第十九話 事後と変化
自分が目を覚まし、まず瞳が映したのは、白色の屋根で横から入る光に照らされたベットの上だ、
恐らく病室だろう。
身体を起こし、右の窓から差し込む太陽の光に目をしかめながら、自分が置かれている状況を再度確認し、窓枠を超えて、町の喧騒が壁を越えて耳に入る、昨日までの熱がまだ覚めていないのだろうか。
「ここは...病院だろうな、そっか、あのとき自分はそのまま意識を失って...」
そうして思い出すのは、朧げな意識の中で消失していく異形と、それと戦っているあの老人。
「本当に何者なんだよ、いや、助かっただけで十分かあの状況だし...」
そう思案に耽っていると、病室の木製のドアが開き、その老人が手元サイズの小さな水色の子竜を抱えた状態で、朗らかな笑みを浮かべながら入ってきた。
「気がついたかミレイよ、そしてお主も、目が覚めたようじゃな、もうすぐ昼すぎになるぞ、
若いのというのはよくこの時間まで寝れるもんじゃわい。姫さんはまだ、夢の世界か?」
「どうもっす、爺さんも欠かさず毎日ここに来てくれるんで、結構毎日暇してるんでしょうに」
「何をいうかこの若造は」
二言、言葉を交わし、それを楽しそうにしているので自分が目を覚ます間に、交流でも深めていたのだろう、そうすると自分はそれ以上に意識がなかったことになるし、先輩もそれ以上だと言える。
「あの、すみませんあれから自分どれくらい寝ていたんですかね...」
「そうじゃなぁ、ざっと10日は経っているじゃろうな」
10日か...結構寝ていたんだな。
「そういや、今の状態でわかるとは思っておるが、
全て終わったぞ。全員無事じゃ、これだけやれば同じ奴がまた出てくることはすぐには無い、
儂が保障するぞ」
「そうですか、良かった...」
胸を撫で下ろすと共に、ここに居ない先輩の懸念が浮かび上がって来る。
「そう言えば先輩の姿が見当たらないんですよね、何処にいるんでしょうか」
「大丈夫だって健斗、ほら、先輩あんなに気持ちよさそうに寝ているじゃん」
自分の対面側に設置されている自分と同じようなベットで、全身包帯巻きのグレイが。シャニの方へ指を指し、それに合わせカーテンを捲ると、首を締め付けられた苦しい表情ではなく、心地よく日向ぼっこして、そのまま寝入ったような朗らかな表情で眠っている。
「こら、そこまで心配せんでよいと言ったでは無いか。とにかく、皆が無事で何より何より」
「この節は僕たちというよりあの時いた自分たち全ての命の恩人です、本当にありがとうございました。」
「そう褒められるようなことはしておらん、なぜなら、謝って置くことおいうのが一つあってだよ」
そういうと腰にぶら下げた袋から、飴サイズの白色の兵糧丸を取り出す。
「この子は、ただの窒息で死にかけていたというわけではなく、首を締め付けられている際に、確実に殺すためか、あやつの瘴気が流し込まされておってな、除瘴用のこれ薬品を飲ませるしか生き残れんと判断した。無事だとは言ったが全部は守り切れなかった。先に謝っておく、本当にすまんかった」
「...その事について謝るということは、やっぱり看過できない副作用とかがあるってことでしょうか、その内容によっては、あなたを騎士たちに突き出さないといけなくなるのですが」
「爺さん、それは初めて聞いたぞ?先輩は無事だったんじゃなかったのか?」
そう二人が問うと、肩を落とした後、深く腰を折り、その後、真剣な眼差しで髪を捲り上げ、
「...!?あなたは魔族の方だったんですか」
その姿を見て一瞬身体が反応を示し、緊張が部屋に伝わっていく。
グレイは動かない体を必死に動かそうとしているが、まだ怪我が痛むのかベットから背が離れた後、そのまま倒れてしまう。
「いや正確には違う。話すと長くなるが、儂も一度だけ、異形と以前に戦ったことがあってだな、その時に一緒に旅をしておった竜の血を吸ったのじゃよ。駆けつけた時に来た竜がいたじゃろ?
そやつじゃ。」
「...え、そうなるとこの子は?」
「まあまあ、話はまだ続いておる、ちょいと待たんか」
手元の丸まって眠っている子竜を撫でながら続ける。
「竜の血は状態異常を無効化するというよりかは、体を元の健康状態に戻す効果があると言い伝えられておって、藁にもすがる気持ちで、当時、儂は運良く地面に溜まった血を何とか口にするとすぐに活力が戻ってきたという、過去があったんじゃよ。つまりこの子をおぬしらに償いとして
詫びと言ってはなんだが小竜をプレゼントすると言う事じゃ、あやつの子供なのでな、成長すれば頼みにもなると思うぞ」
すると目を覚ました子竜が目を覚まし、周りを見渡すとシャニを視界に入れた途端、その下に
羽ばたき近くまで寄ると、その顔を舐めてまた丸まり眠ってしまった。
「この子は竜に好かれる体質なのかの、もうこんなに懐いておるわ」
「シャニです、彼女の名は。一応一つ年上なんですよ。その話だとこの子の世話も私たちが引き受けないといけなくなるのでは?」
「いやその必要はない、普段は自由に生きておって、主人と決めた者が必要としているときや、
名前を決めて呼ぶと、どんな距離でも飛んでくる聡い子たちなんじゃ。経験談なのでな、信用できなくて疑っているのなら、今度見せてやろう」
「信用...状況で確率変動...50以下成功...18、成功」
「いえ、大丈夫です。ひとまず彼女の健康が確認できただけでも僥倖もんなので」
ダイスロールが言う限り多分これは言いくるめじゃ無いんだろうな。善意じゃなかったとすると、自分たちを助けるメリットが見つからないし...
「そこでだ、提案となるが儂も老い先短いんでな、そろそろ後継者を見つけにゃならん。そこで、この子を弟子として修行として連れていっても良いか?魔法の適性がこの子にはありそうな予感がしたのじゃよ、他の奴らはダメじゃ、魔力量が少なすぎる」
「そう...ですか、別にそこまでして貰わなくても」
「そうか、ならこう言ったなら分かるかの」
そういうとローブの内側から取り出した冒険者カードを取り出し、こちらに投げ渡す。
それは太陽に照らされ、虹色に光っていた。
「S級冒険者『
「カヒュ...」
そう名乗った後に息を漏らし倒れたのは、部屋に入ってこようとした看護士の方だった。
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