TRPGプレイヤー達が、すべてがサイコロで決まる世界に転移させられたようです
羅船未草
プロローグ
第一話 砂漠の道
「ダイスは...98、またファンブル!いきなりの砂吹雪が起こり、目に大量の砂が侵入しダメージを受けます。1D3のダメージロールを回してください。」
「ぐはぁまじかよ2ダメージか、もう残り6しかHP残ってないし。」
先ほどから、地面に聞き耳をしてはファンブルと失敗を行ったり来たりを繰り返す、(ミレイ)というキャラをプレイする『
彼は今年、大手医療会社の営業部に入社して5年目の一般的な収入を得ているサラリーマン。
日常においては、道端に落ちているお金を交番に送り届けたり、困ったお年寄りに手助けをして、得を積み続けている彼だが、何故かゲームやこのような運が必要となる部分では、何者かの力が働いているかのように、ダイスの目が必然的に悪くなる。
そこから来たあだ名は「ダイスの目に振られた男」
「さっきからお前、何回砂吹雪に見舞われるんだよ。目的地に着いてもないのにキャラロストするつもりか?」
「一回のロールプレイ中にファンブルは出るもんだけど、今までの卓で流石に神話生物に会う前に、瀕死になるのは見たことないわー、ほらまだ道中の探索始まったばっかだし。」
「自分もなんで今日こんなに運が悪いのかわからん、修哉、今回はおまえに任せる。」
「おう、探索系、目星以外全部初期値の俺に任せろ。」
「どこまで行っても安心できない一言だな、なんでお前はいっつも戦闘技能にしか振らないんだ?」
「戦闘が大好きだからだそれ以外に理由が必要か?」
「脳筋プレイ厨がよお、頼むからせめて2個は探索に振ってくれ...」
修哉がキメ顔で肩の位置でサムズアップし、ストーリーを進めていく。
今回の作品は2~3人対象ストーリーの『砂漠の道』というキーパー作成のオリジナルストーリーで、探索、戦闘技能がバランス良く必要とされ、健斗操る、ミレイが調査担当、そして修哉操る、グレイが戦闘技能に振っている。
修哉という人物、本名は『
中村健斗と中学以来の親友で、その頃からずっとなんやかんや知り合いで、昔はたまに遊ぶ程度だったが、大学時代に同じ学部に進んだということもあってか、それまで以上につるむ様になったと言う感じだ。
現在の仕事は建築士、父親の建設業を受け継ぎ、最近になって腰が落ち着いてきたという性格も含めて豪傑である。
今プレイしている、
「よし、やっと終盤に差しかかってきたな」
「おう、そうだな清くって言いたいけど、HP残り3なんだが?」
「お前は、目星クリティカル出す代わりにダメージを受けるって言う縛りがあるから仕方ない」
「いや、応急で助けろよ」
「俺は、拳で治療しかできん」
健斗のダイスの目が自由行動を起こし、目星だけで、ストーリー上の目的地である隠し地下施設に侵入出来たのだが、そこに寄生しているオリジナル神話生物を二人で何とか倒すとなった時には、ミレイのHPが3で瀕死、
カロネイのHPが残り7で約半分程となり、ストーリークリアが険しくなっているが、
その分敵のHPも残り三分の一程度まで削れ、いいところまで来ていた。
「神話生物が突如体から火を吹き出しその体が赤く染まっていきます、二人とも幸運ロールを振ってください」
「えーっと自分は、12、成功した、良かったー」
「お!01、クリティカル!マジで⁉︎」
「体が赤く燃え上がったと思うと、神話生物の体が爆散し、周りに凄い衝撃を与えますが、咄嗟に取った回避行動で無傷です。本当は爆発した後の回避行動もあったんだけど、修哉さんがクリティカル出したから免除しました。はいストーリークリアです、おめでとうございます!」
「よっし、クリア出来たー、今回マジでキャラロストするかと思ったわ、良かったー」
心配から解放された安堵で、パソコン用ゲーミングチェアに背中を預け、伸びをする。
「良かったですねー、このストーリー、道中では肉体的には死なないように出来てるんですけど、こんな事ってあるんですね...」
キーパーを務めた、二人の大学サークル仲間、『
彼女は二人の一つ年上で一応先輩なのだが、その本人からの希望と会話時の話しかけ易さから、どちらかと言うと友達に近い関係である。
創作活動や考える事が好きで、最近は創作の一環としてバンドを結成したらしい。
このTRPGのストーリー制作や、小説、作詞作曲と、結構多才である。
「お疲れ様ー、やっと終わったわ...今は何時っと...やべ!三時まわってる!明日朝から建設なんだよ、先に落ちるわ、おつ!」
そういい通話サイトのマイクが落ちる音が聞こえる。
「そうだね、私も明日バンド練習あるし、眠気も襲ってきたし寝ることにするよ、おやすみなさい。」
「お疲れ様お休みー」
そういい両方共マイクを切る。
「...ふわぁー、自分もそろそろ寝ないと明日の仕事が...でもなんか眠れないんだよな」
パジャマ姿で終わったらすぐに寝れるよう準備は整えていたが、さきほどまでのゲームの興奮が、寝ようとする体をまた覚醒させる。
「仕方ないから小説でも読むか...」
台所にある小型冷蔵庫から冷えたビールを取り出し、机の上に置く。スマホを取り出し、自分が気に入って定期購入している更新されたばかりのページを開き読み始める。
「お、今回やっと主人公、ヒロインと再会出来たのか、待ち遠しかったわ」
そんな感じでだらだらと、眠気が襲ってくるまでほかの作品の無料で読める部分をあさりながら、ビールを一口飲む。そんな感じで三十分ほどした頃やっと一本缶が空いたので、口を磨きもう一度ベットに入る。
今度は雑念が湧いて寝れないこともなく、すんなり夢の世界へ飛び立っていった。
「今度はほとんどが笑いだけの卓にでも入ってみよう...」
そう、これが全てがダイスの目によって人生が決まる世界への扉だとも知らずに幸せに眠りにつくのだった。
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