第七話 人攫い
修哉
『グレイ』
布津那
『シャニ』 がこの世界でのキャラ名です
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一方布津那と修哉の二人は、冒険者ギルドから左手に曲がり、自分達が入ってきた門がある、第一区画に向かっていた。
看板で街の構造を確認はしたが、それ以上に町の区画は細かく整備されており、宿が乱立している区画の方向に向かって入るのだが、人混みに揉まれ、あっちへこっちへと動いている間に、
どこかの路地裏へ入ってしまい、何とか通りには戻っては来れたのだが、先ほどとは違う場所で
完全に迷子状態だった
「どうする?やっぱりナビゲート使う?」
「どうしましょうかね...確かにナビゲートは有能ですけど、俺、探索系には技能振ってないんですよ」
「うん、正直私もそうなんだ」
てへっという感じで舌を少し出し、あざとい姿を見せはするのだが、状況が悪く、何とか打破しようと頭をフル回転させているため、反応は一切ない
「とにかくもう少し粘ってみますか」
「そうだね、探せばさっきみたいに地図見つかるかもしれないし」
コクッと頷き歩を進める。キョロキョロしながらも周りに気を配り進んでいると、左側の路地裏からから誰かのくぐもった泣き声が薄く聴こえた
「...誰か泣いてません?」
「うん私もそれ思った、この路地裏かな」
「まさかここでお決まりというパターンないですかね...」
「それ絶対に連れ去られるとかのイベントフラグだからやめて」
スルーするつもりは更々ないが、自分たちの目的が果たされていない以上、あまり他のことに手出しをする余裕はなく、何か問題があればすぐにそれを解決をして、本分に戻るということで合致した。
恐る恐る、泣き声が聞こえる方向に近づいていくと、男達が話し合っている声が大きくなっていく。
「...ょ、このガキどもを縛ってどうすんだっけ?」
「向こう側に配置してる山菜運ぶ用の馬車に隠して運んでいくっていう算段だったろ、もう忘れたのか?」
嘲りと緊張が混じったような顔で、長い髪を後ろで縛った人攫いが、隠れているこちら側に
壁に猿轡をつけられ手を布で縛られている、五歳ぐらいの女の子から順に頭に袋をかぶせる。
それに合わせ、奥側の通り側から村人に変装している男が手錠らしき物を手にやってきた。
恐らくこの子たちを国外に連れ出す役目の奴だろう。
「ありゃ、意外と今回の収穫は多いな、収まりきれるか?」
「奴隷みたいに詰め込めばなんとかなるだろ」
「それもそうだ」
汚い笑い声を路地裏に響かせ、その言葉にカチンと来た修哉は、飛び出そうと拳に力を入れるが、それを布津那が戦況不利ととらえたのか、腕で引き留める。修哉自身も状況判断位はできる、
なのでとても悔しそうな表情を浮かべるが、冷静にその場に腰を下ろす。
人数差は、2対3、こちら側の現状としては戦闘要員が怪我を負っていて、自分は非戦闘員、この世界の住民の平均性能がわからない今、無闇に戦闘に持ち込むのはタブー...そして今連れ去られたのは四人...厳しいな...
今自分にできることを必死に探し、思いついたのはこの車が街の外に出るのを待ち伏せするということ。
「修哉、少しの距離を置いて後ろをついてきて...、私はあいつらの近くに着いて、その都度報告するから...」
囁くような声で耳打ちする。
「...わかりました、多分今回だと『隠す』と敵の『目星』が発動すると思うんで、頑張っていい数字出して下さい...」
「任せといて...」
行動方針を決め、静かに、且つ早後ろにつき、後をついて行く。
有り難いのが、今は人の通りが多いことと、馬車が横から物を入れる形だったので、
敵の『目星』が聞きにくくなることだ。
すると馬車がゆっくりと走りだし人混みを割りながら進んでいく
「...『シャニ』の発見されるダイスロール...目星...初期値マイナス周囲の環境状況...10以下で成功
...83...失敗』
尾行を始めたためダイスロールが開始された、しかし街中でまた発生はせず、
今は門の検問を二人とも並び、馬車に後続している
「次!、身分を証明でき物の提出を」
馬車の検問が終わり順番が回ってきた、二人が冒険者登録をした時にもらった手帳を渡すと、
余り詳しく確認することはなく、すぐに次の人を呼ぶ。
「さて、馬車はちょっとスピード上がってますけど、ダッシュで追いかけます?」
二人が検問されている間、馬車はスピードを出し500メートルは離れているが、すぐに急いではバレる可能性があるからか、今は商人用の馬車とほぼ同じくらい。間に合うか...
「そうだね、動かしているのは一人だし、後ろからチョップでもすればなんとかなると思う」
「じゃあ少し飛ばすんで頑張ってついてきて下さいよ!」
そういい短距離走のようなスピードで後を追う。
足音を悟られないようにするため10メートル位からは靴の底を活用し、つま先で走り至近距離まで寄ることができた。
そしてやっと布津那が追いついてきた頃に、ダイスロールが発生する。
「...足音に気付かれるかのロール発生、『隠す』一方が成功でそのまま乗車、
両者失敗で馭者が目星ロール、成功で二人を発見、失敗で次のラウンドに入ります。」
「『グレイ』の『隠れる』判定...初期値...15以下で成功...37...失敗」
「『シャニ』の『隠れる』判定...初期値...15以下で成功...13...成功。二人は馭者に気付かれず乗車出来ます。」
二人はアナウンスが聞こえると、すぐさま中に入り御者がいる方向を見つけ、修哉は拳の気絶判定を、布津那は袋を被せられ、鉄の拘束器具を外そうと『鍵開け』を使用する
「こぶし、気絶狙いの為三分の二で成功...39...成功」
修哉が拳を馭者の首の付け根部分を強く殴り、そのまま馭者は意識を刈り取られ、その場に横向きに倒れる。
「ふぅ、何とかこっちは倒せましたよ」
「お疲れ、じゃあこの手錠でそいつのこと縛ってて」
気絶した馭者の襟を掴み、荷台にポイと放り投げると布津那が一回鍵開けに成功させ、開いた手錠を受け取り、背中に腕を回し金具を連結されていた場所に付ける
「それはそうとこの馭者がいなくなった馬車、どうやって操作するの?」
「安心して下さい、一応乗馬に10振ってるんで15%もありますよ」
「何でこんな時だけ、ちょっとの有能さが出るのよ...」
ため息が布津那の口から出ると、手錠を外した五歳くらいの男の子が恐る恐る話しかける
「...お姉ちゃん達は一体誰なの...?」
目を合わせていた二人だったが、男の子の声に反応を見せると、布津那は優しい目を、修哉はニカっと八重歯を見せる
「私たちはただの通りすがりの冒険者だよ、訳あって今こうしてるけどね」
「大丈夫だ、ちゃんと元の場所まで連れて返してやるからよ」
語りかけるように正体を明かすと、今までの不安が一気に霧散したのか、子供たちが心配そうな顔を崩し、泣き始める。
二人はそんな子たちを見て、微笑ましくこれからのことを考える。
「...どうやって親御さん達に返すつもりなの?」
ゴゴゴと擬音がつきそうな顔でそんな「返してやる」発言をした修哉を振り返る
「門のとこにいた人たちに預ければ良いかなって」
怖い布津那のその顔にタジタジになりながらも笑顔のまま、サムズアップする。
布津那が修哉のその無責任さにこぶしを放った。
しかしダメージは一切その筋肉に吸収されてしまったのだが
--------------------------------------
補足...
ダイスロールのアナウンスは誰にも聞こえてなくて、自分が望んだ時だけ聞くことができます。
この話の場合、この馭者と人攫いは勝手に自分のことに対するダイスロールが行われている為、聞こえてもないし、もし自分たちが成功したとしても、ふっと自分で気づいたように感じるわけです。
自分で聞こうと思っても、
ダイスロールの説明の道中の解説は省略されていますし、聞こえているのは結果だけです。
↑大切!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます