第二十九話 やっぱりギルドはこうでなくちゃ

その後も、日を跨ぎながら順調にダンジョンを攻略していき、

三日目でハウネの「これは新記録を目指せるかもしれません」という一言によって、徐々にダンジョンの感覚を掴んでいくという予定を大幅に変更。

若さ特有の無鉄砲さをふんだんに使って、次々と敵を薙ぎ倒していき、ついに第五層のフロアボスを撃破。

そしてダンジョンの声によって、第五層に到達したダンジョン初心者の最高記録を一週間ほど、大幅に更新したということを知らされた。


それを聞いて自分たちは。ほくほく顔でギルドの入り口に帰ってみると、そこには自分達の快報を聞いて集まってきた探索者達が集まっていて、自分たちが出てきた瞬間に胴上げを行いそのまま広場の方へとつれて行かれた。

そこで色んな人などに各地で褒めて貰い、そのまま意識が薄いまま過ごした。


...という一連の動きを、重い頭を起こしながら思い出した。


ズキズキ頭が痛む時点で二日酔いだろう、記憶も曖昧だし、もしかしたらそんな幻想を見ていたのかもしれない。


そんなことより今のこの広場の現状がとにかく酷い。綺麗に並べられていた机は乱雑になっていてそのうちいくつかは破損して、それに重なるように屈強な冒険者たちが束になりつつ地面に突っ伏せている。


その人達にフラフラになりながらも、ギルドの職員達が解毒ポーションを歩き配っていた。

近くにやってきた女性職員が手渡しでポーションを渡してきたので、それを受け取り、

ぐいっと飲み干すと頭の痛みが引いていった。どうやら二日酔いらしい。


「あっ、ありがとうござます。それにしてもすごく...惨状としか言いようがない状態なんですが、いつもこんな感じなんですか?私が言えるような立場じゃないと思いますけど」


「いえいえ、これも仕事になったんですよ。前回のギルド長が最下層のフロアボスを倒して以来ですね。

この広場で何か偉業を成した人たちを祝うという名目で、小さなパーティーを開く程度だったのが、いつの間にか騒ぐようになったんです。

まあ普段からあまり愚痴とか言えない環境下なので、私どもとしても、普段は飲めないお酒や好きなことができるので息抜きになっています。なので今としてはいい行事だなと思いますけどね。

この惨状さえどうにかなれば完璧なんでしょうけど」


ポケットから出した白いハンカチで額の汗を拭いて苦笑する職員さん。

酒などが入ってどんちゃん騒ぎをした後に、毎度この調子だとすると、相当な激務だろう。

大きな行事が起こればそれを負担するのはギルドの方々なのだ。


「もしよろしければ私も手伝いますよ、今回の主役?とはいえ全部任せっきりと言うのもなんだか申し訳ないし」


「そ、そうですか。ぜひお願いしてもいいですか?何せいつも人手が足りなくて...」


自分がそういうと手を合わせて会釈した後、ポーションを配るよう言ってきた。

いまだに眠っている全員分のポーションを配らなければならないようだ。


お酒を出している店前に大量に積まれたポーション入りの箱から、十個ほど取り出してそれを奥にいる冒険者から順に配っていく。


半数ほど終わった頃に少しずつ目を覚ます人が出てきて、後片付けの手際が早くなっていった。

中には、机の上で半裸になりながら眠っていたグレイの姿がある。手刀であいつを叩き起こしてポーションを口に突っ込んで強制的に目を覚まさせたのだ。

その時に本当に苦しかったのか、本気で反撃に食らった叩きで頭が一瞬揺れた。いまだに痛い。

流石に、今となっては扱いが悪かったなと反省はしているが、後悔はしていない。


外部からやってきた備品整理の方々が中央の魔法陣からやってきて、テーブルなどの散らばっている物の整理を始め、一定の復興が終わった後いつもの喧騒が戻ってきた。


それに準じて、ダンジョンの入場受付も再開したらしい。

一旦それぞれの部屋に戻った後、装備を整えて受付の場所に並んでいる人がちらちらと見られる。


「さて、自分もそろそろいいかな」


壊れた備品や、倒れている人がいなくなった広場を見てそう自分はつぶやいた。

そこに同じく仕事が終わったグレイが近づいてきた。


「よう、お疲れ。これ飲んどけ」


ポケットから取り出したポーションを栓を開けて渡してくる。


「?」


わからないと、眉を顰めると疲労回復用のものだと教えてくれた。

飲むと少し体が軽くなったように感じた。


「さっきからポーションポーションって、液体まみれにする気かよ。この場所に来てからこういうのばっかり飲んでる気がする」


空になった瓶を近くのテーブルに置いて近くにあった椅子に腰掛ける。

グレイも同様に向かいの椅子に腰を落ち着かせた。


「それは言っちゃダメなやつだって。そこまで嫌なら地球に戻ってエナドリでも買ってこい」


「それも飲み物な気がするな」


「ほんまや。固形の回復剤ってそう考えると今まで見たことなくね?」


「確かに。いろんな物質混じってるから、そうせざるを得なくなるとか」


「一理ある」


ついエセ関西弁が出てしまったグレイの気落ちもよくわかる。地球でもそうだがコンビニで買えるものとなると、本当に錠剤のものって結構限られていたんだな。


ふと地球でよく飲んでいたモン○ターエナジーの味を思い出す。


あー懐かしい、仕事で疲れた時はとにかくこれを飲んでからじゃないと気合が入らなかったしな。

またいつか飲みたいな。


と、そこに先程の職員さんがやってくる。


「あの、先程はありがとうございました、今日はいつもより散らばっていたので、結構負担が減って私たちも負担が減ってホッとしています」


頭を下げられたので、なんでもないように優しく相対する。


「大丈夫ですよ。行事とはいえ、苦労をかけた原因は自分たちなんですから、これぐらいはしないと」


「そう言ってくれるとありがたいです。あ、そういえばギルド長がお二人のことを呼び出していましたよ。なんでもお願いしたいことがあるらしいです」



「ギルド長が?...わかりました」


何かやらかした訳じゃ無いよな、怒らせるようなことがあったならすぐ謝ろう。


そう思い、ギルドの方に連れられギルド長がいる会議室に着いた。

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