第6話 絵本読み聞かせ

 女騎士と言えば体力勝負の世界。そのため、基本的に外で遊ぶのが推奨されている。だが、そればかりでは脳みそが筋肉で出来ている女騎士が出来上がってしまう。やはり、女騎士たるもの一般教養も身に付けなければならない。でないと女騎士はすぐ堕ちるし、バカという世間のイメージがついてしまうからだ。


 今日は、彼女達に絵本を読んであげることにした。絵本と言うのは物語の世界に触れながら、言葉の勉強にもなる。情操教育にも役立つので、教育に良いのである。


「はい。皆ー! 今日は先生が絵本を読んであげるね」


「せんせー! 何の絵本を読むのー?」


 オリヴィアちゃんが興味津々に聞いて来た。外遊びが好きな彼女もやはり子供。絵本の魔力には逆らえないのだ。


「今日は泣いた赤オークを読むよ」


「なーんだ。100万回犯された女騎士じゃないんだ」


「何その本!?」


 そんな絵本聞いたことない。どう考えても絵本じゃなくてエロ本だろう。これで子供にまともな教育が出来るとは思えない。子供の教育じゃなくて、子供を作る教育には役立ちそうですねってやかましいわ!


「お兄ちゃんの部屋にあった本なんだ。この前こっそり、お兄ちゃんのベッドの下を探したら見つかったよ」


「オリヴィアちゃん。二度とお兄ちゃんの部屋に入ってはいけません。人の部屋に勝手に入るのはいけないことだよ」


「えー。お兄ちゃんの部屋いっぱい本があって楽しいのにー」


「オリヴィア。私の家にある本で我慢しなさい。女騎士学、自立した女騎士とは、女騎士の人権とかいろんな本があるわ」


 セシリアちゃんの家も家で幼稚園児が読むような本はないな! そんな意識高そうな女騎士が読む本を幼稚園児が読んでいるとか嫌すぎる。


「私、泣いた赤オークの話好きなんだ。せんせー早く読んで」


 アニータちゃんにせがまれる。アニータちゃんはやっぱり純粋で素直でいい子だな。実に幼稚園児らしい。どこかの家庭環境が爛れている幼稚園児にも見習って欲しいくらいだ。


「それじゃあ読むよ」


 むかしむかし あるところに 赤オークがいました。


 赤オークは 女騎士といっしょに あそびたいと おもっていました。


 しかし 赤オークは 目つきがいやらしいので 女騎士からは セクハラ親父と よばれ きらわれていました。


 赤オークは ただ女騎士となかよく したいだけなのに 女騎士は 赤オークの みためだけで ていそうのきき をおぼえるのでした。


 そんななか 赤オークの ともだちの 青オークが やってきました。


「やあやあ 赤オークくん そんな なやんでいる かおをして どうしたんだ? また メスオークにでも ふられたのかい?」


「ちがうんだ 青オークくん ぼくはメスオークなんか しゅみじゃない。 にんげんのおんなのこが いい。 とくに女騎士と イチャコラしたい」


 赤オークの わがままに 青オークは あきれはてました。


「ぼくたち オークが 女騎士と 付き合えるわけ ないじゃないか。 ぼくたちは 付き合えないから むりやり 突き合うしか ないんだ」


 もはや しりめつれつ。 いってることの はんぶんも りかいできません。 これがオークなのです。


「でも きみが どうしても のぞむなら ほうほうはある。 ぼくが 女騎士に おそいかかる。 それを赤オークくんが とめるんだ。 そうすれば きっと女騎士は 赤オークくんに こころを ひらいてくれるだろう」


 赤オークは そのてが あったかと おもいました。 しかし どうじに 青オークの しんぱいもします。


「そんなことしたら きみが 女騎士に きらわれちゃうよ」


「だいじょうぶ もとから オークなんて きらわれものさ これいじょう きらわれた ところで ノーダメージ むしろ ごほうび ののしって ほしい。 むしろ ふんでほしい」


 青オークは ドMでした。 つまり このさくせんは なんの もんだいも ありませんでした。


 さくせんけっこうのひ 青オークは 女騎士のむらにいき 女騎士におそいかかりました。


「ぐへへ。 女騎士じゃねえか おれの よめになれや!」


「くっ けがらわしい オークめ わたしの けんで せいばいして くれる」


 しかし 女騎士は オークによわい。 あっというまに 女騎士は まけてしまいました。


「やめろ! 女騎士に てをだすな!」


 赤オークは 青オークを なぐりました。 けりました。 ふみました。 くびをしめました。 かんせつわざをきめました。


「ま 待て それは だいほんにない」


「うるせえ しったこっちゃねえ」


 赤オークは 青オークを ひつよういじょうに いためつけました。 かんねんした 青オークは にげだしてしまいました。


「オークにたすけられるとは…… オークにもいいやつは いるんだな」


 こうして 赤オークは 女騎士となかよくする ことができました。


 女騎士と おちゃをしたり いっしょに おはなを つんだり ひがくれる まであそんで しあわせな ひびを すごしました。


 こんな しあわせなせいかつを おくれているのは 青オークの おかげだ。 でも 青オークは 女騎士に嫌われてしまった。 赤オークは 青オークの ことがきになり 青オークの いえまで いきました。


 青オークの いえには はりがみがして ありました。


「てめえ なんか ともだちでも なんでもねえ。 ひつよういじょうに いためつけやがって おぼえておけ!」


 えんぎに リアリティをもたせるためとはいえ ともだちを なぐってはいけません。


 おしまい


「いい話だなー」


「はい、そうですね……ぐす……」


 アニータちゃんはあまりに感動的な話を聞いて泣いてしまった。


「これは女騎士を冒涜ぼうとくしていると言えるわ。女騎士が下賤げせんなオークと一緒に暮らすわけないもの。これは女騎士の権利を阻害している!」


 セシリアちゃんがまた訳のわからないことを言い始めた。多分言っている本人も何を言っているのか分かってないと思うからスルーしておこう。


「オークが出たのに女騎士がワッショイされないなんてつまんなーい」


「オリヴィアちゃん。そういう問題発言はやめて」

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