第4話 剣術の稽古
剣術の訓練の時間になった。女騎士にとって剣術の腕は命である。これが劣る女騎士はゴブリンやオークに大敗北を喫し、好き放題弄ばれてしまうのが世の常である。
決して、負けない、堕ちない、ヤラれない女騎士を育成する当園では、女騎士の剣術の育成に力を入れているのだ。
僕は元騎士として、彼女達を真剣に育成するつもりでいる。これから女騎士として活躍していくであろう彼女達のためにもだ。この純粋で可愛い子達を絶対にメス堕ちなんてさせたりしない。
「せい! や! は! う!」
鋭い掛け声と共にセシリアちゃんが素振りをしている。幼稚園児とは思えないほどとても綺麗なフォームだ。彼女は性格も相まって立派な女騎士になるであろう。
「はひぃ! あひん! らめえ! イクゥ!」
「オリヴィアちゃん。その掛け声やめようか」
「えー。なんでー。この掛け声の方が集中できるのに」
子供の自由な意思や発想は本来なら尊重してあげるべきなのだろう。しかしそれは健全なものでなければならない。こんなえちえちな読み物に出て来るような声を出されてしまったら、他の子に悪影響だ。
「ねー。せんせー。なんでダメなのー? なんでなのー?」
子供特有の質問攻め。確かにダメな理由も言わずに頭ごなしで叱るのは良くないことだろう。しかしだ。世の中には説明しようがないことは存在する。誰が幼稚園児に、その声は女騎士が【自主規制】されている時に出る声だよと言えるんだ。
「オリヴィアやめなさい。みっともないわ」
「えー。セシリアちゃんまで」
ここでまさかのセシリアちゃん参戦。援護射撃してくれて先生は嬉しいぞ。
「女騎士の掛け声はもっと凛々しくて美しいものでなければならないの。そんな間抜けな声を出したら女騎士の沽券に関わるわ」
本当に幼稚園児かと思うくらい完璧な説明だ。僕もまだまだだな。これくらいのことをさっと言ってのけないと。大人として情けないや。
「こけんってなあに?」
「お母さんが言ってたことだからわからない」
出た、お母さんが言ってたシリーズ。セシリアちゃんのお母さんは幼稚園児に向かって難しい言葉を言って容赦がないな。
「せい! やあ! はぁ! とぅ!」
オリヴィアちゃんの掛け声も大分まともになった。ありがとうセシリアちゃん。僕はキミの勇姿を忘れないよ。
「えい……やあ……」
アニータちゃんが弱気な声で剣を振るっている。声と同じく弱弱しい剣筋だ。こんなんじゃゴブリンやオークはおろか、虫も殺せないであろう。
「アニータちゃん。ちょっといいかな?」
「ひぃ!! せ、先生!? ご、ごめなさい。怒らないで……許してよぉ」
アニータちゃんが涙目になり、今でも泣き出しそうな雰囲気だ。え? 僕が悪いの? 僕まだ何もしてないんだけど。
「ご、ごめん。怖がらせるつもりじゃなかったんだ。ただ、ちょっと剣の振り方をもうちょっと直した方がいいかなって思ってね」
「わ、私ダメだったんですか……?」
正直、アニータちゃんを泣かしてしまっているようで心が痛む。けれど、これはきっちり直さないと彼女のためにならない。もし、彼女が今後、モンスターと戦う時にこのような剣術ではすぐにやられてしまうだろう。
そうなったら、アニータちゃんはモンスターに美味しく頂かれてしまう。絶対にそうはさせない。僕の教え子は誰一人として快楽堕ちさせたりしない!
「ひっぐ……えっぐ……ひぎぃいぃいい!! あへえぇえぇえぇ!! んほおおおぉぉおお」
アニータちゃんが泣き出してしまった。何なんだこの泣き声は。まるでオイタをされている時の女騎士ではないか。彼女はまともだと思っていたのに、まさか泣き声がアレだというとんでもない子だったとは。油断していた。
「アニータちゃん。落ち着いて。その泣き声はまずい。まずは泣き止んで? ね?」
「んっぐ……」
少し落ち着いたようだ。あのまま泣いていたら僕が誤解されない。幼女を泣かせてあへあへしているなんてバレたら、間違いなくこの仕事をクビになってしまうであろう。
「アニータちゃん。もう少し強く剣を振ってみようか? そしたらもっと良くなると思うよ」
出来るだけ優しく言った。すると怒られているわけじゃないと理解したのかアニータちゃんの顔が明るくなった。
「は、はい。こうですか!」
アニータちゃんの剣の振り方が格段に良くなった。少しのアドバイスでここまで改善出来るなんてこの子素質あるな。
「うん。いい調子だよ。アニータちゃん」
「は、はい! ありがとうございます」
この指導で少しだけアニータちゃんと仲良くなれた気がした。アニータちゃんはもう大丈夫かな。再びオリヴィアちゃんの方を見てみようか。
「せい! やあ! はひいぃいい! とう! はあ! んぎいいいい! せい! やあ! らめえええ! せいや! はっ! ひぎいいぃいい! あぁあああん!」
なんでオリヴィアちゃんは3の倍数と3の付く数字の時だけ女騎士になってるんだ。そんなギャグやる芸人がいたら、一発で干されるぞ。
「オリヴィアちゃん。殺気に比べたら大分良いけど、もうちょっと耐えてみようか」
「耐えるって何を?」
「変な声出すの」
「変な声ってどんな声?」
「はひぃとか、んぎぃとかだよ!」
「わかったー!」
「やあ! とう! んっ…… せい! はぁ! あっ…… ぜい! とぅ! だめっ……声出ちゃう……」
「アウトー!」
我慢させたら余計にいやらしい雰囲気が出てしまった。結局我慢は良くなかった。体にも良くないし、世間体や体裁にも良くないだろう。幼女にこんな声出させたとあっては世間から白い目で見られること間違いない。
「オリヴィア。声を押し殺しちゃダメ。女騎士はもっと堂々とした存在でなければならないの。だから、声を張り上げて」
「はーい。わかったー」
オリヴィアちゃんはセシリアちゃんの言うことは素直に聞くんだな。まるで姉妹みたいで微笑ましい。
「せいや! はあ! ンーーウホッ! ホホイ! ンホホホホイ!」
「ゴリラ!?」
堂々と我慢した結果、とんでもないメスゴリラが誕生してしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます