第二話 テンプレが来るのが自分だと思ってるのと感じが違う

 目を擦り重い体を上げ、頭の位置にある目覚まし時計のアラームを止めようと腕を伸ばすが、その腕が宙を舞う。


「また、どっか動いたかよ...って何処だここ...。」


 睡眠中に目覚ましを持ち前の寝相で吹き飛ばしたと思っていると、

 神話世界の神殿のような場所の中央の土台の上に寝ており、

 玉座のような所に、女神を祀ったような石像が。


 外の世界を確認しようと、重厚な扉の所から伸びている青いカーペットに沿って歩いていき

 外を確認すると、明かに現世では無い何も見えないところに出てきた。


「...」

 そっと扉を閉じる。


「いやいやいや待て待て待て、一旦落ち着け落ち着け!」


 普段の生活より乖離しすぎていたおかげで一周回って冷静を保っていたが、扉を開け、地球でない風景を見て「これはやばい」と感じたのか、いつもの私生活ではありえない位の高速瞬きを繰り返し、落ち着こうとして更に焦り始める修哉


「お、俺は昨日寝る前まで健斗と津那先輩と一緒にTRPGしてて、ね、寝つきが悪くて、ビ、ビール開けて、好きな小説更新してたからそれ、よ、読んで、眠気が来たから、ベットに入って、あーーー、もうなんなんだよぉ!ここ!」


「...アイデアロールを振ってください。」


「あ!?アイデアロール?なんでいきなり。」


「...振って下さい。」


 突然女の人の声が聞こえTRPGのダイスを振るよう要求してきた。


 人がとんでもなく焦っている状態で何呑気なこと言ってるんだよ!

 と心の中で悪態をつく。


 第一ダイスを持ってないし、振ろうにも振れないことはわかっているはずだ。


「天の声さん、振れって言っておいてダイスがないっていうのはちょっとどういうことですかね!?」


 焦りがピークな所為なのか、いつもでは出なさそうな怒気が言葉と共に出てしまう


「...ではあなたの手元にダイスを送らせていただきます。」


 どこかの天の声さんがそういうと、自分の前にTRPGをプレイするうえで欠かせない、ダイスが6種ほど詰まった箱が現れる。


 出すと言っただけで目の前に現れることに驚き不思議に思いながらも、

その箱に手を伸ばし幸運ロールの時に使う百面ダイスを中から取り出し、宙に投げる。


「03...クリティカル」


 天の声さんではない機械音のような声がダイスの結果を読み上げる


「クリティカル!まじかよ...」


 いつもの自分の運じゃこんな時にはいつも失敗を出すんだが、今回は何かとうまくいったらしい。


「成功報酬+クリティカル報酬として、初期スポーン位置の同一化を行います。」


 天の声さんがそう言うと、修哉の両隣に光の柱が現れ、二つの影が形を成していく。


「おいおい、まじかよ...。」


 二つの影を眺め続けていると、その二つがだということが分かる


 いきなりの転移で驚く二人だったが、感覚が麻痺しているのか、自分の知っている顔ぶれがそろっていることに少し安堵し、胸をなでおろす。


「お、おお、修哉、い、一体どんな状況なんだこれは...。」


 落ち着いたような雰囲気を醸し出していたが、内心まだとても焦っているのだろう、声が震えている。


「...おお、そんなこと言われても俺にもさっぱりわからん...。」


「だよな...布津那先輩は大丈夫...ではなさそうですね...。」


 1人、状況が頭のキャパシティーの限界を超え、どこかに旅立って行きそうな目をしている 布津那。2秒ほど経つと意識が戻った


「はっ!しゅ、修哉君...これはいったいどんな状況なんですか...。」


「いやだからわかりませんて...。」


「...それでは私から説明いたしましょう。」


「「「!?」」」


 天の声がしたかと思うと、玉座に祀られていた女神像が頭部から、人肌の色に変わっていき、足の先まで変わるとゆっくりこちらに向かって歩き始める。


「この世界はダイスの目によって全てが決まる世界。各個人の能力、未来、その場での出来事、取れる行動、全てがダイスによって決められます。」


 少し俯いていた顔を上げ目を閉じながら少し息を吸うと、立っている場所の周りで世界の景色を写す映像が流れ始める


「この世界では格差というものは、ただ生物達が生きている世界よりはなく、いざこざも昔に比べ少なくなりました。」


 話に耳を傾けて真剣に聞いていると、その女神様は少し顔を顰め苛立っていそうなおもむきで続ける


「しかしこの世界に魔王というものが現れ、ダイスの目が調整されていってしまい、

 完璧にランダムだったダイスが結果が偏ってしまう現象が起こるようになってしまいました。

 そこで、地球の方々にこの世界を救っていただけたらと、そう思ったわけです。」


 ん?なんかテンプレ感が否めない言葉が出てきたぞ?...まさか...だよな...


 趣味としてラノベ小説を読んだり、アニメ鑑賞をする修哉には分かってしまった、このお約束のような言葉の後に出てくる願い事を


。」


真剣な、そして心からの願いが神殿中に響く...


「...うそーん」


 分かってしまっていたが、改めてそれが自分となると思っていなかった修哉は、足元から崩れ落ちるのだった



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