第八話  合流&これからの異世界生活について

これからは


健斗 →『ミレイ』 修哉 → 『グレイ』 布津那 → 『シャニ』


のように、本人たちは日本名で呼び合いますが、この世界の人達やダイスのアナウンス

はキャラ名で呼びますので混在しないよう、よろしくお願いします。


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二人が子供達を救出し街に連れ帰ってくる頃、ミレイは先ほど購入した回復薬を手に、

宿が立っている第一地区の中央に立っている噴水公園で、噴水に腰をかけていた。


「...あいつら一体どこにいるんだよ」


項垂れ肩をガックリと落とす。

かれこれ二時間、二人がいると思っている第一地区を探しているのだが、一向に二人の姿が見当たらない為、諦めの境地でボーッとしている所だ。


まあ、探しても二人は現在、街の外にいるため、探したところで骨折り損のくたびれ儲けになるだけになるだけだが、そんな事は知る由もない。


「それにしても、この広場って結構賑わうところなんだなぁ、異世界なのに...」


そう、ミレイがいるこの広場は住宅街の中央にある。


この街のシステムとしては、トップや政治のことにしては中世ヨーロッパのように

貴族と王族が占め、街の保安、街の外壁、つまり外の平原や、他の人間達が占める国に通じる街道は、その王族貴族が保有する騎士団によって守られている。


しかしその道中の安全にも程度というものがあり、流石に個人での家族旅行などに対するリソースや、街の外まで遊びに行った人の安全を守ることはできず、商人などが荷物などを襲われないようにする程度だ。


だからといって、街に娯楽というものがなければすぐにでも子供たちの不満が募り、国の大事な資源である人材まで失ってしまい本末転倒。

だからこそ、この世界が魔王が発生し、ダイスの目が狂い始めて、他の種族まで巻き込んだ戦乱の時代であった500年ほど前の時代から、区画整理という意味も含めて住民に快適な生活を取り入れようと努力したらしい。


この情報は、今も天界から見ているあの女神さんからだ、今は小康状態なんだと。


「それにしては平和ボケしてそうな雰囲気だなここ...。」


現在もミレイの周りは、7,8歳くらいの子供たちが元気に走り回っており、その家族やお年寄りの人達が簡素な木製の屋根付きベンチなところに座りながら日を浴びて、子供たちの姿が走り回っている、そんな光景を微笑ましく見ている。


やけに現代っぽいところがあるから驚かされるんだよな...

まぁダイスで全ての結果が分かれるから、魔法とかの異世界っぽいところも含めて面白くはあるし、仕事歴が短かったとしてもダイス値が良ければなんとかなるのか...


現実世界では、ほんの少しの才能と努力必要で、大学で勉学に力を入れ、努力した結果、

大手会社の営業まで上り詰めた彼が、そんなダイスで全ての結果が変わるこの世界のルールに少し不平さを募らせる。


「まぁ、考えても無駄だよな...」


子供の体力について行けなくなった父さんのように、ふと考えては自己完結するのを繰り返していくうちに、暖かい陽気と気温に少しずつ眠気を誘われていく...


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「...斗... 健斗!起きて!」


誰かに肩を揺すぶられ目蓋を持ち上げる。

そこに映ったのは額に汗がついている修也と、何か疲れ気味な布津那だ。

ふと周りを見てみるともう太陽は沈みかけている、そんな時間まで寝ていたのか


「...やっと来たんですか先輩...待ってたんですよ...」


欠伸をしながら、眠気が残ってそうな顔で見上げる


「待ってたって...寝てただけじゃん。」


肩を竦め、仕方ないというような、少し申し訳なさも入った苦笑を浮かべる


「で、こんな時間まで宿探ししてたわけじゃないですよね」


咎めるような言い方をすると、二人は少しビクッと体を震わせ、修哉は明後日の方向を布シャニは下手な口笛を吹く。


「誤魔化すの下手すぎっすよ二人とも...で?何があったんです?」


子供たちをなんとか詰所に預けることにすることで、あの誘拐事件は事なきを得たが、

その肝心な子供達が一向に二人から離れようとせず、時間を浪費してしまい、宿探し自体はほぼ出来ていない。


そんな二人の行動に、何かしら理由があって目的が達成できていない、

というふうに解釈したミレイは、肩は竦めるがその原因となった事によっては仕方ないと思うことにした。

口を開いたのはグレイだ。


「お前がギルドから出て、その後俺たちもすぐ宿探しに出たんだけどな。

第二区画から移動する時に、人混みのせいで路地裏まで流されてな?ちょっと迷ちまったんだよ」


その発言に眉を少し下げ、えーー...という言葉が聞こえそうな表情をするが、その後の人攫いの話を始めると、困惑と心配が混じったような反応を見せる。


「それで、私がその子供達の手錠を外して、そのまま修哉が乗馬でなんとか街まで戻ってきたっていうことが起こったんだ」


最後まで説明すると健斗は「そっか」と言葉を漏らす。

考える素振りを見せているのは、その誘拐された子供たちのことを憂慮してか、

はたまた変なことに首を突っ込んでしまったことか。


「...とりあえず子供たちは無事ってことでいいんですね?」


「ああ、それだけは俺が保証する」


「なら良かった...」


ホッとため息を漏らし胸を撫で下ろす


「じゃあ今日は宿をとって、明日は安息日にしますか」


「賛成、初日から熊型のやつを狩っては、人攫いの問題解決だわで、もう満身創痍!

腹一杯食って惰眠を貪りてーよ」


「本当にね、修哉は欲望には忠実だけど、そういうとこだけは責任感強いもんね」


「そういうとこってどういう事っすよ...」


クスクス口に手を当てて微笑むシャニ、彼女も言葉にこそ出してはいないが、

慣れない新天地で、初日からこうハードな事などがあったせいで、表情に疲れが浮かんでいる。

思いっきりその態度を表に出さないのは、年長者としての意地だろうか。


「さっさと、宿見つけましょうか」


「...そういえばお前ってなんか誰かの役に立ってたっけ?」


思い出したかのようにそう問うグレイ、

もちろん、ミレイは交渉術でなんとか中級ポーションを無料で手に入れることには成功してはいるのだが、二人のしたことに比べると、どうしても見劣りする。


だから表情には出さず、無言を貫く。


「本当だ!健斗くーん、君ー、なんか今日は暇だったのではないのかね?」


そう、うりうりと肘で脇腹を突っつく、少しその弄り方がイラッとはさせるが

だが表情には出さない!


「じゃあ次は、お前が肉壁になって討伐よろしく!」


「それはお前の役割だろ!?」


ついその発言に突っ込んでしまうミレイだった


ーーーーーーーーーーーーーーー



そこから四十分後、通りを開いていると、ドアが開いており中の光が外に出ている宿屋の

その前に立てかけている看板を見ると、そこは自分たちが望む条件を満たす宿屋だった。


宿名は『Perch』 少し大きめの建物で、入るとすぐにカウンター、そしてそこから上に登る階段と少し下がる階段がある。

特筆すべきなのは、なんとこの宿には『大浴場』がある!

そのことに綺麗好きなミレイは少し叫んでしまい、周りから白い目をされた。

値段は一週間三人で銀貨4枚、風呂、朝ごはん付きにしては結構、破格の方ではないだろうか。


そんな宿の二階の一室を借りた。

そこは少し広いビジネス用ホテルのような場所で、少し大きいシングルベットが二つ、ちょっとしたフローリングの場所がある


「やったー!ベットだー!」


そういいジャンプして飛び込むシャニ、少しいつもより精神年齢が低くなってしまっているのは、きっと疲れているからだろう。


グレイはもう一つのベットに腰をかけると、そのまま倒れ込み大の字に腕を広げる。


そのまま寝落ちしてしまいそうな雰囲気だが、二人には宿を確保した後、

計画を話すつもりだという旨を伝えているため、すぐに自分は靴を脱ぎ、フローリングに腰掛け、二人を待つ…


すると真剣な雰囲気に気づいたのか、二人もすぐにやってきた。


「...先ずは今日一日お疲れ様でした。」


1日のことをねぎらうと、シャニとグレイが口を開く。


「お疲れ、何日かはこの宿で泊まれることは確定したから、これからの方針もなんとなく算段がついたかな?」


「そうだな、俺的には、次は武器防具類が欲しいところだが、値段が心許ないな...」


「確かに...さっき見てた限りだと、皮製ポーチとかでも鉄貨ぐらいは必要だから、

修哉の獲物がどれだけ値段がついてくれるかに賭けるしかないな」


「まぁ、そのことは売り捌いて全額来てから話そうよ」


考えても値段は上がったり下がったりはしない、そのことに気づいている三人は、話を転換する。


「そうですね、それじゃあ、最終目標は『魔王』を討伐、そして狂ったダイスの目をなんとか元に戻す、ということでOKですか?」


「ああ、わかった」


「そうだね、それ以外のことはその都度三人で決めて行こうか」


「それじゃ、今日は解散!で、何日かはこの世界の戦闘を体に慣らすのと、金集めを目標に滞在しましょう」


ミレイの発言に両者は同意を示す。


「じゃあ先にお風呂済ませてくるね?」


部屋に装備してあったバスタオルを手に大浴場の方向に歩きだしていった。


「わかりましたー、じゃ自分も入ってくるわ、あ!そうそう修哉これ飲んどけ。」


そういいポケットにしまってあった回復ポーションを投げ渡す。


「これは?」


腕を伸ばし瓶を受け取ると、まじまじと中身を試験管を扱うように持ちながら観察する。


「回復薬だ、ラノベ好きなお前なら説明はいらないだろ?」


「まじか!でも結構値段張ったんじゃないか?」


「大丈夫だ、交渉術かはわからんけど、皮を売った時にお前のことを話したら、ポーション代が増えたからな、実質無料だ!」


そういうミレイを見てとても嬉しそうな反応を見せると、瓶の栓を開け、ぐびぐびと飲み干す、

すると身体中の傷が一瞬で消え去り、痛々しい皮膚がすべてなくなった。


「おおすげぇ!リアルで回復ポーション飲むことになるとは思わなし、一瞬で治るとか最強じゃねーか!」


「だからといって無理するんじゃねーぞ?」


「おう!」


そういいサムズアップするグレイ、そんな彼の反応が面白く薄く笑うミレイだった。


その後に二人で雑談などをしていると、

肌を上気させ、髪が濡れたままのシャニの破壊力に二人とも籠絡されかかったり、

別料金で払った夜飯が部屋に運ばれてきて、少し豪勢で舌鼓を打ったりなど、まったりと過ごす、一日中波乱に巻き込まれた日だったが、寝る頃には三人に笑顔が浮かんでいた。




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