UFO

 たちまちMJ―12からは、溜め息と共に落胆の声が上がった。


「なんてことだ」

「博士でもだめだったか」

「……こうなっては仕方がない。あれが宇宙から来たものだと認めるしかないか」

「すると問題は、なんであんな変なものが宇宙から降ってきたのかというところだが……」


 そこからは、着席はしたが茫然自失の状態で無言のままのジョンをよそに、MJ―12による白熱した議論が数時間に渡って交わされ、いちおう意見は纏まり掛けた。


 それは、そもそも人形のようなものが作れるほどの知性を持った地球外生命体がいるとするならば、当然彼らにも感情があるはずで、ユーモアもあるのではないかというものだ。

 つまり、あのロズウェル事件で降ってきたUFOは、異星人によるジョークのようなものなのではないかというのである。


 ところが、それに付随する様々な問題によって、ここで再び議論は停滞することになった。


 まず、一五〇億年以内と推定される宇宙の歴史において、人類程度の文明が出来上がるのに、地球で五〇億年ほども掛かっている。しかも現在観察できる範囲の宇宙に、地球外生命体の痕跡が発見された試しはないのだ。

 それより遠い星となると、宇宙一速いとされる光の速度でさえ何百年以上も掛かるほど離れており、この障害を超えてやって来た宇宙人はおろか、その存在を示す物的証拠や電波等ですら、正式には確認されたことはない。真偽不明の証言があるのみだ。


 すると、あのロズウェルの人形が初めてのちゃんとした宇宙人実在の証となるのだが、彼らがいきなりあんな変なものを送ってくるとは想像しがたかったのである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る