二十四話 拠点移動
門が開き、活気に包まれた人々の熱気に加熱させられた風を身体で受け止め、人の会話する今までより大きな喧騒を耳で拾い、ふと地元から上京した時の気持ちが蘇る。
「そういえばこんな気分だったっけな、まだ若いはずなのに歳とった感じ」
「わかる。高校で上京して最初は生活に慣れなかったのとで色々とバタバタしてたからな、まあそれだけあの忙しさに体が慣れてたってことだろ」
「そういう事になるのか...今となっては昔みたいだけどこの世界に来てからまだ一ヶ月経ってないし、それだけここでの生活がそれだけ濃密だってことか」
「そうゆうこった」
馬車道や歩道がそれぞれ分別して敷かれている通りを進み、凱旋門風の通りから右回りに進み、二つ目の分かれ道を進むと、遠目から王城に少し衰えるくらいの豪華絢爛な、本題である冒険者ギルドにたどり着き、客人用にとられた駒繋ぎに止めてもらう。
「では私はここで、ご健闘をお祈りいたします」
「はい、長旅ありがとうございました、あなたも次の仕事、頑張ってくださいね」
「ありがとうございます、仕事ですので死なない程度、ですかね。ではまた会うことができたら」
手を差し伸ばしてきたので、それに応え。一度力強く振るとすぐに馬車の積荷を確認しに行った。
身長の三倍ほどある扉を開き中を覗いてみると、まず目に入ったのは冒険者ギルドというより
ショッピングモールのフードコートのような、バーや料理屋、小さな屋台などが周りを取り囲み、その内側であるような場所であった。その一角に受付が所狭しと店たちに挟まれている。
「えっとすみません、ギルド拠点移動の申請にきたのですが」
バックから王都誘致のギルドマスターの証明書が入った用紙を取り出し提出する。
「では拝見いたしますね...」
そう言って用紙を取り出した後、奥の方に消えていく。そして十分後、近くの長椅子で隙を潰していると、ギルド内の拡声器で放送がなった。
「えー、今日移転の申請を出している方々は階段を上って左側の部屋でお待ちください」
呼ばれたので直ぐに向かうと、自分たち以外にも合計で三十人程が一緒に向かっている。
中でも隣で談笑しながら進むパーティーが仲が仲睦まじいように見えて、少し気になった。
三人パーティーで、男1女2比率で、それぞれがの二十歳くらいの見た目をしている。それにしても距離が近いような気がするが。
意識だけをずっとそちらに向けているつもりが、いつの間にか視線がそちらに向いていたのか、その中で一番背の小さい水色の髪の子が、男の人の裾を引っ張り、こちらに寄ってきた。
「あの...何か?」
「あ、すみません。仲がとても良さそうに見えたので...つい見てしまいました。三人方は元々知り合いなのですか?」
そう問うと、水色の髪の子は背に隠れてしまった。もう一人の子は少し笑っていたのを表情を消して、鋭い目を向けこちらを見ている。「楽しい会話中に何」という視線...死線?が向けられた。
「そうですか、ならいいんですが。はい、あなたのいう通り俺たちは北の街の幼馴染みなんです、多分理由はほぼ同じだと思いますが、このギルドに呼ばれてですね」
「やっぱり自分たちと同じだったのたのか、一緒に頑張っていきましょうよ」
「ええ」
ほぼ二十歳ぐらいの見た目で、こちらよりは対照的に大人びている様な反応をしてくる。自分の方が年上の筈なのに、少しファンタジーを感じて舞い上がってしまった、少し抑えよう。
冒険者となると、その歴が短い自分が言うのもなんだが、結構粗雑な人が多いと思っていた。
集合がかかった部屋とわかりやすく看板が立てかけられた部屋に入る。中は昇降板が真ん中にあり、そこにさっきの受付の人が立っていた。
「では、本部へ転移いたしますので昇降板の円内に止まってください」
全員が乗ったのを確認すると、部屋のドアが閉まり一瞬辺りが白くなったと感じると、建物内なのにとても大きい平原のような場所に転移した。目の前にはさっき見た同じ見た目のギルドが立っていた、先ほどと違い少し小さめではあるが。
中は円形で屋根が取っ払っており、街で見た冒険者とは比べ物にならないほど人が多く、装備の質も高い。
一つの壁にびっしりと討伐依頼が張り出されており、大半がパーティーごとに吟味しながら作戦を話し合っている。
「それでは各パーティーの方々はリーダーの方が証明書を持って受付に並んでください、そこでダンジョン探索許可証と、拠点移動の証明書を発行いたします」
説明された窓口に並び、許可証を提出すると顔を二、三度確認すると魔晶石という鑑定アイテムを持って手をかざすよう言われた。
自分と修哉が終わった後にどちらの時もとても驚いた顔をされたが、曰く、神様から貰ったレアスキルが中でも、確率を直接変化させる本当にレアなものだったそうで、それをうまく使うことが出来ればすぐに上位勢にも入れるとの事。
自分のスキルに関しては、利点も大きいが冷静に考えてみれば、欠点も大きすぎるような気がしなくもない。
その次もどんどんとパーティーメンバーの少ないチームから鑑定を始め、書記係の人が書き終わるまで少しの時間を要した。これを使って、依頼の方向性でも決めるのだろうか。
その後、銀の光の当て方によっては虹色に光る似たようなプレートを受け取ると、自分のステータスが浮かび上がる。それと今まで持っていたものを交換し、ダンジョンにもし潜る際の三つの諸注意を聞いた後に戻る。
一つ、ダンジョン内は屋外のフィールドと違い、素材が
その為定期的にダンジョン外で活動をし、素材を斡旋すること。
二つ、最初の一週間は体を慣らせる為、1から5層の探検を認めるがそれ以降は6層以上の階層に潜ること。
上記を違反した際には罰金、場合によっては本部の誘致自体を取り消しの可能性もある。
一つ目、二つ目の理由はわかる。支部がこの街にはあるとは言え、それだけでは生活が回らないからだろう。しかし三つ目が少し謎だ。
三つ、愚か者の
もし何かしらの理由で潜った際には、罰則こそ無いが、情報を何かしら持ち帰ること。
いかにも色々とやばそうな名前のダンジョン名...何故探索自体を禁じているのかも謎だし、それを誰かに依頼するわけでもない。どうしてかを受付の方に質問しても、
「規則ですから」としか返してもらえなかった。なんでだ?
少し頭を使いながら修哉が待っている席に戻る。なぜか昼間からエールを頼んでいた。
何飲んでんだか。
「おいやめとけって、何、昼間から酒飲んでんだ」
「美味しいから仕方ねえ、すみませんもう一杯!」
「あいよー!」との声と共にどかっと机に二杯のエールが置かれる。「いえ、自分はいらないのですが...」と言おうとしたが直ぐに厨房に戻っていってしまった為、仕方なく口に付ける。...うまい。
「そういえば修哉の貰ったスキルってなんだよ、確認もした事なかったな」
「そうだったっけな、ほらよ」
彼のステータスを下にスクロールしていくと【スキル】といく項目が見つかった。
【
自分が自分以外をを守ると判断される行動を取った時、瞬発力、そして防御力に大補正、攻撃を受けた際に一定以上のダメージを受けても気絶しにくくなる。
【-------】
--------------
『称号』
『女神の加護』
『勇者』
スキル枠が一つ非表記という事は、これがこの世界に生まれた時にある本来のスキルで、現れている方が
「称号は...まあそのまんまとして、最後の守護神...なんだこの厨二病みたいなの、追加効果、ほぼチートじゃねーか。スピード元々高かっただろ?」
「結構DEX値は高かったはずだぞ、厨二病みたいな名前なのは否定しないけどカッケーだろうが。そう言う健斗はどうなんだよ」
「見せないといけないかやっぱり」
「勿論だぜ」
と言って自分のスキル欄を再度確認してみると、やはり人に見せるようなネーミングでないスキル名が表示されている。そっとバックの中に仕舞った。
「どうした?ほらさっさと見せろって」
「...やっぱ無しで」
「さてはお前も厨二的な名前か、でもよ、別にそこまで隠さなくても結局いつかバレると思うぞ、パーティー組む時に自己紹介なりでバレるだろうしさ」
「まあ確かに。ううむ...ほらよ」
迷った結果渡す事とした、言われたことが正論すぎて納得するほかなかったからである。
表示されたものはこう記されていた。
【スキル】
【フィックルダイス(戒)】
ダイスの目が、
【-------】
--------------
『称号』
『女神の加護』
『勇者』
一通り目を通すと、予想よりもあまり面白くなかったのか肩を竦める。
「うーん、そこまで厨二病じゃなくないか?過剰反応しすぎだって。しかし何だ戒って」
「仕方ないだろ、お前みたいにそういうのに慣れてる訳じゃないんだよ、程度がわかないんだからさ。戒については全くわからん、これも少し悩んでた理由でもあるんだけどさ」
お酒の手が止まり、考えるが全く思いつかなかったのか残っていたものを全て飲み干す。
「...まあいいや、分からん。とにかく宿探しに行こうぜ」
「さっき説明聞いてなかったのか?」
「何がよ」
「ほら、街のギルドに自分たちの泊まれるスペースがあるって話」
あの無駄に大きいと思っていた本部も、大半が住居スペースが埋めているというのだから驚きだ。喧騒で夜に寝ることができなくなることが心配事である。
「まじか、寝てたからわかんね」
「分かったわかったいつも通りで安心したわ、とにかく行こうぜ」
確認が終わると、各個それぞれ移動を始めたので自分たちも部屋割りを確認するために昇降版で、元のギルドの方へ戻って行く。
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