第十八話 異形との邂逅

目の前にいる、黒いもやに隠された、何とも捉えられる不気味な物体を体の動くままに力の限り切り裂くが、周りに浮くその靄がしのぎの接触部分だけ実体化し、そのまま弾き飛ばされる。


「縺?縺九i辟。鬧?□縺ィ險?縺」縺溘?縺壹□」


その言葉とともに掌を横に振ると同時に先ほど感じた旨を絞めつかられるような恐怖感が発せられ脂汗が噴きだし、その場に膝をつく。


「SAN値チェック...2/2D4...75以下失敗...14、失敗...2D4...02、残SAN対抗値73」


「なん...の...これしき!」


闘志を奮い立たせて右足に力を込めると、それを見たそいつが逆手を同じように振るい、暴風を出す。


そのまま吹き飛ぶと思い身構えるが、ソウレが頭上から大楯をそいつに叩きつけ、その大楯をもう一度同時に登場したヌイルがその後に剣を突き刺すと、ガラスが大きく割れた音とともに周りの瘴気が一気になくなり、後ろに一定距離離れると少し苦しそうに肩で息をする。


そばにいたグレイがその景色を見つめると、痛々しい体を持ち上げシャニを戦いの邪魔にならないよう優しく泉方面へ引っ張っていくが、力が入らないのかそのままそこに倒れる。


「...おい、無理はするな!それ以上血を流したら、死ぬぞ!」


そばに駆け寄ったカルナが、地面と顔からぬつからないよう支えると、仰向けに体を寝かせ特に出血が目立つ横腹部に手をかざし、治療魔法を発動させる。


「低級治療魔法ロール...75以下成功...04...大成功クリティカル...効果として、重傷状態を解除し、1D5+2の回復ロール...02...04、回復」


傷口が少しづつ塞がっていき出血も収まっていくと、苦しそうな汗をにじませた表情から、

いつも通りに。そして目の前にいる異形を睨め付ける。


治療している間に自分は騎士たちがどんどん参戦している風景を背後に、シャニの元へ駆け寄り安全な場所へ移動させる。グレイの状況が気にはなるが、その前に、隣で意識がないシャニが優先だ。


「先輩!呑気に寝ている場合じゃ無いですよ!起きてください!」


怪我を負っていないことを確認した後、肩を揺さぶって起こそうとするが、一向に寝息を立てている状態から覚めることはない。


「...先輩は多分、魔力が切れて意識を失っているんだ」

「どうしてそう判るわかるんだ?」

「ラノベで見た感じだといつもこうなんだよ。実際体験したわけじゃ無いし、しかもそれしか判断材料が無いから恐らくの範囲な。要するに、お前が助けを呼びにいっている間に、こっちもただサボってたわけじゃ無いってことだ」

「...よくわからんが、そっか、...よし、修哉、先輩を守る動きをしつつ、一緒にあのバケモン倒すぞ」

「言われなくてもそのつもりだっての!」



「戦闘フェーズに移行します...ラウンド1、スタート」



「いくぞ!」

「おう!」


掛け声と同時に自分は一気に懐へ、そして修哉は正面から体を90度回転させて、その反動とともに殴りかかる。


こちらがシャニとグレイの状況を確認している間も、騎士たちが追撃してくれていたおかげで、

異形から発せられている瘴気が復活する暇を与えず直接ダメージが入る。


「刀使用、60以下成功...49成功、1D8+1D4...8ダメージ...続いてグレイのこぶし80以下成功

...27成功。遠心力で+1ダメージ1D3+1D6+1...6ダメージ」


連続で腹部と顔面に接触しこぶしで脳が震えたのか一瞬よろけ、

その後に騎士団たちが左足、右腕、胴体と切りつけ吹っ飛ばした後、そのまま地面に倒れる。


「これで!トドメだ!」


自分が最後の一手と上方に剣を振り上げると同時に、異形が笑みを浮かべると、切り口から水栓を完全に開放した蛇口のように吹き出した瘴気が、辺り一帯を包み込み円形にハリケーンを発生させ、各々の体がそこらの木に叩きつけられる。。


「ボハァッ!...うっ...」

「全体ダメージロール固定、1D10...2ダメージ以上固定、防具効果で減少値2...5ダメージ

強制CONロール発生...59」


正面から受けた風で、腹の空気が一気に締め出されるような衝撃を全員が受け、隊長と自分たち二人以外は空に吹き飛ばされたせいか地面に落ちた後びくとも動かない。


なんとも無いようにソイツは宙に少し浮かぶと、余っている瘴気が、血の通っていない断面に集まったかと思えばすぐに切れた筈の患部が元に戻って行き、そのまま少し経つと、それ以外の傷も少しずつ元に戻って行っている。



「2ラウンド開始...」



「マジかよ...あんだけダメージ与えたあとに患部ごと復活していくとかチートかよ...クッソ、

体が言うことを聞かねえ。」


腕に力を集中させ、なんとか立ち上がろうと踏ん張るが、腰が地面に固定されているかのようにびくとも反応しない。腰が抜けてしまっているのだろう。

グレイも同様に踏ん張っているが、こちらは肩が外れたのか右腕が一切力なく垂れている状態だ。


自分たちが動けないことを確認した後、そのままシャニの眠っていう場所まで向かっていくと、

直接手を触れず首を持ち上げ、締め付ける動作を行うとシャニの体が縦に浮き首が締め付けられ行きができないのか苦しそうな表情を見せ、声が漏れる。


「う...ぐ...ぅぁ」

「繧?▲縺ィ1莠コ逶ョ縺ィ險?縺?園縺九?∽ケ?@縺カ繧翫↓螟悶↓蜃コ縺ヲ縺ソ繧後?邨先ァ玖?縺碁?縺」縺ヲ縺?k繧ゅ?縺?...荵?@縺カ繧翫?諢溯ァヲ縺?..縺輔※縲∵掠縺上%縺?▽繧貞ァ区忰縺励※縲∵ョ九j繧ょ酔讒倥↓騾√▲縺ヲ繧?i縺ュ縺ー...」


そう何かを呟くと、腕に力を込め、確実に殺そうと首を鷲掴みにする。


その苦しみで意識が戻ったのか、目をカッと開き、見えない腕を必死に叩き、足を必死に動かし逃げようと必死に抵抗するが、STR対抗が発生するまでもなく、その場に力なく項垂れびくともしなくなった。


「「先輩!」」


そう叫んではみるが、もう反応はなく体が少し痙攣し始めている。

その抜け殻と化す寸前のシャニの体を重力に任せて落とし、その表情を見ると泡を拭いている。


目前処刑が終わるとその次に動けない自分たちの方に目を向ければ、少しずつこちらに寄ってきて片方の手で水球を発生させながら笑みを深める。


「...まさか、絞殺の次は溺死!い...いやだ!」

「SAN値チェック...4/1D8...73以下失敗...86、成功...減少04、残SAN抵抗値69」


しかし体はピクピク動くだけで活動をしない。


「グルオァァァァァァァ!!!!!」


そして目の前までやってくると、そんな叫び声と共に横方面から、シャニに懐いていたあの竜が、咆哮ブレスを撃ち、異形はその攻撃を危険と判断したのか、姿を上空に転移させその竜を敵対視し、空中戦を開始し始めた。


目の前から死神が消えたことに安堵し、力を抜いてそのままもたれかかると同時に、

どこかで見かけたような姿をした、黒髪に白髪の混じった紅いローブを纏った老人が現れる。


「...君の名はミレイだと言ったか」

「あ、あなたは...?」


未だに、今にも死ぬかもしれないという恐怖感が抜けない体でそう問うと、力強く、そして老人らしい朗らかな笑みを浮かべた。


「全く一緒に風呂に浸かった仲ではないか。ワシの名は...時間が足りなさそうじゃな、後でするとしよう」


意識を失っている仲間たちを片目に、そしてをブレスを受けた状態で怪我を負っているが平然と竜と正面からぶつかり合って、力も全然衰えていないのか、その波動が定期的に風となってこちら側まで届いて髪を揺らす。


そう言うと合掌し、離していくと、バチバチと雷が発生していき、辺りを帯電させていく。

そして完全に発動し終わったのか火災が止まり、その代わりに大気中に溜まった雷が摩擦によって小石などが浮かび上がり、そのままゆっくりと弾丸型に鋭利に鋭くなり、回転を始める。


「さて、彼奴らが呼び出した神話生物...欠損部位も含めて自動治癒となると、物理攻撃は効かなそうじゃな...一度撃ちどれ程の耐久力か、根気勝負と行こうでは無いか」


するとセーフティーが外れたマシンガンのように先ほどの岩が上空の目標に向かって運動エネルギーを解放する。


「縲後≧縲√ざ繧ゥ繧「繧。繧。繧。??シ√∪縺??√∪縺?縺??√が繝弱Ξ?√%繧後□縺代〒縺ッ邨ゅi繧難シ√ヤ繧ョ繧ウ繧ス繝擾シ√?」


「...次は与えん、散々お主らには辛酸を舐めさせられたのでな、一生、元の世界で苦しむといい... 逾槭∈縺ョ髴?⊃讓ケ縺壹▽辷?n譴怜。櫁ヲ∝。」


「縺?..縺昴s縺ェ繧ゅ?縺ッ蟄伜惠縺吶k繝上ぜ縺後↑縺?謌代?縺セ縺?辟シ螟ア縺ッ縺帙s縺橸シ√>縺セ縺?縺ォ螂醍エ??縺ョ雋?縺」縺ヲ縺翫k繧薙□螟ァ繧ク繝ァ繧「mc縺翫≠繧ゅ≠縺ゅ♀j縺昴>n!!?」


異形が話している内容を解読することができるのか、同じような言語を介すると、その異形はこれ以上ない慌てようで、騒ぎ命を乞う姿を見せる。


下方から目にも止まらぬ速さで飛び出してきたそれに反応することはできず、それを体に直接受けた異形は、初撃しょげきは弾く音と同時に動き始めていたが、第二段、第三段と続々生成されていくそれに、耐える音ができずの土埃とともに姿を消した。


「...」

「...すげ...ぇ」


開いた口が塞がらないとはこの事だろう、目の前で起こっているとは到底思えない凄まじい光景が目の前で起こると、人というものは口どころか瞬きも忘れるらしい。


パラパラと地面に土が起こる音と、その人が話し始めたのは同時だ。


「ふむ、結構な時間と共にこやつらも落ちぶれたものじゃな、他愛もない」

「終わっ...たのか?」


その光景を目にした自分たちは、その内心とともに体の疲労とピンと張っている心の線が一気に緩んだのかそのまま意識を手放した。

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