第十七話 到着、そして... 

「ドガァアアアアアア...!」


「「———ッ!!」」


背後での爆発音と同時に襲いかかってきた爆風に、2人は咄嗟に腕を顔の前に組み、守る態勢に入るが、そのまま全身を一瞬で強く飛ばされたかのような衝撃とともに、泉の方に吹き飛ばされ、運よく半周して背中から入った二人は、大きな水しぶきを上げる。


「ぷっはぁ!なに!?」


水面から顔を出すと、反対側にいた吹き飛ばされた動物たちや、どこから現れたか分からない魔獣などが、いろんな奇声を発しながら、爆発した反対側...

つまり、町の方面に向かって走りだしていた。


「マズい...!っ」

「ごハァ!!ゴホッ、ゴホッ...ちょっと待ってください!」


一瞬でこの状況が危険だと判断したシャニは、水際に急いで行こうとするが、

水面に顔を出した、自分よりも深いところに吹き飛ばされたグレイがそれを止める。


「なんで!これじゃ街が危ないって、分かるでしょ!?」


必死の形相でグレイの発したその言葉を咎めるシャニ、それを平泳ぎで近寄りながら説明する


「今俺たちがあいつらに追いつこうとしたところで絶対に追いつきませんし、それなら健斗が連れてきてくれている援軍のところに行って、助力したほうがいいですって」

「それはそうだけど...そうだとあの暴走が伝えるのが遅くなるじゃん!

それじゃ遅いんだって!」

「...わかりました、じゃあ信号弾を打ち上げましょう...運頼みにはなりますが」

「...分かったやってみる」


信号銃を発射する手の形で空に向かって必死に願うと、指先から黄色の小さな光がフレアのように、空に撃ち上がっていく


「信号球型光弾魔法の実行...初期値45以下成功...07成功...」


すると糸が切れたかのように、シャニが横にふらっと倒れる。

それをすかさずグレイが溺れないよう腕で支えると水際までなんとか運んでいくと、寝息を立てている。


「これは...魔力切れってやつか?...小説だと大体なんか倒れたりしてるし、

そうだよな?」


そう仮説を立て、さっきシャニが言っていた動物の暴走のことについてまた考える。


「信号弾を打ち上げたとは言え、ここに二人でいるのもあれだな...あいつの元に戻るか」


そう結論付けたグレイは、森の出口方向にシャニを背負いながら向かっていく。


その背後を形が不定形なモノが見つめ、狂ったような笑みを浮かべていると気が付かず...


______________________________


ミレイたち一行は森林の手前側に馬を停め、暴走した野生動物たちの群れスタンピートから真っ向から対抗するのを防ぐ為、少し森のそばに寄り、隊列を組み中に入っていく。


肩ほどまでのある大楯を持って、駆け足で進む赤髪のソウレ、長い癖毛を後ろに束ねたヌイルが

その後に続き、その横に自分がいる。この三人が前衛。

後衛は連絡係の比較的軽装な、茶髪でショートボウの狩人風なファエ、そして隊長のカルナ、そしてライネルが後方の警戒を担当している。


「ッチ!何体切れば奥に着くんだ?」

「大丈夫だ!第一段はそろそろ終わりそうだぞ」


横側から入ったとはいえ元々の獣の絶対数が多いので、はぐれた個体だけでもスタンピートとなると、その発生場所となる現場に向かうだけだとしても、一々襲いかかってくる動物たちの対処だけで足を止める必要がある。

チラッと振り返れば所々に死骸が落ちているので、押して知るべしだ。


「隊長!一旦私は本部にこの状況を報告するべきだと判断したのですがどうでしょう!」

「いや、スタンピートだけだとするならば本部の中隊長以上の人たちが出張ってくれるから大丈夫だ。しかし今回のやつは魔人族が関わっている可能性があるからな、見かけたら脇目もふらず急いでくれ」

「...了解です」


群れの勢いが少し減ってきたところで余裕ができたので、剣についた血を振り落とす。

それぞれ肩のツボを自主的に押す者や、手を伸ばす人がいる。


しかし、緊張感は周りの人の瞳を見るかぎり少しばかりも抜いてはおらず剣呑な雰囲気が漂っている。やはり本場の人の集中力は恐ろしい。他人事みたいに感じるけれど、自分もその場にいることを忘れないようにしないと...


前進していくと、少し抉れた地面と異様に吹き飛んだ木々たちの散らばった広場が、目に入る。


「シャニ!グレイ!」


着くなり隊列の中から飛び出し周辺を駆け回りながら、二人を呼びながら捜索する。


騎士の方たちも自分と同じように探し回ってくれたが、10分経っても見つからないため、内心大荒れで半分狂乱しているかのように続ける。


「...ミレイ、二人はここにいないじゃ無いと思われる、念のため湖の中も捜索したが、遺体も見つからないとすると、森から抜け出し、安全な場所に向かっていると思われる。現状から判断するとな」


その肩を後ろ側から掴み、落ち着かせるようにそう自分に言い聞かすライネル。

その言葉を聞いて一旦頭の中で咀嚼すると、少しずつ心にゆとりが復活していくのがわかる。


「...そう...ですね、ありがとうございます。取り乱してしまいました」

「いや大丈夫だ。自分の大切な人物が命の危機にあると感じると我を忘れるのは、仕方のないことだ。しかし戦場となると少し落ち着いた方がいい、冒険者となってもそこだけは慣れないところがあるからな」

「そう言うってことはライネルさんにもそんな時代が?」


見た目だけで言えば自分と同じにも見えないこともない彼だが、聞いてみると12歳ごろにその稼業に少し関わったことがあるらしい。


「と言ってもそこまで本気で肩入れしてた訳じゃなく、ほんの数年で辞めてしまったけどな。

まあこう偉そうに言ってるが要するに気をつけろってことだ、命を掛けてするって意味じゃ、一緒だからな」

「はい、心に留めておきます」


すると、覇気が体の中を突き通るような感覚に胸を締め付けられ、死神が鎌をかけたような威圧感が森の出口側から感じる。


「SAN値チェック判定開始...0/1D3...75以下失敗...89...成功、減少なし」


「ッ!」

「——そ、総員一旦集まれ!今直ぐに現場に確認しにいくぞ!ミレイ殿の連れたちがいるかも知らん、敵性存在の可能性大!ファエ!職務を全うしろ!」


「「「「了解!」」」」


各地に散らばっていた騎士たちがすぐ様、カルナの下に集合し幾度か頷き合った後、それぞれ臨戦態勢を整え、気配がした方向を向く。


「二人とも、無事でいてくれよ...?」


自分が最初にここにきたときの記憶を元に彼らを先導していくと、そこには血だらけで背後にシャニを守って動くグレイの姿を目に入れることになる。


「縲御ク狗ュ臥函迚ゥ縺梧?縺ォ讌ッ遯√¥縺ィ縺ッ霄ォ縺ョ遞九r蠑√∴繧阪?∝乾遲臥ィョ縲√♀蜑阪?蜷碁。槭?蜈医↓蜃ヲ蛻?☆繧九°繧牙ー代@縺ー縺九j蠕?▲縺ヲ縺?k縺瑚憶縺??√☆縺舌↓蜷後§蝣エ謇?縺ォ騾√▲縺ヲ繧?k縺九i縺ェ縲」


「ミレイ!待てっ!!」


目の前が黒く染まって、自分がどこにいるか分からなくなった。その言葉がどこかで聞こえるがどうでもいい。二人の状況を見て、体が勝手に動き始めたんだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る