ。
「別に怒っているわけじゃないし、どうしても言いたくないなら言わなくていいのよ」
先輩は口元に笑みをたたえながら言った。それもいつも通りだ。
「ただ、どうして本当の理由を隠すのか気になっただけ。私の性分なの」
確かに、先輩が普段読んでいる本はミステリーものとか、「意味がわかると怖い話」をまとめたものとか、そういうものばかりのように思える。謎解きのように真実を明かす、そういうものが好きなのだろう。
先輩は黙ってこちらを見ている。俺が「言いたくない」と言うか、本当のことを言うのを待っているのだ。
嘘というのは、入部動機の部分についてである。オカルト同好会の存在に気がついていなかったことや、速水先輩に声をかけられたことがきっかけなのは本当だし、「オカルトに興味があった」というのも、まあ嘘というまでではない。本当に興味があった。けれど、それだけで入部を決めたわけではない。
先輩たちが、「見える人」だということ。それで、“力になってくれるのでは”と考えてのことだった。結局、今まで言い出せずここまできてしまったわけだけれど。
言いたくないと口を閉ざすのも選択肢のひとつだ。きっと先輩は仕方ないわね、とそれ以上触れないでいてくれるだろう。だが、俺はそうするわけにはいかなかった。言えなければ、もうどうしようもなくなる。
「……先輩、まずは本当のことを言わなくてすみませんでした」
意を決して口を開く。速水先輩は真面目ねー、と気の抜けた返事をした。
「その上で、相談があるんです。長くなると思いますが、聞いてもらえますか」
「もちろん」
先輩の笑みが深くなる。それは見方によっては楽しそうとか、好物が出てきたような——そんな笑い方だった。
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